5月15日



     

反撃に出る反ガスパー派

2年前の会長選挙でガスパーに僅差で敗れたルイス・バサー。その彼が選挙以来初めてメディアの前に公式に現れ、記者会見をおこなっている。もちろん彼が語る主なものは、ここ2年間のガスパー政権への批判だ。

ガスパーがバルサの会長になってから2年が経過した。そして誰もが知っているように、一つのタイトルも獲得していない。だがそれ以上に否定的な問題として彼がおこなってきたクラブの経済的手腕を追求するバサー。この2年間で300億ペセタものソシオを財産を使っておきながら、何のタイトルも獲得していないだけではなく経済的窮地に至らせた責任は重いと語る。
「もう多くのソシオはガスパーに対しての信頼感を失っている。すでにソシオの忍耐も限界にきていると言ってもいいだろう。民主的な選挙で誕生したガスパー会長に辞任はいまのところ要求しようとは思わない。だがガスパーはソシオが何を思っているか知るべきだろう。今こそソシオの意見を聞くべきだ。そのためには『ソシオ投票』をおこなって10万ソシオの意見を聞く機会を作るべきだと思う。」

バンガールが正式に来シーズンからの監督となった今、バンガールに対する個人攻撃はバルセロニズムに反するとしておこなわないバサー。だが誰もが持つ疑問、それはたった2年前に白ハンカチでカンプノウを追われた人物がなにゆえ今もどってくるのか、その疑問の答えは彼もまた見つからないと言う。
「我々のクラブの監督に正式就任した人物に対し、まだシーズンも始まっていないのに批判するのは正しいおこないではない。バルセロニスタの一人として彼の成功とバルサの成功を祈るだけだ。だがバルサにとってすでに過去となった人物を再び登場させることが正しいかどうか、それはまた別の問題だろう。したがってバンガール個人に問題があるわけではなく、彼を選んだ人間、クラブ首脳陣、クラブを構成しているすべての人々、そういう人たちの責任が問われなければならないと思う。」

かつての会長候補であるバサーは、大声をあげてジェスチャー豊かに自分の主張をする政治家タイプの人間ではない。一つ一つ言葉を選びながら慎重に語るインテリタイプといった方が正しい。ヨーロッパの広告会社のなかでもトップに立つ社を代表するバサーは、バルセロナオリンピックの開会式の責任者でもあった。昨日の記者会見場に現れた彼は、ガスパー政権を批判する反対派のボスというよりは、バルサの現状を心配するバルセロニスタの一人というイメージで彼の意見を語り終えている。彼がバンガールへの批判をしなかったことは、彼のインテリジェンスの深さををあらわしているのではないだろうか。すでにバルサの監督として決まった人物をこの段階で批判する愚を避けたバサー。バンガールへの批判は非常に簡単であったにも関わらずそれを避けたバサーの態度は正しく評価されるべきだろう。


オランダ人もビックリ

バンガールのバルサへの復帰は、オランダでももちろん大きな話題となっている。そして多くの人々が「なぜ?」という疑問符がついた感想をもっているようだ。
「なぜガスパーはバンガールを選んだのか」
誰も確かな答えは見つからない。

■クーマン
将来のバルサの監督として一番望まれ、そしてバンガールのもとでコーチ経験もあるクーマン。彼はバンガールの復帰を喜びながらも、なぜ今になってという疑問も当然持っている一人だ。
「ガスパーがバンガールを選んだという理由がよくわからない。ああいう状況で去った人物を呼び戻すということは余程の事情があり、外からは理解できない何かがあるんだろう。もちろんその理由なんていうのは私にはわからないし、個人的にはどうでもいいこと。バンガール個人に関しては、前回のバルサの監督として中途半端に終わってしまったから、今回の復帰にはおめでとうと言いたい。それにしても、バルセロニスタはどのように彼を迎えるのか非常に興味あるところだね。」

■クライフ
バンガールという名前が登場すれば、何かにつけてクライフの名前もあがってくる。まったく対称的なこの二人。
「バンガール? 何にもコメントすることはないよ。彼のバルサへの復帰は私とは何の関係ないことだからね。しかし将来は暗いだろう。彼は彼独自のやり方でチーム作りしていくだろうし、そのチーム作りの目的も非常に幅のない狭いものだ。何よりも彼のフットボールに対するアイデアは私のとはぜんぜん関係ないもの。しかし、カタルーニャの人々やバルセロニスタがどのような反応を起こしていくかそれが一番興味深いことだな。シーズン中にメディアが私の意見を求めてくるだろうが、もちろん思ったことをそのままコメントするつもりだよ。」

■アボカート
去年の12月にバンガールの後を引き継いでオランダ代表監督となり、レンジャースのジェネラルマネージャーもしている。バルサとも密接な関係を維持していることでも知られている。
「バンガールと私のやり方はまったくと言っていいほど共通点がない。でも彼が優秀な監督であるということはすべての人が認めるところ。だがもちろん問題がないわけではないだろう。例えば前回のバルサ監督就任の時は『将来性』を期待されたものであったのに対し、今回は『最後の手段』というような感じ。彼に対して反感を抱いている人々も多いし、すぐに結果をだすことを求められることになる。彼が冷静に仕事ができるか、それがキーポイントとなるのではないだろうか」

