5月18



     

ADIOS!
GRACIAS!

KUBALA!

 

2002年5月17日13時50分、103年の歴史を誇るバルサの象徴的にして「生きる神話」となっていたクバーラが我々を残してこの世を去った。享年74歳。

バルサの偉大さは、103年間の歴史において獲得した数々のタイトルとは別に、それぞれの時代背景と共に多くの歴史的人物がクラブに在籍したことにもある。その歴史を振り返ってみれば3人の代表的な人物によってバルサの歴史は構成されていると言ってよいだろう。クラブ創設から約30年間における象徴的人物であるサミティエール。50年代のスペインリーグを支配した「5つのカップ」に象徴されるクバーラの時代。そして90年代を圧倒的に支配したドリームチームに代表されるクライフの時代。そして昨日、その一人の神話的人物であるクバーラがこの世を去った。選手としては103年の歴史において最高の選手として今でも評価され続けているクバーラ。今、我々は再びあなたにグラシアスと言おう。そして今、アディオスと言わなければならない。
アディオス、グラシアス、クバーラ!
安らかに眠らんことを。
そして我々バルセロニスタはあなたのことを決して忘れはしない。
アディオス、クバーラ!
グラシアス、クバーラ!


ジョセップ・グアルディオーラ

思いやりのある人だった。彼との接触はほんのわずかだったけれど、それでじゅうぶん理解できる人だった。バルセロナオリンピックが開催される少し前にマラガでおこなわれた代表の試合で、彼はキャプテンマークを僕にプレゼントしてくれた。もちろん我が家の家宝として大切にしている。長いプロ生活の割には数少ない記念品として、我が家にしまってある貴重なものだ。クバーラは常に人々に何かを与える人だったけれど、決して何かを頼む人ではなかった。だから、つつましいものであるけれど、僕から彼に捧げられるものは彼への尊敬、それしかない。神話の人物に対して、他のどのような選手と比較するのも不可能な唯一の選手に対して、僕が捧げられるのは心からの尊敬だけだ。今我々バルセロニスタが自慢することの一つ、カンプノウの存在は彼なくしてあり得なかった。たった一人の選手の存在が、カンプノウという世界最大のグランド建設を可能にした。それは最初で最後の選手。それがクバーラ。神話の人物は世の中に一人しかいない。それがクバーラ。バルサが一つのクラブ以上の存在であるならば、クバーラは一人の選手以上のの存在でもある。果てしなく偉大で、どこまでも思いやりのあるクバーラ。彼の前に我々は何者でもない。アディオス、クバーラ。安らかに。

■ディ・ステファノ(マドリ名誉会長)
バルセロニズムの中だけではなく、フットボール界における偉大な損失だ。選手として、監督して、もっとも偉大だったクバーラだが、さらに彼の偉大さは彼の持つ人間性にあった。私がバルサに入団するためにバルセロナに滞在していたとき、彼は自分の家を提供してくれた。それ以来、我々は友達というよりは兄弟のような仲になった。2週間前に彼が入院する病室を訪ねたんだが、器械を通して息をしている彼を見たときはショックだった。私のこともわからなかったようだ。

■ニコラウ・カサウス(バルサ名誉会長)
私より先に行くなんて、こんなことがあっていいものか。彼は友人というよりは私の息子みたいなものだった。また家族の一員を失ってしまった。

■ルイス・スアーレス(元バルサ選手)
クバーラはバルサの歴史の中においてもっとも重要な選手だったと思う。彼の入団によりバルサだけではなく、スペインフットボールそのものが変化した。彼が登場するまでには考えられないようなプレーを披露したんだ。彼の強烈なキャラクターは育った環境によるものだと思う。相手のチームの選手による暴力的ともいえるタックルで何回も負傷しながら、不死身のように戻ってくる選手だった。

■カルラス・レシャック(元バルサ監督)
時間の問題だということは知っていた。私は何回も病院を訪ねていたからね。それにしてもそれが現実になってみると、我々は偉大なバルセロニズモの象徴を失ったことに今さらながらショックを覚える。年齢的に開きがあったから一緒にプレーしたことはない。だが彼が監督の時にバルサでもスペイン代表でも一緒にやってきた。素晴らしい人物だった。

■ホセ・アントニオ・カマッチョ(スペイン代表監督)
スペインフットボールだけではなく、フットボール界における神話の人物を我々は失った。個人的な思い出としては、私がまだ19才の時に代表監督であった彼が呼んでくれた。彼が私を代表選手としてデビューさせてくれたんだ。その意味では一生忘れない人物。


クバーラのバルサでの活躍については、「バルサ100年史」の第2章「15 クバーラの登場」「16 伝説の人物、クバーラ」「17 シンコ・コパス その1」「18 シンコ・コパス その2」を参照。