Bojan Krikic Perez
ボージャン


前半戦での各選手総括(下)
(08/02/09)

ボージャン
負傷者と調整不足のデランテロが続出したことにより、想像以上の出場機会に恵まれたシーズン前半。個人的には、後半20分程度からの出場が続くことが理想的だと思っていたが、予想以上にプレー時間が長くなっている。常にサイドに置かれるという、彼としては不慣れな位置での起用をされているが、それでも17歳とは思えない活躍を見せていると断言して良いだろう。これから短くても10年は、バルサの顔の一人としてクラブに君臨していくであろう“今日のキラキラ星”選手となった。

「こちらカピタン」より


ボージャン、17歳と5か月
(08/02/06)

コスタ・デル・ソルにある避暑地マラガで水曜日におこなわれるスペイン代表とフランス代表の親善試合。この試合にバルサインフェリオールカテゴリーで育った選手が6人も招集されている。レイナ、ナバーロ、チャビ、イニエスタ、セスク、そしてボージャン。ポルテロ、デフェンサ、セントロカンピスタ、そしてデランテロとバランスのとれた6人組。代表招集常連組の一人となっているプジョーは負傷のため呼ばれていないが、もし彼が健康体だったら合計7人となっていたし、世間一般常識によれば、招集されてしかるべきバルデスを含めれば8人ともなる。それでも、オラゲールは当然ながら呼ばれることはないから9人となることはない。また、今回の代表選手の中に顔を出しているグイサという選手も。実は2003年1月から半年だけバルサBでプレーしているが、もちろんバルサカンテラ育ちとは言えないので除外。ちなみに、半年間だけしか見たことがないものの、それにしてもひどい選手だった。

これまでのスペイン代表戦出場最年少記録は70年ほど前に作られたようで、17歳と9か月で出場したナントカという選手が持っていたらしい。これは、あまりにも時代背景が異なりすぎるから無視するとして、近代では2006年に記録された18歳と10か月のセスク・ファブレガスが最年少だという。してみると、ボージャンの17歳5か月という記録の凄さがわかるというものだ。そのボージャンは、余程のことがない限りこの試合に出場することになる。なぜなら“出場させるため”に招集された選手だからだ。

もし彼の父親がセルビア人でなければ、まだ代表に招集されていなかったかも知れない。このまま素直に成長してさえいけば、いつか必ずスペイン代表選手として招集される日が来るのは間違いないとして、父親がスペイン人であったとしたら、今の段階では招集されていなかったかも知れない。どこの代表チームでもそうであるように、そして特にスペイン代表には歴史的にゴレアドールがいない。まだ17歳という年齢で、U21代表を含めたすべてのインフェリオールカテゴリーの代表に選出されているボージャンを、スペインは逃がしたくないのは当然だろう。セルビア代表から招集があっても行かないと、彼自身はこれまで何回も語ってきているものの、他人から見ればその保証はないわけで、早いところスペイン代表に招集し出場させてしまえば、その心配は無用ということになる。したがって、ボージャンは体が動きさえすれば、この試合に無理矢理にでも出場させられることになる。そしてグランドに姿をあらわした瞬間、17歳5か月最年少記録が達成される。だがこんな記録は、これから彼がいろいろ作っていくであろうものに比べれば、他愛のないものかも知れない。

フラン・ライカーはデランテロの3つのポジション、つまり左・右・真ん中と、まるでボージャンの目が回ってしまうのではないかと思うほど移動させて起用しているが、つまるところ彼は決して右サイドの選手ではない。右サイドよりは効率的に働けるとしても、やはり左サイドの選手でもない。彼の良さが100%発揮できるポジションはサイドではなく、プンタとしての真ん中のポジションにある。
「彼をサイドのデランテロとしてではなく、9番として起用しいきたいと思う。」
と、正しくもかつてのバルサ監督・現スペイン代表監督が語っているが、それはまったくもって正しい。

予想以上に、そして必要以上に、バルサの試合にかり出されている気がしなでもない。諸処の事情が生んだたまものであるとはいうものの、非常に試合出場数が多い。もしスペインの普通の17歳の若手選手に、これだけのプレッシャーを与えたとしたら、つぶれてしまう危険性さえあるだろう。だが、幸運ながら、彼はそんな心配をよそに普通の17歳の若手選手ではないことを証明しつつある。プレッシャーなど屁のカッパとばかり、それなりの期待に応えた仕事をしているのは誰しもが認めるところだろう。ゴレアドールとして必要な“自己主張”を適度に持っているのはもちろん、ゴールしやすい位置にいる選手への的確なパス能力とインテリジェンスも持っている。そのバランスの良さが彼の魅力の一つだろう。

