4月16日





ハビエル・サビオラのすべて

サビオラのアラベス戦での2点目。このゴールがこれまで彼が獲得してきたスペクタクルなゴールの頂点となり、多くのバルセロニスタのアイドルとして再確認させることになった。ハビエル・サビオラ、今年ヨーロッパ大陸に上陸してきたこの20才の若者。彼は1年目にして早くも、バルサの歴史に残る「神話」の人物としての道を歩み始めた。

■サビオラ獲得の真実
昨年の夏、マドリが電撃的にジダーンを獲得したことにより全国的に起こった「ジダーン現象」。それに対抗してバルサがサビオラを獲得。しかもカタランメディアのプレッシャーによりバルサ首脳陣が動き始め、「政治的」な補強選手として契約。これが今までキャンペーン的にマドリメディアが執拗に公表してきたことだ。だが彼らのデマゴギーに迷わされることなく、真実を知らせておくべきだろう。

レシャックを筆頭とするバルサコーチ陣にとって、サビオラ獲得は決して優先事項ではなかったことは確かなことだ。レシャックの補強に関する最大の課題は、ディフェンス部門で、それが優先事項となっていた。これは彼らも認めているし、すでにメディアによっても明らかにされている。だからと言ってサビオラの獲得が「政治的」なものでもなければ、「おまけ」的なものではあり得なかった。クラブの経済的な事情が許せばどうしても欲しい選手であったのだから。それはトルドをとるか、あるいはサビオラにするか、二つに一つの経済的事情がネックになっていた。
状況がトルドの獲得を断念させる。インテルのオファーがバルサのそれを上まわった。

レシャックの強みの一つであり同時に弱点の一つにもなっていること、それは40年間もバルサに在籍しクラブを知り尽くしていることだ。クラブの経済状態にも詳しい。よそから来た監督であれば知らなくてもいいことまで知り尽くしているレシャックだった。彼の望んだ基本的な補強選手の獲得は成功していた。ディフェンス面の強化を図る補強は完璧といっていいほど進められていた。サビオラ獲得を強く言い出せないレシャック。クラブ首脳陣の決断に任せることになった。

ガスパー会長はクラブ首脳陣を集め「サビオラ問題」で何回も会議を重ねていた。一応、コーチ陣が要求する最低の補強には成功していた。だがレシャックはサビオラも欲しがっている。トルドの獲得が不可能となった今、少し無理をすればサビオラ獲得の資金は捻出できるはずだった。だが経済部門担当のスタッフは強く反対していた。ここでガスパー会長の将来をかけた一言がすべてを決めた。
「サビオラをとろう!」

カタランメディアがかなり以前から「サビオラ獲得」のキャンペーンをはっていたのも事実だ。我々はサビオラに若き頃のマラドーナをダブらせていた。だが彼を獲得したのはカタランメディアではないし、我々のプレッシャーによるものでもない。彼を獲得したのはガスパー会長を筆頭とするクラブ首脳陣であり、コーチングスタッフである。マドリメディアはそこを間違えてはいけない。

■そしてサビオラマニアの誕生
多くのバルセロニスタが尊敬するヨハン・クライフの言葉を待つまでもなく、若手の、しかも違う環境と文化を持つ大陸からわたってきた若者は、特に大事に育てていかなければならない。長い間カンテラとして育った選手がデビューを飾っても、プレッシャーに負けるケースをこれまで何度も見てきている。したがってレシャックがサビオラに対しておこなってきた「保護」もそれなりに評価する必要があるだろう。

だがサビオラは確実に育ってきている。この1週間の出来事を見てみればそれは明らかとなる。サン・マメスでのビルバオ戦ではアウエーであろうがどこのスタディアムであろうが、ゴールをとれることを証明した。また、パナシナイコス戦ではバルサをユーロクラシコへと導くゴールを奪った。そしてサビオラマニアの誕生となるアラベス戦ではクラックのみが決めるゴールをバルセロニスタに披露した。

