1月31日 土曜日 くもり
 国王杯にサヨナラしてしまったことは非常に残念だけど、これで私の最終目的がはっきりした。どんなことをしてもリーグ4位以内に入ること、これだ。これっきゃない。なぜかというと、4位以内に入れば来シーズンも監督を続けることができることをラポルタは約束してくれた。だからUEFAカップにどこまで進みどのような結果に終わろうとそんなことには関係なく、もっとも大事なのはリーグ4位以内、これに目標を絞っていく。
 もし明日の試合に勝利すればその偉大なる目標まで2ポイント差と接近することができる。私には結果、結果、結果、ひたすら結果のみ要求されているし、結果をだすことにより私の首もしっかりと体にくっつくことになる。誰が何といおうと、そう、やれ、つまんねえ試合だの、退屈な試合だの、びくついた試合だの、あくびがでるだの、そんなことを言われようがどうしようが結果を出すこと、これっきゃない。結果をだせば、もちろん良い結果のことだが、すべてオーライさ。もうフッシギ監督なんぞとは言わせないんだ。

 

1月30日 金曜日 はれ
 ラポルタ会長が気を使ってくれて、サラゴサ戦の前に「国王杯に敗れてもリーグ戦4位以内に入れば問題はない」とか言ってくれたり、引き分けに終わった後も「監督更迭はあり得ない」と言ってくれたけれども、そんなことを信じるバルセロニスタはいないことも知っている。監督の仕事で一番大事なのは結果を出すこと、その結果をだしていない以上、将来が不安な状態なことぐらいはわかっているさ。
 それにしてもラジオ、テレビ、プレス、街の人々、キオスクのオヤジ、床屋のオヤジ、パン屋のおねえちゃん、たばこ屋のお兄ちゃん、すべて例外なくアンチ・ライカーになってしまった。この怒濤のような批判はさすがの私にも身にこたえる。やはりビッグクラブでの監督になるには早すぎたのか、あるいは才能がなかったのか、うん、それは今後のテーマとしよう。
 いろんなことを試してきたのに、これはいいと思って続けると次はぜんぜんダメだったり、まったく物事はうまくいかないものだ。パーソナリティーに欠けているとか、システムの固定性に欠けているとか、スタメン選手の固定性に欠けているとか、選手交代が下手くそだとか、イタリアンチックな感じだとか、私に対する批判は非常にバリエーションに富んでいる。でもチームに安定性がないという批判は納得できない。その批判をする人々は、これまでライカー・バルサは非常に安定した結果を出してきていることを正しく評価していない。カンプノウでは相変わらず勝ち続けられないバルサ、アウエーではどこのチームより良い結果を出し続けているバルサ、これはシーズン開始以来変化していない事実さ。だから明後日のアルバセテ戦、これはチョット怖い試合だよね。でも、そんなことは言っていられない。どうにかしよう。

 

1月29日 木曜日 サラゴサたったの2°
 試合が敗北という結果で終了したとたん、大洪水のように私に対する批判が襲ってきた。これまでも多くの批判があったから慣れていたとは言え、今回のは今までのとは比較にならないほどのものだ。いくつかの批判は、まあ受け止めることができるものだし、また、いくつかのものは納得できない批判だ。世の中は矛盾に満ちている。
 納得できないいくつかの批判、それは選手交代に関すること。パトリックは負傷してしまったからウサギに代えたわけだし、ボールを奪うのが仕事のダビッツが疲労のためかボールを奪われる立場になったから若大将に代えただけだし、ロナルディーニョにしても疲労が重なっているのか動きが非常に悪かったからメガネに代えた、それだけのことだ。これらの交代は非常に理詰めのものだということがメディアにはわかっていない、プン、プン。
 前半に点をとってから攻めに行かなかったと批判されても私は傷つかない。後半に入ってから5人のディフェンスを置いての守ったことを保守的と批判されても私は傷つかない。根性ナシ、卑怯者、能無し、イタリアへ帰れと怒鳴られても私は傷つかない。傷ついた唯一のこと、それは結果がでなかったことだ。それが残念無念であり、ツキのなさを実感するし、バルサの将来を不安にする。だが私の立場は不動だと信じている。少なくても今シーズンだけは私が監督として結果をだしていく。必ず結果をだしていく。それが私、フッシギ・ライカーの宿命なのだ。

 

1月28日 水曜日 くもり
 補強選手とか放出選手とかのリストは一体どこからどうして漏れるのだろうか。明日は大事な試合だというのに記者会見ではその話しばっかし。いい加減アタマにきて声をあらげたりしてしまったが、あとで大人げないことをしたと反省。あれでは前の監督と同じに見られてしまう。
 レージェス、トーレス、ラファエルなどが獲得候補選手としてあげられていたが、ぜんぜん私の知らないところで何かが動いているということか。チキとかルセーが考えてリストを作り選手を獲得してから事後報告ということになるんだろうか。いつでも私は蚊帳の外。とっても悔しかったから「どの選手を獲得しどの選手を放出しなければならないか、それは監督の私が決めること。その監督がこれらの噂を否定しているんだからこれほど明らかなことはないだろ」って言っておいてやったぞ。くそー。
 ところで放出選手の名としてチャビ、ガブリ、モッタというところがあるメディアを通じて発表されていたが、それがいつの間にか消えてしまっていた。クラブが圧力をかけたのか、あるいは誤報と気がついたのか、そこらへんは監督である私でさえわからない。あの中にフラン・ライカーという名前がなかったのが幸い、として喜んでおこう。
 今日の夜、十何年ぶりかにサラゴサに来たがあまりかわっていないようだ。半年ほどしかいなかった街だけれど、それでも懐かしい。明日は最初の決勝戦。これに負けたら次はないのだからまさに決勝戦だ。