今から2年前の2月、つまり彼が15歳の時、フベニルBチームでプレーしている。このシーズンはカデッテA選手登録でスタートし、シーズン終了時にはフベニルA選手となっていた。そして今から1年前の2月、彼はバルサBでプレーしている。フベニルA選手登録でスタートし、冬にはすでにバルサBの選手となり、シーズン終了後はライカーバルサの一員としてエジプト遠征までおこなっている。バルサB選手登録でスタートした今シーズンも、スタート時からライカーバルサ選手となり、そして半年後にはスペイン代表選手、こんな非常識とも思える超がつくスピードで登り詰めている17歳と5か月のボージャン。デビューついでに代表初ゴールも決めてしまおう。

「こちらカピタン」より


ボージャン母
(07/01/19)

マリア・ルイサはレイダでは看護婦をしていた人だが、バルセロナに引っ越してきてからは専業主婦となっている。とは言っても、やはりただの主婦ではなく、フットボール界の中で大いなる将来を期待されているボージャンの母親。息子がまだバルサインフェリオールカテゴリーでプレーしている時には、ボージャン父と共に観客席から息子の姿を見守り、今シーズンからは、カンプノウ観客席を埋める一人となっている。この短いインタビューの中では触れていないが、彼女が一つだけ息子に厳しく要求していることがある。ファンの人々の目に触れる場所では、決して携帯と iPod を使用しないこと。ファンの人々が憧れの選手に直に触れることのできるわずかな空間、それは合宿ホテルからバスに乗るまでの空間であったり、バスを下りて飛行場に向かう空間であったり、飛行場からホテルに向かうバスに乗るまでの空間であったり、そしてバスを下りてホテルに向かうというようなわずかな空間。何でもないことのようだが、アイドルの選手が出てくるのを今か今かと待ち受けるファンの人々を決して無視しないようにという、そのような願いを込めての要求だという。

あなたの息子さんはまだ短い人生の中でも、最も幸せな時期を迎えていると言ってもおおげさではないでしょう。メディアやファンの人々から大いなる注目を浴びている、そういう息子を持つ一人の母親としてどういう心境か?

ある才能に恵まれ、それを実際に職業として生かすことができるということは素晴らしいことであり、そして非常に幸運に恵まれていることだと思います。でも一人の母親として何よりも嬉しく思うのは、自分の息子のようにごく普通の子が、ごく普通に育って、ごく普通の生活をして、それでもなおプロフットボールという、誰しもが望みを達成できるわけではない難しい世界に足を踏み入れることができたことです。

ただ、フットボールの世界は、まるでジェットコースターのように上に行ったり下に行ったりと変化の激しい世界。現在のロナルディーニョを見るまでもなく、良いときは多くの賛美が贈られ、悪いときはとてつもない批判が浴びせられる。そういう厳しい世界に生きる息子を持つ母親は大変苦労が多いと思うが?

息子にしても私たち両親にしても常に原点を忘れないこと、そのためにはいつも地に足をつけた生き方をすることだと思います。頂点に立ったときには喜びも多いでしょうが、常に冷静に現実を直視すること。それは、思うように結果がでない時にも同じようにおこなわなければならないことだと思います。

冷静と言えば、あなたの息子さんはまだ17歳だというのに、これだけ多くのメディアに注目を浴び、カメラの前に登場する場面でも非常に落ち着いた感じを受けますが、それは彼のキャラクターなのでしょうか?

自然のままでいること。まだ短い人生ではあるけれど、彼の態度は常にそういう感じです。テレビのインタビューに応えている彼は、家の居間でくつろいでいる彼とまったく同じです。母親の私が言うのだから間違いないでしょう(笑)。そして同時に、彼の自然な態度そのものが、私たち夫婦が自然に生きている日常生活そのものをあらわしてくれていると思います。

それでも内部ではプレッシャーを感じているでしょう?