アラベス戦での2点目、それがサビオラマニアを生んだゴールだ。チャビからの絶妙なパスを受けたサビオラ、アラベスのディフェンスであるテジェスを抜き、コロッチーニにフェイントにかける。そして最後に残った障害であるキーパーの足の間を抜くゴールを決めたサビオラ。サビオラマニアの誕生の瞬間だった。多くのバルセロニスタが今シーズン初めての「祝福の白ハンカチ」をサビオラにむけ振り続ける。サビオラがすべてのバルセロニスタに受け入れられた瞬間でもあった。

同時にこのゴールはマドリのラウールのゴール数を抜くものとなった。しかもサビオラはラウールより600分も出場タイムが少ないにも関わらずだ。レアル・マドリの星、ラウールよりもさらにゴールへの嗅覚を持ち、プレー時間から統計をとればサビオラのゴールの確率はマドリの星のそれをはるかに上まわるものとなっている。そしてサビオラ20才、マドリの星すでに25才。

ユーロクラシコでのサビオラの登場は、国際的な舞台での世界中のフットボールファンにむけた挨拶となるだろう。サンティアゴ・ベルナベウでのクラシコでは出場チャンスがなかったサビオラ。だがユーロクラシコでは間違いなく彼の出場が期待される。そしてその試合は、彼がワールドカップへの召集がかかるかどうかという大事な見せ場でもある。サビオラはユーロクラシコにむけて着々と準備中だ。
「前回のマドリでの試合には出られなかったのが今でも残念に思っていること。今度はチャンスをもらって、あの時の悔しさをゴールで表現するんだ」

■コネクション、チャビオラ
サビオラがアルゼンチンからバルセロナに引っ越してきたとき、レシャックは「サビオラ係」をチャビに任せた。ほぼ同年代であること、ポジション的にも密接な関係にあることなどが理由であったようだ。そしてプレステージが始まるまで常に一緒だったこのチャビオラコンビは合宿が始まると同室となる。それは今でも遠征の度に繰り返されている現象だ。チャビ・サビオラのグランド以外での個人的なつき合いは、サビオラがバルセロナに到着したときからの運命としてあったようだ。

最近の3試合だけを見てみても、チャビオラコネクションは試合ごとに強くなってきている。ビルバオに始まり、パナシナイコス、アラベスはこのコネクションの餌食となった。すでにチャビはウイング選手を探す必要もなくなってきている。インテリジェンスとスピードが持ち味のサビオラがディフェンスのマークを破る瞬間を見逃さないチャビ。的確な瞬間に、的確な精度の高いパスをだす能力を持つチャビがボールを持った瞬間、サビオラは自分の仕事をすればいい状況になっている。

サビオラの爆発はチャビの活躍とは決して無関係ではない。最近5試合でサビオラが決めたゴールのうち、3ゴールはサビオラからのパスによるものだ。アラベス戦でのチャビのポジションは前半と後半では違ったものになっている。前半は4番として、後半はその場所をコクーに譲り彼は6番というさらにサビオラに近いポジションについている。この場所でチャビはボールを奪い、相手ディフェンスにプレッシャーをかけ、そしてボールを持った瞬間にサビオラを探し続けていた。それがバルサ3点目のゴールを生むことになる。

チャビオラ・コネクションは始まったばかりだ。彼らの未来は10年という長いものが約束されている。その歴史の一歩として、ユーロクラシコが最大の舞台となるだろう。

■サビオラ、限りなくアスールグラーナ
できることならば、バルサを最後のクラブとしたいと願うサビオラ。彼にとってバルサは、多くのバルセロニスタと同じように、世界最高のクラブであり他のクラブとは比較しようもないものだ。小さい頃からの夢を実現し、ようやくバルセロナの街にも慣れ、クラブにも慣れてきたサビオラ。彼のさらなる夢は、バルサで引退すること。

サビオラのこの思いは、単に彼がバルサというクラブを愛しているということだけではない。これまでの新しい生活への慣れの期間を通して彼は多くのバルセロニスタ、あるいはフットボールに興味ないバルセロナの人々とも交流していきている。そこで得た彼への暖かい環境が、さらにバルセロナにできるだけ長い期間残りたいと思わせる動機となっている。バルサというクラブをもっとよく知りたい、カタルーニャという地方をもっとよく知りたい、その思いがカタラン語への勉強意欲となって現れている。彼と彼の代理人であるカブレーラは、最近カタラン語の個人授業を受けている。そしてもちろんここでもチャビの存在は大きい。