 

1月27日 火曜日 小雨のちくもり
 昨日はアンドラショッピング、じゃなくて練習場視察に行っていたからマシアでの練習には参加できなかった。練習を1日休むとその翌日はやる気がムンムンしてくるところを見ると私も一丁前の監督になりつつあるということか。とにかく今日は気合いを入れてやってみた。
 まず最初の45分間は精神力と集中力をこめてビデオ観戦。セビージャ戦の後半での戦い方を反省するためにじっくりとやってみた。前線では3回とつながらないパス、ボールを奪ったらすぐにとられてしまう中盤の選手たち、そして前へとボールを出せないディフェンス選手、問題がかなりある後半の戦い方だ。リードしているんだから守るのは当然として、それでも守り方というものがあるだろうに。例えば、相手にボールを渡さないで攻撃のチャンスを作らせないようにすること、相手は必死になって攻撃してくるんだからボールを我々が奪ったら広大なスペースを利用して素速いカウンターをかけること、そのためにはディフェンスの選手、特にマルケスが判断鋭くボールを前線に送らなければならないこと、そしてこれらのことと同時に時間稼ぎするぐらの知恵を働かせること。
 ルイス・エンリケ、モッタ、マリオがドクターの許可を得て戻ってきている。イニエスタは少々時間がかかっているようだが、アルバセテ戦に間に合ってくれればいいと思う。木曜の試合を前提としてスタメン候補11人と控え選手候補11人でミニゲーム。モッタをどっちのチームにも入れなかったら、彼は練習後むくれて帰ってしまった。まあ、そう怒るなや。

 

1月26日 月曜日 雪のアンドラ
 アンドラは聞いていたほど物価は安くないぞ。タバコは確かにバルセロナより安かったから思いっ切り買ってしまったが、ほとんどの物はそれほどかわらない値段だった。そうだ、ここには練習場施設を見に来たんだ。施設はまあまあだったが、今年の夏のことを考えても鬼が笑うだけだ。
 これまで私にあった多くの批判の中に、スタイルが確立されていないというものがあった。だが、それは間違った批判というものだ。確かにシステムはいろいろと試してみたし、選手もかえてみたりしたけれど、スタイルは常に同じ。それは、勝利すること、ひたすら勝利すること、この目的が私の戦いのスタイル。これをイタリアチックと呼ぼうが結果主義と呼ぼうが、はたまたアンチ・スペクタクルとかアンチ・フットボールと呼ばれようが、そんなことは気にしない。セビージャでの勝利がそのスタイルの正しさを証明し、さらなる自信を与えてくれた。結果、結果、勝利という結果のみが私の地位を安定させてくれる。これは間違いなし。
 次の国王杯戦もセビージャ戦とまったく同じメンバーで同じような戦いのスタイルでいく。早いところ2点を奪って守りに守る試合展開となるだろう。バルセロニスタには息苦しい感じの試合がシーズン終了まで続くことになるだろうが、それは我慢してもらわないとならない。私はオランダ人でありながらミラネーゼの血が流れているのだった。

 

1月25日 日曜日 セビージャ快晴
 飛行機の中で日記を書いている。もう夜中の12時近く。スペインという国は試合時間が遅いからいつも帰宅も遅くなるが、それでも今日の試合は7時に始まったから良い方だ。2時ぐらいには家に着くだろう。
 いま、機内ではチャビの誕生日を祝うパーティーの最中だ。誰が用意したのか知らないがケーキまで配られている。彼にとっては快心の試合となっただけに、この24歳の誕生日パーティーは嬉しいだろう。いまから後悔しても遅いけれど、サラゴサ戦も彼を最初からプレーさせるべきだったな。こうして毎試合毎試合、ワタシは勉強し成長してくのだ。そして何年後かには押しも押されもせぬ立派な監督となるのである。
 バルサらしくない試合だとか、イタリアンチックな試合だとか、10人相手に何やってんだとか、お前はアホかとか、いろいろ批判はあるだろうが今のバルサに必要なのはとにかく3ポイント。バルサというところをワタシというのに置き換えてもいいかな。とにかく、スペクタクルな試合展開というのはそのうちやって来るさ。今はとにかく勝利、勝利、勝利あるのみ。どんなにみっともない勝ち方でも勝利あるのみ。
 明日はアンドラに行くことになった。チキとサンドロ・ルセーと一緒にアンドラに行って、来シーズンのプレステージの施設見学というところらしい。ということは、つまりワタシのことを誘ってくれるということは、来シーズンもバルサの監督がやれるということかな。これはいいニュースだ。気分も良いし、明日はついでにアンドラショッピングもしちゃうぞ。

 