彼の言葉を借りれば、プレッシャーがあればあるほど、そしてスタジアムに人が多ければ多いほど、自然とモチベーションが沸いてくるそうです。そういうところは母親の私とは正反対の性格をしているようです(笑)。確かに、彼が小さい頃からほとんどの試合を観戦していますが、劇的な逆転ゴールとか、試合終了間際のゴールを何回も決めているのを見ています。それを見ている私の方は、緊張感でいつも手に汗にぎっていますが(笑)。

学生であると同時にフットボール選手でもあるという、そのバランスをとるのは時間の問題だけをとってみても大変なことだと思うが?

午前中は練習、午後は学校という生活リズムですが、本人はけっこう気に入っているようです。ただ、バルサAチームに入ってからは時間的に他の学生の半分しか授業にでられないので、彼らの1年分の課程を2年間かけて終了することになっています。学校を離れた日常生活では普通の学生と同じように、空いた時間を利用して勉強しているようです。例えば、試合前日のホテル合宿や、フエラの試合での移動の時間、ホテルに缶詰になる時間が非常に長いですから、その時間を利用して勉強しています。勉強を済ませたあとに試合にのぞむと、頭がスッキリしていいと当人が言っていました。

インタビューの最後に、3、4年後のボージャンに望むものは?

バルサAチームでプレーするようになってから、彼を取り囲む環境はそれまでのものとは比べもににならないほど賑やかになっています。それでも彼は、母親の私が言うのもなんですが、以前と変わらず素直に、そして自然に生きています。時間さえあれば我々の田舎であるリニョーラに顔を出し、昔からの友人たちと親交を暖めていますし、周りの環境がどうであれ彼自身は何も変わっていないようです。数年後も今と同じようなボージャンでいること、そしてなによりもあらゆる意味で健康であること、私が望むのはこれだけです。

「こちらカピタン」より


ボージャンデビュー
(07/09/16)

今からほぼ4年前、フベニルカテゴリ以下のチームが使用していた、いまは無き第四スタディアムでインファンティルAの試合を観戦に行ったとき、噂に聞いていたボージャンという坊やがプレーしているのを初めて見る幸運に恵まれた。インファンティルAチームを構成する選手たちはだいたい13歳程度の少年たち。したがって、みな小さい。当然ながら、このようなカテゴリーにあって特に目立つことになるのは、運動量の多い選手とかフィジカル的に恵まれた選手となる。だが、このチームはなかなか個性あふれる選手が何人かいることに気づく。

8番の背番号をつけた、背は高くないもののやたらと頑丈な感じがするフラン・メリダという選手や、運動量も多くなくフィジカル面でもごく普通ながら、やたらと目立つ動きをする11番ヤゴ・ファルケ、そして誰よりも小さいながら非常に運動量が多いだけではなく、ゴールをバシバシという感じで決めまくる9番ボージャン・ケルキック、この3人がとてつもなく印象に残るチームだった。

この年から2年ぐらい前にはメッシーという少年が、そして1年前にはジョバニという少年がこのカテゴリーでプレーしている。たまに彼らのプレーする試合を観戦に行くと、とても人の良さそうな印象を受ける40歳前後の男性が、いつも同じ場所に座っていた。ある時には奥さんと思われる女性と一緒だったり、ある時は友人と思われる人々に囲まれて座っており、そしてある時は一人で試合観戦している。その熱心なカンテラファンだと思われた人が、ボージャンの父親だとわかったのはこの試合が終了したあと、すぐにボージャン少年がやって来て彼の隣に座り、次のカデッテAチームの試合を見始めた時だ。こういうシーンはボージャンがフベニルカテゴリーに上がってくるまで見られることになる。

父ボージャンは息子ボージャンに、時間が許す限りバルサインフェリオールカテゴリーの試合を観戦するように教育している。その教えを守っていたからこそ、どんなカテゴリーの試合を観戦に行っても必ず彼の姿が見られた。もちろん、父ボージャンの姿も同じように観客席に見られることになる。もっとも、彼の場合は息子の試合観戦という父親としての楽しみと、バルサカンテラ組織職員としての仕事観戦でもあっただろう。

それから時がたち、父ボージャンはミニエスタディへと観戦場所を変えていく。今年の初め頃から、彼はバルサBの試合を観戦する父ボージャンと変貌している。さらに今シーズンからは、彼の試合観戦場所はカンプノウへと移り行くことになるだろう。

