4月10日



FC.BARCELONA-PANATHINAIKOS

3-1



さあ、来なさっい! マドリッ!

パウロ・ソウサ、かつてパナシナイコスでプレーし、現在エスパニョールに在籍するポルトガル選手。彼が試合前に、まるで予言者のように語っていたことを思い出す。
「この試合のキーポイントはルイス・エンリケだろう」
限りない戦場を経験してきたパウロ・ソウサには、この試合を決めるのは「勝利者の精神」を持った選手の活躍次第だということを見抜いていた。そして試合は、そう、その通りになった。

■聖ルイス・エンリケ
わずか1週間前におこなわれたアテネでの惨めな試合とは比較にならない試合だった。試合内容のことではない。バルサの選手が持っていた「戦いの精神」のことだ。パウロ・ソウサが語っていた「戦いの精神」を持った選手、聖ルイス・エンリケの気持ちがすべての選手に浸透していく。ガラタサライ戦で奇跡的なゴールを決め、バルサをここまで持ち上げてきた聖ルイス・エンリケ。彼はこの日も最も重要な選手の一人としてグランドを走りまくる。

いきなり二つのハンディーを抱えた試合となってしまった。アテネで失った、それも審判のプレゼントによる1点。そして試合開始直後にアッという間に奪われた1点。バルサは最低でも3点を決めなければいけない試合となる。この瞬間、カンプノウを埋めた9万人以上のバルセロニスタは血が凍るような思いだっただろう。だが聖サビオラの絶妙なパスによって生まれた聖ルイス・エンリケのゴールが、ユーロバルサの反逆の希望を、セミファイナル進出の希望を生み出していく。

■誇り高きバルセロニスタの勝利
偉大な逆転劇、決して大げさな表現ではないだろう。セミファイナルの進出には3点が最低でも必要となったバルサ。その逆転劇はサスペンスと苦しみに包まれた感動的な後半にやってくる。バルセロニスタが懸命に選手たちを押し上げ、それに応える選手たち。彼らはもちろんこの試合の重要性をバルセロニスタと同じように知っていた。ユーロバルサの歴史は、常に逆転劇での勝利の歴史でもある。

聖ルイス・エンリケが闘争心とガッツを選手間に蔓延させていく。2点のゴールを奪い、さらにさらにチームを押し上げる聖ルイス・エンリケ。そして聖プジョーがキーパー不在のバルサゴールを奇跡的に救う。勝利への信念と、勝利に向けたパワー、そして体中にチームカラーを染めているカンテラ選手が、奇跡的にパナシナイコスのゴールを防いだ。戦術やシステムとかいう世界とはかけ離れた世界での勝利。気力と精神による勝利、それはまさしくバルセロニスタの誇り高き勝利でもあった。

■残りはわずか3試合
バルサがヨーロッパチャンピオンになる可能性が信じられる瞬間がやってきた。もしチャンピオンズを制覇することに長いシーズンの戦いとなるリーグ戦のように「安定性」を求められるものなら、バルサにはチャンスはなかっただろう。だがチャンピオンズの戦いはリーグ戦とは違う。昨日のバルサの選手のプレーぶりを見る限り、我々バルセロニスタは信じて良いだろう。我々はチャンピオンになる可能性はじゅうぶんあると。

それにしても、何というせっぱ詰まった試合だっただろうか。最後の最後まで苦しみ抜いての勝利。ガスパー会長は心臓発作寸前の状態だった。聖サビオラのゴールが決まってからしばらくして、会長席を離れている。緊張感に耐えられなくなったガスパーは選手控え室に閉じこもり、ラジオもテレビもすべて切り、ひたすら試合終了を待っていた。顔色は果てしなく真っ白だ。だがグランドで戦い続ける選手たちは、ひたすら勝利に向かって走り続ける。聖ルイス・エンリケはチームを押し上げる。聖リバルドはクラックというよりも、ひたすらチームのために戦い続けた。聖ボナノは体を張って相手ゴールを防ぐ。聖サビオラはまるでベテラン選手のように、この大事な一戦でバルサ選手として最も重要なゴールを決める。もちろん聖スパープジョーについて今さら語ることもないだろう。彼はキーパーまでやってしまった。

バルサに恐れるものはない。歯をくいしばって頑張った選手たち。90分にわたって常に12番の選手であり続けたバルセロニスタ。何を恐れるものがあるというのか。果たして今日の試合でどちらのクラブが我々の餌食に選ばれるのか。できるなら、レアル・マドリ、我々はお前たちを待っている。