1月24日 土曜日 雨のちはれ
 システムがようやく決まった。これまでプレステージを含めて半年間、すべての可能性を追求するためにいろいろと実験を重ねてきたが、そのかいあってついに理想的なシステムを見つけることができた。8月と9月はとりあえず4−2−3−1、10月はとりあえず4−3−3、11月は再びとりあえず4−2−3−1、12月はとりあえず4−4−2、1月はとりあえず4−3−2−1と4−3−3、これらを真剣に総括した結果4−3−3というのが一番良いということがわかったのだ。これでフラン・ライカーシステムがついに完成されたということかな。そう言えば、ヨハン師匠はかなり前から4−3−3システムというのが良いといっていたが、その意見とはぜんぜん関係ないのはもちろんだ。これは、これまでのワタシの経験でつかむことができた貴重な結論なんだから。
 というわけで、サビオラはベンチだ。やはりプンタは背の高い選手じゃなくちゃいけない。彼にはいろいろと批判が多いし下手すると彼と心中することにもなりかねないが、いずれにしても今から2連敗すればクビになることはわかっているんだから、そんなことはどうでもいい。何としても彼をプンタにしよう。やはり最後にあてにできるのはオランダ選手、明日はバルサにいるすべてのオランダ選手をスタメンで出しちゃうぞ、と思ったけれど、オーベルは後半からでもいいか。うん、この試合はいけそうだ。

 

1月23日 金曜日 はれ ヒトリポッチ
 とてつもない孤独感。ラポルタをはじめ、かつては常に笑顔で話しかけてきたクラブのお偉いさん連中でさえ、サラゴサ戦のあとは自分との接触を避けるような感じだ。チキもサンドロ・ルセーも近寄ってこなくなってしまった。誰か他の監督でも探しているんだろうか?
 両翼にエストレーモを、そしてそれがダメならトリデンテを、そしてそれもダメなら片エストレーモを、そしてみんなダメだったからトリデンテを試してみた。ドブレ・ピボッテがダメなら3人ではどうかと思いダビッツ、コクー、ジェラールを中盤に置いたがこれもダメ。ロナルディーニョを真ん中じゃなく左端にやったらどうかと思ったがこれも今のところイマイチ。身長が高い順にスタメンを用意してみたがこれもダメ。ポルテロもいろいろといじってみたが、ポルテロはゴールを決めてくれるわけがない。ヨハン師匠はもうずいぶん前からアメリカにゴルフ旅行に行っちゃって、ケチな彼は電話代がかかるといって連絡さえしてこない。クルイベルは罰金刑を言いわたしたらふてくされてしまって口さえきいてくれない。ああ、孤独、孤独、ひたすら孤独なワタシ。でもあと2試合の結果次第で、この孤独ともサヨナラできるかも知れないな。ひょっとしたら監督の座ともサヨナラかも知れないけれど。まあ、なるようになれだ。

 

1月22日 木曜日 はれ カンプノウ寒し
 しかしそれにしても何やってもうまくいかない試合だったなあ。マルケスがバッチシとマークされていて彼からは一回もボールがでなかったし、ロナルディーニョは3人に囲まれて身動きできない状態だったし、左ヒザが痛いというコクーに代えてチャビを後半に投入したけれど、それでもボールはうまいこと散らなかった。今シーズンはまったく機能していなかったトリデンテがビルバオ戦の後半20分でどうにか良いところを見せたので、この試合はそのスタイルでいったんだがこれまたまったく機能しなかったなあ。どうしてかなあ?
 状況を適切に分析した結果、ここはエストレーモ投入で試合展開を変えようと思ってオーベルをいれたのは良かったんだけれど、クルイベルを下げちゃったのはまずかったかなあ。せっかくサイドからのセンターリングが出始めたのに、ゴール前には誰もいなくなっちゃったからなあ。それでもジェラールが中盤から飛び込んできていたりしたからまだ良かったんだけれど、ルイス・ガルシアをマルケスの代わりに入れてジェラールをマルケスの位置まで下げちゃったのも失敗だったかなあ。やることなすこと思い通りにいかない試合だったなあ。どうしてかなあ?
 サラゴサの監督になったビクトルの試合終了後の記者会見を聞いていたら、その答えが何となく見つかったような気がしてきた。彼は今シーズンのバルサの試合を全部、そう、全部観戦したらしい。彼はバルサのソシオだから当然と言えば当然だけれど、サラゴサのチーム事情よりバルサのそれの方が詳しいって言っていたからなあ。つまり我々の戦い方は100%研究されてしまっていたんだ。それじゃあ、しょうがないか。
 いくら嘆いていてもしょうがない。次の試合のことを考えよう。オーベルが登場してから少し良くなったような気がしたから、次のセビージャ戦はエストレーモでいくかな。今度はうまくいくかも知れない、さて、どうかな?

 

1月21日 水曜日 はれ
 クルイベルにはそれ相当の罰金刑、これで終わりなのにメディアの連中はいつもよりしつっこい。
「酔っぱらって練習に参加してきたからシャワー室に追いやったのか?」
「ノー!」
「態度がおかしかったから練習をやめさせたのか?」
「ノー!」
だいたいクルイベルが遅刻してきた日には私はオフィスでビデオを見ていたんだから、彼が遅刻してきたことは練習が終わってからの報告で知ったことなんだ。それはメディアの連中も知っているはずなのに執拗にそのことを聞いてくる。特にマルカという新聞のバルサ担当ロッホというヤツはうるさくてしょうがない。まったく、もう記者会見にでるのが嫌になってきた。
 ところでうるさいのはメディアだけじゃないところがこのクラブの複雑なところだな。これまでルイス・ガルシアだってロナルディーニョだって練習に遅れてきたことがあるのに、クルイベルのこととなるとクラブ首脳陣もうるさい存在となる。名前はださないがある副会長なんか私の目の前で「処分は厳しくしなければならない」とまで言いだすし、いったいこのクラブはどうなってるんだ。私や選手しか知らないはずの情報までメディアに流れていることがある。それにしてもクルイベルの“酔っぱらい騒動”はどこからどのように噂が流れたのか、これも不思議な話だ。フッシギなのは監督だけじゃなくて良かった。