■ニースケンス
バンガールの監督就任が噂されたとき、彼のコーチにはニースケンスがなるのではないかとも言われていた。だがその可能性をはっきりと否定すると共に、バンガールの復帰にクビを傾げるニースケンス。
「ガスパーのこの賭けはバルサにとって非常に危険なものだと思う。わずか2年前のことを思い出せばそれはじゅうぶん理解できることだろう。ああいう終わり方をした人物を今バルサに復帰させるということ自体がよくわからない。クラブにとってバンガールが必要な人物かどうか、それは私が口を挟む問題ではないけれど、いずれにしてもバンガールにとって監督としては最悪の雰囲気の中で仕事をすることになるだろう。」


ルイス・エンリケのお願い

バンガールに対しどのような想いを抱いていようと、まずバルサのことを考えて欲しいと訴えるルイス・エンリケ。まず最初にクラブが存在し、監督が誰であれバルセロニスタの団結を要求する。

「新しく来る監督に対しソシオがどのような想いを抱いていても、まず彼にチャンスをあげるのがソシオの正しい態度だと思う。少なくとも我々選手たちは、監督が誰であれ彼と一緒になって戦う準備がある」
バンガールの監督就任によりバルセロニスタが大きく分裂することを恐れるルイス・エンリケ。バルセロニスタが一つにならなければ決して良い状況が生まれないと考えている。

「もしカンプノウにバルサが負けることを期待し、それをもって監督を批判するためにやって来るようなファンがいたら非常に危険な状況になると思う。それは少なくとも常軌を逸した行為だ。バンガールにも他の監督と同じようにチャンスをあげなくてはいけないだろう。シーズンの評価は1シーズン消化した段階でなされるように、監督の評価もそうでなくてはいけないと思う。」

一昨日のガスパーの記者会見で語られたこと、つまりバンガールはチームを立て直しする監督としてやって来るわけで、決して過去を清算するために、バルセロニスタと仲直りするために来るのではないということに同調する。
「彼と肌が合うかどうかということは大した問題じゃない。オレ達選手はプロであり、彼もまたプロの監督だ。プロどうしの正しい関係があればそれでいい。彼はオレ達の最高にいい部分を引き出してくれればいいんだし、彼はそれを要求する厳しい監督でもある。そういう意味で言えばレシャックにしても非常に正しい仕事をしたと思っている。今シーズンのバルサの成績が悪かった責任は決して監督のものじゃない。オレ達選手が失敗してしまったんだ。」

バンガールが過去3年間のバルサにいたときと同じバンガールなのか、あるいは性格的に変わってやってくるのか、個人的にはそんなことはどうでも良いと思うルイス・エンリケ。
「個人的に言わせてもらえば、オレは選手と監督としてのお互い尊敬しあった関係があればそれでいいと思っている。その関係させちゃんとしていれば選手は選手としての仕事をすればいいんだ。クラブに落ち着いた雰囲気が必要なようにオレ達にもそういうものが必要なのは言うまでもない。バルセロニスタに頼みたいことはバンガールが監督をしていたいい時期のことを思い出して欲しいということさ。イヤなことはとりあえず忘れてしまおう。タイトルをとり、みんなで騒ぎあった楽しいことだけを思い出そうじゃないか。」


●カタルーニャ代表メンバー発表
今週の土曜日18日におこなわれるカタルーニャ代表とブラジル代表の親善試合。すでに前売り券は7万枚も売れている。この試合に召集された18人の選手名が代表監督であるピッチ・アロンソによって発表された。

ビクトール・バルデス(バルサB)
フランチェスコ・アルナウ(マラガ)
デルフィ・ジェリ(アラベス)
ジョアン・カッデビージャ(デポール)
アルベルト・ロポ(エスパニョール)
キッケ・アルバレス(ビジャレアル)
ダニ・トルトレーロ(バルサB)
アルベルト・セラーデス(マドリ)
アレックス・フェルナンデス(エスパニョール)
アルベルト・クルサ(エスパニョールB)
ガブリ・ガルシア(バルサ)
ルジェール・ガルシア(エスパニョール)
ミゲランヘル・ロサーノ(マラガ)
ジョルディ・クライフ(アラベス)
ダニ・ガルシア(バルサ)
オスカー・ガルシア(エスパニョール)
ラウール・タムード(エスパニョール)
ルイス・ガルシア(バジャドリ)

●監督の大移動
イルレッタは動かない。デポール会長との7時間に及ぶ交渉の末、彼はもう1年デポールに残留することが正式に決定した。またセルタのビクトール・フェルナンデスはクラブ会長と同席して記者会見を召集し、今シーズン限りでのセルタの監督を辞任することを表明、4年間のセルタでの一つのサイクルを終了した。彼の来シーズンの行き先はほぼベティスと決まっている。またそのベティスの監督であるフアンデ・ラモスは昨日の深夜の段階でベティスを去ることがほぼ決定し、パコ・フローレスの辞任が決定しているエスパニョールのベンチに座る可能性が90%だ。