マリア・ルイサはレイダでは看護婦をしていた人だが、バルセロナに引っ越してきてからは専業主婦となっている。とは言っても、やはりただの主婦ではなく、フットボール界の中で大いなる将来を期待されているボージャンの母親。息子がまだバルサインフェリオールカテゴリーでプレーしている時には、ボージャン父と共に観客席から息子の姿を見守り、今シーズンからは、カンプノウ観客席を埋める一人となっている。この短いインタビューの中では触れていないが、彼女が一つだけ息子に厳しく要求していることがある。ファンの人々の目に触れる場所では、決して携帯と iPod を使用しないこと。ファンの人々が憧れの選手に直に触れることのできるわずかな空間、それは合宿ホテルからバスに乗るまでの空間であったり、バスを下りて飛行場に向かう空間であったり、飛行場からホテルに向かうバスに乗るまでの空間であったり、そしてバスを下りてホテルに向かうというようなわずかな空間。何でもないことのようだが、アイドルの選手が出てくるのを今か今かと待ち受けるファンの人々を決して無視しないようにという、そのような願いを込めての要求だという。
あなたの息子さんはまだ短い人生の中でも、最も幸せな時期を迎えていると言ってもおおげさではないでしょう。メディアやファンの人々から大いなる注目を浴びている、そういう息子を持つ一人の母親としてどういう心境か?
ある才能に恵まれ、それを実際に職業として生かすことができるということは素晴らしいことであり、そして非常に幸運に恵まれていることだと思います。でも一人の母親として何よりも嬉しく思うのは、自分の息子のようにごく普通の子が、ごく普通に育って、ごく普通の生活をして、それでもなおプロフットボールという、誰しもが望みを達成できるわけではない難しい世界に足を踏み入れることができたことです。
ただ、フットボールの世界は、まるでジェットコースターのように上に行ったり下に行ったりと変化の激しい世界。現在のロナルディーニョを見るまでもなく、良いときは多くの賛美が贈られ、悪いときはとてつもない批判が浴びせられる。そういう厳しい世界に生きる息子を持つ母親は大変苦労が多いと思うが?
息子にしても私たち両親にしても常に原点を忘れないこと、そのためにはいつも地に足をつけた生き方をすることだと思います。頂点に立ったときには喜びも多いでしょうが、常に冷静に現実を直視すること。それは、思うように結果がでない時にも同じようにおこなわなければならないことだと思います。
冷静と言えば、あなたの息子さんはまだ17歳だというのに、これだけ多くのメディアに注目を浴び、カメラの前に登場する場面でも非常に落ち着いた感じを受けますが、それは彼のキャラクターなのでしょうか?
自然のままでいること。まだ短い人生ではあるけれど、彼の態度は常にそういう感じです。テレビのインタビューに応えている彼は、家の居間でくつろいでいる彼とまったく同じです。母親の私が言うのだから間違いないでしょう(笑)。そして同時に、彼の自然な態度そのものが、私たち夫婦が自然に生きている日常生活そのものをあらわしてくれていると思います。
それでも内部ではプレッシャーを感じているでしょう?
彼の言葉を借りれば、プレッシャーがあればあるほど、そしてスタジアムに人が多ければ多いほど、自然とモチベーションが沸いてくるそうです。そういうところは母親の私とは正反対の性格をしているようです(笑)。確かに、彼が小さい頃からほとんどの試合を観戦していますが、劇的な逆転ゴールとか、試合終了間際のゴールを何回も決めているのを見ています。それを見ている私の方は、緊張感でいつも手に汗にぎっていますが(笑)。
学生であると同時にフットボール選手でもあるという、そのバランスをとるのは時間の問題だけをとってみても大変なことだと思うが?
午前中は練習、午後は学校という生活リズムですが、本人はけっこう気に入っているようです。ただ、バルサAチームに入ってからは時間的に他の学生の半分しか授業にでられないので、彼らの1年分の課程を2年間かけて終了することになっています。学校を離れた日常生活では普通の学生と同じように、空いた時間を利用して勉強しているようです。例えば、試合前日のホテル合宿や、フエラの試合での移動の時間、ホテルに缶詰になる時間が非常に長いですから、その時間を利用して勉強しています。勉強を済ませたあとに試合にのぞむと、頭がスッキリしていいと当人が言っていました。
インタビューの最後に、3、4年後のボージャンに望むものは?
バルサAチームでプレーするようになってから、彼を取り囲む環境はそれまでのものとは比べもににならないほど賑やかになっています。それでも彼は、母親の私が言うのもなんですが、以前と変わらず素直に、そして自然に生きています。時間さえあれば我々の田舎であるリニョーラに顔を出し、昔からの友人たちと親交を暖めていますし、周りの環境がどうであれ彼自身は何も変わっていないようです。数年後も今と同じようなボージャンでいること、そしてなによりもあらゆる意味で健康であること、私が望むのはこれだけです。
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