 

1月20日 火曜日 はれ
 クラブが選手の練習参加遅刻というおこないに対してはまず罰金、そして再発が見られる場合はクラブ首脳陣による調査会を設置して他の種類の罰を加えるべきかという調査をおこなうことにしている。これまでのクラブの規約によれば遅刻時間の5分間を一つの単位として罰金が増えていくシステムとなっていたが、私が来てから1分間単位にしてもらっている。1分間につき10ユーロ(約1300円)というのが私が考えた罰金システム。だがこのシステムは4分遅れたから40ユーロということじゃあない。麻雀形式で計算されていくシステムだからだ。つまり2分では20ユーロだが3分では40ユーロ、4分では80ユーロとなる。そこで月曜日の練習に30分遅れきたクルービーの罰金はいったいいくらになるのか、電卓を使って計算してみたらとんでもないことになってしまった。53億6870万9120ユーロじゃないか。これは間違いなく離婚騒動となり一家離散自殺騒ぎとなってしまうかも知れぬ。
 今日の練習前にクルービーを個人的に呼んで大人同士の話しあいをした。彼にも弁明のチャンスを与えてあげなければならない。それによればクラブ調査員がいうような夜遊びはしていないというし、たまたま寝坊して練習に遅れてしまったと言う。体調も万全だし、メディアが騒いでいるようなおかしなこともしていないと言う。よし、今度だけは彼を信用してあげよう。罰金の額も53億ユーロにしないで6千ユーロにしてあげた。何でもフットボール選手組合という組織が認めている最高額の罰金が6千ユーロらしいから、マドリがロナルドに課した6千ユーロと同じ額にした。罰金額は同じでもゴール数はだいぶ違うが、まあ、良しとしよう。クルービーに猛反省乞う。

 

1月19日 月曜日 はれ
 私の勇気ある采配、つまりジョルケラとオラゲールのスタメン起用というのがメディアにメッチャクッチャ誉められているが、これまで批判ばかりされてきた身としては非常に気分の良いことだ。だが問題は試合に勝てないことだな。これが少々マイナス面となって私の評価となっているようだ。ビルバオ戦になぜ勝てなかったのか、ビデオをじっくり見て研究してみよう。
 というわけで、今日の練習はテン・カテにまかせておいて、私はオフィスに籠もりビデオ研究で1日を過ごすことにした。ビデオ研究は試合に勝てない原因をいろいろと教えてくれる。ビルバオ戦に限らず我々はまず運がないことがよくわかる。審判の判定がいつも我々に不利だというのもよくわかる。決定的なゴールチャンスにゴールが決めらないということもわかるし、つまらない相手のチャンスにゴールをキッチリと決められちゃうというのもよくわかる。これではなかなか勝てない。とりあえず、そういう結論がでた。
 聞くところによるとクルービーは練習に30分も遅刻してきたらしい。しかも練習が終わってから一番早く練習場を後にしたのは彼らしい。何年もバルサにいる彼がカンプノウで何であんなにブーイングを受けるのか、最初はまったく理解できなかったが最近ようやくわかるようになってきた。ロナルディーニョがソシオになり、運のないルストゥがそれでもバルサに残って頑張りたいと言っている中、彼の場合はグランドの外でのおこないがバルセロニスタ受けしないんだな。今日の遅刻にしても、クラブが雇っている調査員によれば昨日の夜遊びが原因という可能性があるらしい。こういうことはすぐバルセロニスタに知られてしまうということが彼はいまだにわかっていないようだ。これはどうにかしないといかんぞ。さて、どうしよう?

 

1月18日 日曜日 はれ
 ビルバオ戦には引き分けてしまったとは言え、選手たちはよくやっていたので今日は完全休養日とした。したがって私も完全休養日。頭をじっくり休ませてカップ戦に備えよう。

 

1月17日 土曜日 はれ 心の中はどしゃ降り
 相手のセットプレーの時に選手交代をしちゃあいけないというのは本当だったんだなあ。コーチングライセンス教室で最初の日に教わったことは本当だったんだなあ。ああ、何であんな時にクアレスマを出しちゃったんかなあ。審判が笛を吹くのが早すぎたんじゃないかなあ。クアレスマが走っていくのが遅かったんかなあ。
 ビクトルの代わりにジョルケル、プジョーの代わりにオラゲールという我ながら勇気ある素晴らしいアイデアはまさにヒット商品だったのに、何であそこで選手交代しちゃったかなあ。勇気ある采配で1ポイント獲得、選手交代のチョンボで2ポイント失ってしまった。ああ、算数はフッシギだなあ。悔しい、悔しい、とてもグヤジ〜イ。

 

