12月21日



4番・デブー

1試合の出場停止を受けたチャビ、練習で負傷したジェラールに代わって、モンジュイクでのオーケストラ指揮者はデブーが務めることになりそうだ。
このポジションはもちろん彼にとって自然のものではないものの、初めての経験でもない。オランダ代表やアヤックス時代に、臨時的にプレーした経験をもつ。昨日の段階ではかすかながらもチャビの出場の可能性が見られたがそれも不可能となり、練習でジェラールが負傷してしまうという不運にみまわれたレシャック・バルサ。コクーと同じようにいくつかのポジションをこなすデブーに、4番スタートの可能性が強まる。

モンジュイクの試合に勝利すること、これが一番の希望でありバルサに静けさをもたらすことになると考えるクライハート。
「クリスマスを楽しく過ごすためにも是非とも勝たねばならない試合。ダービー戦を迎える週というのは普段とはチョット違う感じがする。同じ街同士にあるチームの戦いだからね。エスパニョールには悪いけれど、この試合に勝利して来年からのリーグ戦を盛り上げていかなければ」

コクーは明日の試合で中盤を務める数少ないプレーヤーの1人となってしまった。デブーと共に4番のポジションをこなせるコクーは、レシャックにとって最も使い道の多い選手だ。
「エスパニョールは我々と同じように、不安定な試合が多いと聞く。先日のバレンシア戦を見たけれど、確かにそういう感じだった。だがいずれにしても我々には勝利が必要な試合。ダービー戦というのは見る人にとっては面白い試合になることが多い。今回も激しい試合となるだろうね」

カンテラ育ちのガブリにとって、このダービー戦は多くの外国人選手とちがい、非常に特別な試合である。相手のチームにはカタルーニャの下のカテゴリーで一緒にやってきた選手が何人もいるからだ。
「カタルーニャ以外の選手に比べれば、確かにモチベーションという意味において僕には特別な試合。小さい頃から知っている選手ばかりだしね。そしてそういう選手はこのダービー戦がいかに大事な試合かということを知っているんだ」

サビオラにとってはバルセロナダービーは始めての経験となるが、アルゼンチンで経験したダービー戦前夜に比べ、人々が冷静なのに驚いている。
「僕が経験してきたダービー戦とはチョット違うような気がする。アルゼンチンで経験したのは、試合2週間前から興奮状態にあるファンが街にあふれかえっているような状況なんだ。でもここは皆、冷静に受け止めているみたいだね。これだったら親子ずれで試合にも来れるだろうと思う」

ミランーインテルのダービーを経験しているココ。彼もまた少し違う雰囲気を感じている1人だ。
「ミランーインテルのダービー戦は、どちらかというとバルサーマドリ戦の雰囲気に近いだろうね。もちろん試合当日の土曜日には街全体が盛り上がるんだろうけれど、いまのところあまり実感としてわいてこない」



アルゼンチンの状況に悲しむ

ヨーロッパにはアルゼンチンで起きている悲しいニュースが続々と入ってきていいる。汚職政治家が政権をとることが常識となっているアルゼンチンでは、失業者の増加や強度のインフレ、そして先日の銀行閉鎖措置による民衆の怒りがついに爆発し、一昨日あたりからブエノス・アイレスを中心として町は騒然とした状態になっている。
家族や友人をアルゼンチンに残し、スペインでプレーしている数多くの選手たちは、ひっきりなしに入ってくる悲しいニュースを聞きながら、それぞれ思いはアルゼンチへと飛ぶ。
明日のダービー戦を戦うメンバーの中にも心はすでにアルゼンチンへ移っている何人かの選手がいる。バルサにはサビオラ、ボナノ、エスパニョールにはサンチェス・ポセエ、マウロ・ナーバス、そしてパブロ・ロッチェン。昨日の練習後におこなわれた記者会見で彼らは一様に自国の危機に対し、心配の表情を隠さない。

サビオラ「今アルゼンチンは、非常に悪い状態のようだ。人々は空腹と死と背中合わせの毎日を送っている。もしこういう状態が続いたら、いったいどうなるんだろうか。僕はアルゼンチンで生まれアルゼンチンで育った。僕の国は素晴らしい国だと思っているけれど、最近伝わってくるニュースは悲しいものばかりだ」

ボナノ「むなしさと悲しみ、その一言。テレビのニュースを通して見る母国の人々の苦悩は、同時に自分の苦悩でもある。バルセロナでの平和な生活を送っている自分だけれど、母国に残した友人や親戚の人々のことを考えると辛くなってくる。アルゼンチン国民はもう長い間、政治腐敗からくる空腹と戦っている。今の状況は起こるべくして起きたことだと思う。人々の我慢にも限界があるのはあたりまえのことだろう。今私の住んでいるスペインという国で平和が可能ならば、いつの日か我が母国でもそれが現実となってやってくる日が必ずあると信じたい」

マウロ・ナーバス「今すぐにでもアルゼンチンに飛んでいって、街の人々と苦しみを分かち合いたいと思う。母国でおこっている悲惨な状況をテレビの画面を通してしか実感できないということに、自分の無力感を感じる。アルゼンチンの一般大衆は空腹と失業と現実的な死の恐怖と戦っているんだ」