「ママ、できるだけ早く学校に行って、僕の授業プログラムの申し込みをしてきて!」
ムンディアルU17の大会に参加してたボージャンが、母親のマリア・ルイサにこう電話しているという。今週の月曜日の深夜に韓国からバルセロナに戻ってきたボージャンは、水曜日から始まる高校の授業に出席しなければならない。だが、普通の高校生ではない彼は、朝から夕方までの普通のプログラムに出席するのは時間的に不可能だ。午前中はライカチームの練習に参加し、学校に駆けつけることができるのはかろうじて午後だけとなる。つまり彼の授業プログラムは一年間かけて他の生徒の半分だけ消化するもであり、2年かけて1年分の単位をとるものとなる。

午後の授業もない週末の土曜日、17歳となったボージャン・ケルキックは多くの大人どもと一緒にパンプローナに向かう。もちろん父ボージャンも母マリア・ルイサも一緒だ。8歳でバルサインフェリオールカテゴリーに入団してきた彼が、長いあいだ見続けてきた夢、バルサAチームデビューが実現する・・・はずだ。それは同時に、第四スタディアムで彼のプレーを見続けてきた多くのカンテラファンの夢が実現することでもある。

「こちらカピタン」より


アニモ!ボージャン!
(07/09/07)

ゲーリー・リネッカーはその長いプロ生活をとおして、一度たりともタルヘッタをもらったことがない選手だったと言う。彼がプレーしていた時代と今とでは、フットボールの性格そのものが大きく変化しているから、単純に比較できないものの、21世紀に入ってからプロ生活を始めた選手で、一度もタルヘッタをもらったことがない選手などたぶんいないだろう。

果たして、本当に一枚もタルヘッタをもらったことがないのが事実かどうかは別として、少なくともカンプノウの試合で、彼がタルヘッタをもらったところは見たことがなかった。もともとファールそのものをしない選手だったから、タルヘッタをもらうシーンにお目にかかれるわけがない。汚いプレーを嫌いあくまでもクリーンな選手だったと形容すればカッコいいが、要するに接触プレーを好まず、審判の判定に抗議することもなかった選手と言える。リネッカーとはまったくタイプの異なるボージャンもまたタルヘッタをほとんどもらわない選手だ。必要とあらばデフェンサに強烈なあたりをすることも珍しくないし、試合をとめるためのファールもするインテリジェンスを持っている。そこらへんがリネッカーとは異なるが、それでも審判に抗議することはほとんど見たことがない。

そのボージャンが、U17準決勝ガーナ相手の試合で2枚のタルヘッタをもらい退場処分をくらっている。彼にしてはタルヘッタをもらうこと自体が珍しいし、まして退場となるのは始めて見る光景だ。バルサBで半年、残りは少年カテゴリーしか経験していない選手だから、そんなことは不思議でも何でもないと思う人がいるかも知れないが、それは違う。スペインの少年たちの試合を一度でも見に行けば、試合中に何枚もタルヘッタが示される、まったく一部リーグのそれと同じ風景に出会うだろう。子供たちは憧れの大人選手たちのプレーを見て育ち成長する。プレミアリーグとは違い、判定ごとに審判に文句をつけ、汚らしい言葉を吐くのがスペインリーグの特徴の一つだとすれば、それは子供たちの試合にも共通することになる。インファンティルカテゴリーの試合で両チーム合計6人の退場者が出た試合を見たことがあるぐらいだ。

彼が退場となり20秒後に試合終了の笛が吹かれた。審判に向かって、まるでゴール前に向かうかのように一直線に走り抜けるボージャン。もう涙顔だ。審判に向かい猛烈な抗議をする彼を同僚が止める。決勝戦には出場不可能となった悔しさをいっぱいにしながら、地獄の三丁目行きを初経験するボージャン。夕食にも手をつけられず、一睡もできない夜を過ごすことになるのだろう。

アジア遠征参加とガンペル杯に出場することが今年の夢だったと語る。だが、バルサクラブ理事会の主張を退け、スペインフットボール協会の頭の固い背広組は彼をU17の合宿に強制招集。最初の1週間は抜け殻状態だったと語る彼だが、それでも大会が始まれば100%のモチベーションでプレーしていた。そして当然ながら目標は決勝戦でゴールを決めてスペイン代表に優勝をプレゼントすること。だが、それも不可能となってしまった。

そんな彼を見て、イニエスタを突然思い出した。

  (ー中略ー La Masia 物語より抜粋)

その後何年かして、イニエスタはあの悔しさが成長の一つのバネとなっているとどこかで語っていた。これからの10年、メッシーと共にバルサを、そしてイニエスタと共にスペイン代表を背負っていくことになるだろうボージャンにも、この悔しさが成長のための一つの素材となると良い。アニモ!ボージャン!