1月16日 金曜日 はれ
 いかに私が頭脳明晰フッシギ・ライカーとはいえ、こんなに複雑怪奇なパズルを1日で完成させるのは非常に難しいことなのだ。ヨハンには閃きという武器があったし、バンガールにはコンピューターという器械があったが、私には明晰な頭脳しかないのだ。困った、困った、困った。
 こういうときには冷静にメモしながら分析してみよう。まずプジョーの抜けた穴を埋める選手は4人、そうチキが言っていた。コクー、レイジゲル、オラゲール、そしてジェラール。安全にいくならコクー、危険を覚悟するならオラーゲルかジェラール。レイジゲルもいいが、そうすると右ラテラルの抜けた穴も考えないといけないから面倒くさいのでやめよう。まあ、このポジションは得意の花占いで決めてもいいかも知れない。だがポルテロとデランテロを選ぶ場合、花が何本あっても足りないから困ってしまう。
 ルストゥを選んだ場合、誰を外すか。マルケス?プジョーがいない今、それは危険が大きすぎる。ロナルディーニョ?まさか、それは不可能。サビオラ?ここのところゴールを決めているし、クルイベルがどんな調子からもわからない。いっそのこととぼけて4人一緒にだしてしまうと・・・チキに怒られる。そうだ、ルストゥではなくジェルケラでいくと問題は解決される。だが試合後に問題が起きそうだな。翌日の朝一番の飛行機でトルコに帰っちゃうかも知れないし。
 まあ、こういう複雑なパズルを一晩で解決しようとするのは間違いだな。明日の朝から試合直前までに決めればいいことだ。チキに相談してみよう。

 

1月15日 木曜日 はれ
 期待していた“ダビッツ効果”がいきなり出てきたようだ。性格的におとなしい選手が多いバルサだからして、彼の加入で少しは“どう猛的”というか“番犬的”というか“ピラニア的”というか、とにかく激しさが外に出てくれるといいと思っていたんだが昨日の練習で早速それが見られた。
 まずダビッツとモッタがあわや殴り合いかというところまでいったんだが、周りの選手に止められて事なきを得た。衝突後も吠えまくっていた彼らだが練習後は仲の良い友達になったようだ。プロの選手はそうじゃなくちゃいけない。ラモン・ロスとクアレスマも取っ組み合いの喧嘩になりそうだったが、それを止めたのがダビッツ。二人の側に一番近かったのが彼だから止めたんだろうが、これもあわやというシーンだった。彼らの場合は練習の最後まで揉めていたようだが、まあ、若い選手同士だからしょうがないだろう。それにしてもロスも気の強い選手だな。激しい練習になるのはいいんだが、これ以上ケガ人がでないことを祈るだけだ。
 ケガ人と言えば、プジョー、イニエスタ、ルイス・エンリケ、ガブリ、オスカー・ロペス、この5人は間違ってもビルバオ戦には使えない。クルイベル、オーベルマルスは招集できてもプレーさせられるかどうかもまだ怪しい状態。サビオラ、レイジゲル、コクーはラッキーなことにだいじょうぶのようだ。ルストゥは精神的にダメなようだ。
 ここ2試合は何も考えず前回のメンバーをそのまま出していれば良かったのに、また新しい発明をしなければならないハメになってしまった。まるでパズルをやっているような感じだ。まあパズルは抜けている穴のところに適当なものを当てはめていけばいいのだから簡単と言えば簡単なんだが。プジョーのところにコクー、コクーのところにダビッツ、チャビのところにジェラール、イニエスタのところにチャビ、こんな感じでいいんじゃないかい?

 

1月14日 水曜日 はれ
 勝つには勝ったがそのかわり代償も高い試合となってしまった。プジョーは肩を傷めながら試合を続けてくれたが最後には頬の骨を痛めてしまいプレー続行不可能となってしまった。交代させてからすぐに病院に行かせたがあいにく悪い予感が当たってしまい、1か月以上のリハビリが必要という報告が入っている。彼の代わりにセントラルに入るはずのレイジゲルも前半に打撲傷の痛みを訴えていたのだが、痛み止めの注射を打ちながら後半もよく頑張ってくれた。イニエスタも打撲傷で交代させざるおえなかったが、レイジゲルと同じように明日の精密検査次第で何日間のリハビリが必要かがわかるという。そういえば、サビオラの右足肉離れも心配だ。サラゴサ戦も痛みに耐えながらよく頑張っていたけれど、今日の試合で痛みが再発したようだ。う〜ん、困った、困った、まあどうにかなるだろう、か?
 それにしても、こんなに最後まで苦しまずにもう少し簡単に終わる試合だったと思う。うちの選手はスペクタクルなヒールキックやラボーナが好きなようだが、そういうファン受けするプレーは試合の結果がはっきりしてからでいいんだ。まだ混戦状態だというのにやたらと派手なプレーをしたがる選手が何人かいるが、彼らはもう少し勉強が必要だな。そこら辺が気にくわないと言えば気にくわない試合だった。
 さてと、土曜日のビルバオ戦にどれくらいの選手が計算できるのか、それさえわからない私は可哀想な監督。プジョーは間違いなくダメ、モッタ、マリオ、ガブリ、ルイス・エンリケも間違いなくダメ。怪しいのはレイジゲルとイニエスタ、そしてクルイベルとオーベルマルス。計算できる可能性が大いにあるのはダビッツ。ここ3試合同じメンバーでやっと戦うことができたのに、それも次回は不可能。ここはフッシギ発明と言われようが何と言われようが何らかのピッカピッカアイデアを絞りださねば。

 