心臓発作を誘う夜の出来事

1.早すぎる失点
試合開始8分。何でもないと思われたところでの失点。コンスタンティノウに影のようにくっついたデブーをあざ笑うかのように強烈なシュート。聖ボナノは反応する間もなくゴールを許してしまった。この瞬間、カンプノウに真冬のような冷気が襲ってきた。最悪の事態を迎えたバルサ。だが時間は82分も残っている。心臓発作を誘う夜はまだ長い。

2.聖ルイス・エンリケの登場
前半23分。闘争心の血が体中にあふれる聖ルイス・エンリケが、戦いの重要な場面で相手ゴール前に登場する。90分にわたって体内のエネルギーを使い果たし、正面切っての戦いを挑んだ聖ルイス・エンリケの最初の得点。そして後半4分、再びゴールを決めた。バルサ選手としてユーロゴール23点目の聖ルイス・エンリケ。バルセロニスタの心臓発作を誘う勝利に向けた行進の先頭を行く。

3.聖サビオラの登場
ドラマは最高潮をむかえる。後半16分、聖サビオラが勝利を決定づけるゴールを奪う。9万観衆は心臓をおさえながらも体中でこのゴールを祝い、まるでカンプノウが揺れ動いているかのようだ。その観衆の中の一人、クラブの最高責任者であるガスパー会長はすでに心臓発作寸前状態だ。彼は会長席を離れ副会長にそこを譲り、どことへともなく姿を消した。だが幸運なことに病院ではなかった。選手の控え室に閉じこもったのだ。

4.聖プジョーの登場
病院に行くはめになったのは聖ボナノだった。体を張ってゴールを防いだ彼は、頭を打って脳しんとう状態だった。聖ボナノが倒れたままゴール前で続けられていくプレー。最後にバルサを救うのは、やはり聖スーパープジョーだった。彼がパナシナイコスの決定的なゴールを防ぐ。ボナノからレイナに代わったバルサゴールをパナシナイコスは執拗に襲う。心臓発作への最高潮の瞬間が何回ともなく襲ってくる。だがその心臓発作を誘う長い夜も審判の笛と共についに終わりをつげた。


●聖ボナノ(7)
この日は明らかに聖ボナノの日ではなかった。パナシナイコスの早すぎるゴールを許しただけではなく、負傷までしてしまった。

●聖スパープジョー(8)
前半と後半の最初は攻撃参加に加わった聖プジョーだが、後半30分ぐらいからひたすら相手ゴールを防ぐ仕事となった。2点目を防ぐスーパーセーブ。

●聖アベラルド(8)
ベテランの味を最初から最後まで出した聖アベラルド。デブーのミスを何回にもわたって防いでいた。

●ただのデブー(6)
熱さを感じないオランダ人。試合に入っていけず、最初のゴールを許すミスまで犯した。90分にわたって不安定。

●聖ココ(7)
オーベルマルスが右に移ってから、左ウイングもこなした聖ココ。失点を許したことにより、戦術的な意味で交代。

●聖チャビ(8)
前半は姿を消していた聖チャビだが、後半の重要な局面で何回となく現れ、チームを引っ張っていく。聖サビオラのゴールの半分は彼のもの。

●聖ルイス・エンリケ(9)
チームの精神的シンボル。この世に神が存在することを証明した昨日の試合。地球が滅んでも彼は生き続ける。

●聖コクー(8)
チャビの影となって地味にプレーしたコクー。だがその存在自体は貴重なものだった。相手選手にプレッシャーをかける軸の選手。

●聖リバルド(7)
熱い熱い聖リバルド。悪い左足を引きずってでもゴールへの意欲が感じられた。チームの一員として重要な働きもした聖リバルドだ。

●聖サビオラ(8)
決勝点を決めるのは常にクラックと決まっている。サビオラがフットボール界にクラックとして登場した記念すべき日。

●ただのオーベルマルス(5)
一対一の勝負を挑んで全敗したオーベルマルス。他にコメントすることもない。

・聖クライハート(8)
なぜかベンチスタート。だが彼の登場によりリズムが変わった。

・聖ガブリ(6)
ディフェンスに終始させられた聖ガブリだった。

・聖レイナ(7)
代役を見事に果たした聖レイナ。おめでとう!