「こちらカピタン」より


ボージャンとジョバニ
(07/08/25)

2002年インファンティルBに上がってきたボージャン、そしてやはり2002年インファンティルAに上がってきてたジョバニ、幸運にもこの二人をこの年から見続けることができた。そして2007−08の今シーズン、二人ともライカーバルサチームの一員となっている。自然の移りと共に時が経過し、少年たちは若者となり、そして年寄りはさらに年寄りとなる。

昨シーズンにはバルサBで一緒にプレーするようになった二人の道のりは、同じようで微妙に違う。インファンティルカテゴリーからカデッテカテゴリーを経て、フベニルチームにまで上がって来るまでの活躍は、同じように素晴らしいものがあった二人だが、フベニルAチームとバルサBチームでは明らかに違いが見られた。ボージャンがどこのカテゴリーでプレーしても期待に応える活躍を見せたのに対し、ジョバニの活躍は例のU17大会でスポットを浴びて以来、成長が止まってしまったかのようだった。フベニルAで1シーズン、バルサBで1シーズンプレーしているが、決して褒められた内容ではない。どちらかというと慢心が目につくプレーが多かった。100%の力を出し切ることが見られなかった彼のプレー態度が、昨シーズンのバルサBの不振の原因の一つと言ってもいい。明らかなモチベーションの欠如、それが原因だと思われたが、今シーズンのライカーバルサチームに混じってのプレステージでの活躍が、その予想の正しさを証明してくれた。ミニエスタディに集まる知り合いのカンテラファンにはこれが気にくわない。

確かにここ2年間のジョバニに関しては、個人的にも不満タラタラだ。それは、ここ1、2年のロナルディーニョの悪いところだけをすべて見本としたような風景が見られたからだ。まず、走らない。ボールを争っても負傷を恐れるかのように足を突っ込まない。自陣がピンチの状態であろうとハーフラインを越えて下がったためしがない。ボージャニスタ(ボージャン派)がたくさんいるのに比べ、ジョバニスタ(ジョバニ派)が少ないのはそのせいだ。と言っても、それはカンテラの試合を見続けてきたファンの人々の間のことで、プレステージでの活躍を見て彼の素晴らしさを知ることになった人々には、ジョバニスタが大勢いる。

90年代の中頃に彗星のごとくデビューしてきたラウルを見る機会があった人なら、当時の彼の新鮮なプレーに今のボージャンをダブらせているだろう。運動量が誰よりも多く、決してあきらめると言うことを知らず、気がつけば相手のマークを外してゴール前に走り込んでいる選手。そして何よりも、チームが苦しいときに自ら上を向くだけではなく、周りの選手をも引っ張っていくリーダシップを持っていた。そのキャラクターを今のボージャンに見る。そしてこれまでのところ、ジョバニにはそれが見られない。これは事実。

昨シーズンの後半からバルサBに上がってきたボージャンだが、16歳という最年少選手でありながら、春頃にはしっかりとリーダシップを発揮していた。13試合で10ゴールという成績は、彼としては納得できないものだろうが、それでも立派なものだ。もちろんシーズンを通じてプレーしたジョバニがアシストとゴールを足しても片手で数えられてしまうような成績しか残していないから、ボージャンとは比較できない。これも事実。

だがこれらのことは、あくまでもカンテラ時代の傾向に過ぎない。これからいよいよ“本番”に足を突っ込もうとしているまだ10代の選手の話だ。バルサB選手時代、テレテレとデランテロをやってきたルイス・ガルシアが、いろいろなチームで“本番”を経験していくうちに、立派と言っていいであろうデランテロ選手に変貌したような事実は数え切れないほどある。決して天狗にならず、今までのように謙虚な姿勢をボージャンに期待し、そしてプレステージでのようなモチベーションあふれるプレーを、例え二部Bカテゴリー相手の国王杯戦でも見せてくれることをジョバンニに期待しよう。

何年にもわたって暖かく見守ってきたファンに対し、見事に裏切ってくれたプロ精神大大大不足選手モッタのようには間違ってもならないことを付け加えて、スエルテ、ボージャン!スエルテ、ジョバニ!

「こちらカピタン」より