1月13日 火曜日 くもり
 今から言ってもしょうがないことだが、バルサに来ることが決まった時からこのチームにはバランスがとれていないことがわかっていたんだ。クラブに来たときにはすでに加入選手も決まっていたし、自分としてはそれを受け入れるしかなかった。これまで不調の言い訳は一言も言ってきていないけれど、まあ、そういうことなんだ。私が唯一頼んだ選手はジオだけ。そして今回のダビッツ、あとの選手はすでに入団決定済みの選手だった。それでも我ながらうまいこと調節しながらここまできていると思う。
 さて、そのダビッツだが、体が全然できていない。もう長いこと試合にも出ていないし、練習も何週間もしていないようだ。フィジカル的に問題はないようだがとても90分間プレーできる状態じゃない。10分ぐらい走れればいいほうだろう。それでも一応明日のカップ戦には招集しておいた。これで少しは観客数も増えるというものだろう。クルイベルもドクターOKがでたと思ったらまた痛みを覚えたと言うし、オーベルに至ってはどこがどう痛いのかさえ理解できない。
 というわけで「サラゴサ戦のメンバーを信頼し、同じメンバーで戦うのが常識というものだろう」なんて記者会見で言っておいたが、実際はメンバーがいないだけの話し。クルイベルやオーベルやダビッツが何の問題もなければ、もちろん彼らを起用していきたいんだ。
 ピレネー山脈の向こうはヨーロッパじゃないと子供の頃教わったけれど、実際に来てみるとそんなこともない。ただ普通はというか、世界中の国が金曜日の13日が呪われた日だと思っていたが、ここは13日の火曜日がそうらしい。でも今日は何も特別に悪いことがなくて良かった。 

 

1月12日 月曜日 くもり
 日記をつけ初めてからの初の曇りの日。と言っても1日の半分近くは晴れていたし、ここはミランやアムステルダムとの気候とは比べものにならないぐらい暖かい。ダビッツにそのことを話してやったら喜んでいた。
 サンタンデールに敗北しレバンテにも負けたあと、これはどうにかしなければと思っていたら一つの素晴らしいアイデアが浮かんだ。試合のビデオを選手に見せて、どこが悪い、どこが非常に悪い、どこがとてつもなく悪いか、それを一緒に学習することにしたんだ。これはたぶん今までなかった画期的な方法だと思う。レバンテ戦の翌日に選手をいつもより1時間早く集合させてカンプノウのオフィスでビデオ検討会。前半はあまりにも悪かったので、それを見せてしまうとショックが大きいだろうから後半だけにした。我ながら実に配慮ある監督だと思う。このアイデアが功を奏してしてか、サラゴサ戦は文句なく勝利。したがって今日もサラゴサ戦のビデオ検討会を実行。これで明後日のレバンテ戦も勝てるかも知れない。

 

1月11日 日曜日 はれ
 逆転の発想っちゅやつかな、困ったときにはこれに限る。右セントラルだったプジョーを左に、左エストレーモだったルイス・ガルシアを右に、真ん中だったロナルディーニョを左に、右で使っていたイニエスタを真ん中に、右エストレーモだったクアレスマを左に、そしてルストゥの代わりにビクトル、これがすべてうまくいっちゃったよ。我ながら驚くほどうまくいっちゃった。う〜ん、困ったときには神頼みと花占いと逆転の発想だな。
 ビクトルからルストゥにスタメン変更したのは神頼みでも花占いでも逆転の発想でもなんでもなく“秘密の事情”によるものだったけれど、やはり間違いだったか。間違いは理由もなく訂正すればいいことだが、それにしてもルストゥにはショックなことだっただろう。だが彼のいいところは言葉が通じないことさ。彼の通訳もバケーションでトルコに帰っていて今のところルストゥには事情説明していないけれど、まあ彼はプロ中のプロだからなんとなく納得してくれることを祈っている。
 それにしても負けなくて良かった。もし負けたとしたら間違いなく白い花が咲いていただろう。今日だけは心の底からすべての選手に感謝している。いや選手だけじゃなく、ファンの人々にも感謝している。サビオラやイニエスタをベンチに下げたときにブーイングが聞こえたが、それはしょうがないというものさ。彼らはサビオラやイニエスタの体調がイマイチで試合にのぞんでいたことを知らないわけだから、あの交代が気にくわなかったんだろう。まあ、こういう内部事情がわかないと理解できないこともあるということさ。
 さてと、明日はダビッツがやって来る。これでチームに闘争心とキャラクターがさらに生まれることになるだろう。ダビッツ、ダビッツ、彼は私の希望の星。半年なんて言わず、もっといてくれるといいんだが・・・。 

 

1月10日 土曜日 はれ
 53回目の記者会見に出席し、記録を更新中。バルサに在籍した監督として自分の名前をクラブの歴史に残すにはこれしかない。明日も試合後に記者会見場に顔をだし、54回目としよう。
 今から言い訳をするわけではないが、クルイベルとオーベルマルスの負傷が長引いているのが痛い。特にオーベルマルスの負傷だが、どうもドクター陣にもよくわからないという報告をもらっている。当初は1週間のリハビリと診断されていたのにもう4週間目に入っているし、3日おきに状態を見ているドクター陣も当人に痛みがあると言うので、理由はわからないもののどうしようもないらしい。
 サラゴサ戦にラモン・ロスを招集した。彼はもう何回も呼んでいるんだが、オスカー・ロペスと同じようになかなか出番がやって来ない。彼らみたいな将来性あふれる若い選手を起用するには、チームの状況がいいときでないと可哀想なことになる。だから、例えば9−0ぐらいで勝っていれば、ジオに代えてオスカー・ロペスを、そしてコクーに代えてロスを出せるんだが、最近はそういうハイスコアーで勝てることが少ないからな。
 新しい年に入ってからの初めてのカンプノウでの試合だ。去年は2勝しかできなかったけれど今年は違うぞ。まずサラゴサをブチ倒してからレバンテを木っ端微塵にし、そしてビルバオをギャフンといわしてカンプノウ3連勝という記録を作ってしまおう。もしその逆の結果となると、あの有名な白いハンカチが咲くことになってしまいそうだ。それだけは避けたいからここは何としても踏ん張って頑張ってみよう。

 

1月9日 金曜日 はれ
 まだ完全に決まったわけではないとは言え、こんなに早くダビッツ獲得が現実性をおびるとはチットも思わなんだい。会長をはじめチキにしても、これまで事あるごとに反対してきた冬の選手補強だからして、まさかこんなにスムーズに行くとは思わなかったな。つまるところ、彼らにしてもヨハンの“助言”が、何かをやる際のキーポイントとなるということだな。しかし、待てよ、ダビッツが来ながらもし結果がでなかったら彼の獲得を要求した監督に対する責任追及がこれまで以上に激しくなるだろうし、もういい加減な言い訳はできなくなるということだな。それはコマッタ、コマッタ、コマッタ。
 週末になると女房が花をいっぱい買ってきてくれる。我ながら良くできた女房だ。うん、それでは始めるか。ルストゥが1枚、ビクトルが1枚、レクベルが1枚、バルデスが1枚、ルストゥが1枚、ビクトルが1枚、レクベルが1枚、バルデスが1枚、ルストゥが1枚、ビクトルが1枚、レクベルが1枚、バルデスが1枚、ルストゥが1枚、ビクトルが1枚、レクベルが1枚、バルデスが1枚・・・、よし、決まった、これで間違いなしと。

 

1月8日 木曜日 はれ
 昨日に引き続き今日も記者会見に顔をだすハメとなった。試合に負けた監督にとって試合後の記者会見ほど冴えないものはない。何を言っても言い訳に聞こえるからね。これで52回目の記者会見。
「選手たちはこの試合に勝利するためにできる限りのことをしたと思っている。我々がボールを支配し多くのゴールチャンスを作りながらもゴールを奪うことができなかった。ゴール運、それが我々に唯一欠けている試合だった。」
もう暗記しちゃったこのセリフを何回しゃべったことになるのかわからないけれど、今日もこのパターンでいってみた。けっこう気に入っているセリフだし、事実そうなんだからしょうがない。ゴレアドールの不足、いまだに固定されていないシステム、あるいは毎回変わるスタメン選手、そういうことで不振の原因を分析するジャーナリストが多くいるが、毎試合ゴールチャンスはあるんだ。それがなぜだか入らない。つまりゴール運がないんだ、そう信じている。だからスッキリとゴールがどんどん入ってしまう幸運が訪れるまでジ〜と我慢、そう選手に言っておいた。彼らはまったく聞いていなかったみたいだけれど。
 二部チーム相手の敗北というのは、ファンにとっては不快そのものだということは理解できる。だが我々の目的は次のステップに進むことであり、そのための90分のカンプノウでの試合が残っている。だいじょぶ、来週のカンプノウでの試合でどうにかなるさ。日曜日のサラゴサ戦にはパトリックもマークもまだ出場が微妙だが、来週の水曜日のレバンテ戦には彼らも出場できるだろう。だから、だいじょうぶ、ゴレアドールとエストレーモが戻ってくるんだから。

 

1月7日 水曜日 はれ
 今日も練習後の記者会見に招集されてしまった。チームの成績が悪いのは自分の責任ではないとはいえ、やはりチームの代表者として顔をださなければならない。これでバルサの監督として51回目の記者会見、自分の監督経験は短いとはいえ過去のすべての記者会見の出席数を超えている。さすがバルサというクラブは凄い。
 今日はやたらとジャーナリストがトゲトゲしていて質問も意地悪なものが多く、自分としては珍しく興奮してしゃべってしまった。やれサビオラが文句を言っているだの、会長の「選手には勝利者としてのメンタリティーが足りない」発言だの、ヨハンのロナルディーニョ批判だの、答えにくい質問ばかりだ。シウダ・ムルシア戦後の“サビオラ批判”に関していえば、私はこれまでそうであったように決して個人の選手の名前をだして批判したわけじゃない。あの日も「一人のデランテーロ」と言ったはずだ。それをメディアやサビオラが勝手に解釈したに過ぎない。会長の発言に関しては、私個人としては納得できない内容だ。勝利者のメンタリティーというよりは、今のバルサに欠けているのは選手のバランスなんだ。みんな同じような選手が揃っていて、スペシャリティーに欠けていると思っている。ヨハンのしゃべったことは実際に聞いてはいないが、ロナルディーニョは素晴らしくよくやっていると思っている。彼を批判することは私にはできない。
 ついに一つの決断をし、それを会長に伝えた。1月の補強がどうしても必要、それを伝えておいた。どうやらクラブ理事会内部もいろいろともめているらしい。これまで冬の補強はしないと語ってきた会長だし、何よりもサンドロ・ルセーがダビッツの獲得に反対していると聞いている。チキにしても彼のアイデアでこの夏に選手補強をしたわけだから、冬の補強には基本的には反対している立場だった。だが、それに変化が見られたのがヨハンのダビッツ必要発言だ。あれ以来、会長もチキも賛成側にまわってくれた。彼らがいまだに反対の立場をとっているサンドロ・ルセーを説得してくれるといいんだが。でも、まあどうにかなるだろう。

 

1月6日 火曜日 はれ
 会長のラポルタがチキやルセーを伴って練習を見に来た。バルサの監督になってからこんなことは初めてのことだが、どうやらバルサというクラブにとっても会長が練習を見に来るというのは異様なことらしい。ひょっとして次回の試合に負けたら君は終わりだという最後通告を言い渡しに来たのかと疑ってしまったけれど、そうではなくて励ましに来てくれたようだ。会長が自分の監督としての才能をかっているということは良いことだ。
 だが選手にとっては会長が練習に見に来るということはどうやらとてつもない刺激になるようで、いつもより激しい練習になってしまった。オスカー・ロペスとぶつかったルイス・エンリケが頬の骨をおってしまったし、サンタマリアもマルケスにだいぶ激しいタックルを受けてうなってた。その激しい練習シーンをカナルチキートに撮られてしまったけれど、まあいいだろう。
 明後日の国王杯にはビクトルにチャンスをやろうと思っている。会長の顔をたててルストゥを起用し始めてみたが、どうもイマイチだ。彼は決して悪いポルテロではないし、ツキのある選手だと思ったがどうやら正反対だったようだ。もしビクトルがいい試合をしたらサラゴサ戦でも彼を起用してみるか。何だかふてくされ気味のサビオラにもスタメンのチャンスをやらんといかんな。そう言えばルストゥが私と話をしたいらしい。今日の練習後に記者会見に呼ばれたらしいが、監督と話をしてからにしてくれとジャーナリストに頼んで出席を断ったと聞いている。う〜ん、ルストゥ、ルストゥ、難しい問題だな。でも、まあどうにかなるだろう。

 

1月5日 月曜日 はれ
 こんなことはしたくなかったんだけれど、やはり監督としての威厳を保つためにしかたがないだろう。これまでテン・カテなどのスタッフ・テクニコと連係を保ちながら選手たちの夜の動向を探っていたんだが、どうも気にくわないことが多すぎる。何回も個人的に選手たちと話し合って夜の外出はできる限り避けるように、そう言ってきてたが彼らがそれを守らない以上しかたがない。昨日、会長に個人的に頼んでクラブとしても選手たちの動向を探るように頼んできた。本当はこんなことはしたくないんだが。
 バジャドリに引き分けあとマラガに完敗し、その3日後にクラシコが控えているというのに朝方までディスコで騒いでた選手が何人かいたんだ。もうこれは限界だと思い、それ以来、試合の前日にはホテルに全員を招集して缶詰状態にすることに決めた。これでさすがに試合前日にホテルを抜け出してディスコでバカ騒ぎする選手はいなくなったようだが、それでも普段の日は相変わらずディスコ通いしている何人かの選手がいることがわかっている。若手の選手が3人、すべて含めるともう10人近くの選手にきつく言いわたしてきているし、しかも“腹痛”を理由に練習に来ない選手が最近多いのも気になる。ここはもう我々スタッフ・テクニコだけでの探偵ごっこは無理なので、クラブのお偉方にも手伝ってもらうことにしたんだ。頭に来るのは、日曜日のサンタンデール戦の後にもディスコに朝までウロウロしていた若手の選手がいたことだ。まったく、これだから背の低い選手や髪の毛を伸ばしてヒモ巻いて喜んでいる選手はダメなんだ。

 

1月4日 日曜日 はれ
 決して敗戦の言い訳をするわけじゃあないけど、やはり重要な選手の欠場というのが痛かったか。モッタやガブリ、そしてクルイベルやオーベルマルスというのは我々にとって非常に重要な選手であることは間違いないし、そのような選手が抜けている状態はどう考えてもいい状態ではないよね。普通だったら彼らがスタメンで出るべきなんだから。でも決してそれを敗戦の言い訳にしてはいけないと思っている。

 

1月3日 土曜日 はれ
 明日の試合を非常に楽しみにしているんだ。新しい年に入って我々の調子も確実に上向いてくるころだと思う。これまで多くの負傷者や何らかの理由で試合に出場できない選手が多くいたけれど、そして明日の試合にもクルイベルとかオーベルマルスという重要な選手が欠場状態になっているけれど、我々の選手層は厚いしだいじょうぶ。だからどんな結果に終わろうと、それらのことを言い訳にはできないな。とにかく我々はチャンピオンズまで3ポイントという好位置に付けているんだ。だいじょうぶ、我々は上昇していくさ。どうにかなるさ。

 

1月2日 金曜日 はれ
 今のバルサがイマイチなのはどうもプレステージでのやり方が悪かったんではないかと思っている。プレステージの一番の目的は各選手の体力をつけることであるのに、我々にはその時間がじゅうぶんとれなかった。それはアメリカツアーというのに関係することなんだな。あのツアーでほぼ2、3日おきにプレステージではあり得ないような強豪チームとの対戦が組まれていたのがいけないんだ。我々はその試合のために肝心なフィジカル面での問題に手をつける時間を奪われてしまった。でもそれは言い訳にはならないけれどね。

 

1月1日 木曜日 元旦 はれ
フェリス・アニョ・ヌエボ!
カステジャーノではこう言うのか。また一つ新しい言葉を覚えた。