10月8

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批判される選手たち

「闘争心のかけらもない!」
「勝利への意欲がない!」
「悔しさが感じられない!」
オサスナ戦での引き分けという結果から24時間たった昨日、バンガールは選手たちを集めこのように彼らを批判している。テクニックの問題でも個人プレーの問題でも、ましてシステムの問題ではなく、あくまでも「精神的問題」として選手を批判する。

試合翌日におこなわれる練習前の定例ミーティング。試合に勝利した翌日は賑やかで明るいものとなり、納得のいかない結果に終わった翌日には暗い深刻なものとなるのは仕方がない。そして昨日のミーティングは、もちろん後者のものであり、しかもまるで敗戦した翌日のような雰囲気を漂わせていた。約40分間と異常なまでの長さとなったこのミーティングで、バンガールは選手たちを前にして怒りをぶつけている。
「多くの場面で、君たちは闘争心のあるプレーが欠如していた。そして同時に欠如していたものは勝利に対する絶え間ない意欲だ。そしてスコアーが良くなかったにも関わらず、それに対する怒りが見られなかった。」

日曜日の試合後のテレビ番組に登場したバンガールはいくつかの興味ある質問に答えている。「リケルメ獲得を要求したのは私バンガールではない」という問題発言は別として、これまで獲得したポイント数に関して語っている。これまでリーグ戦を5試合を消化しチャンピオンズリーグが3試合経過した段階で、リーグ戦に関しては3ポイントほど彼の計算より少なく、チャンピオンズリーグに関しては4ポイント多いと言う。
「私バンガールの計算によれば、リーグ戦に関して言えば3ポイントほど予想より少ない。地元での勝利ですでに9ポイント、アウエーでの引き分けで2ポイント、合計11ポイント獲得というのがシーズン前の私バンガールの計算。だが残念ながら我々は8ポイントしかあげていない。したがって次のアウエーでの試合となるバジャドリ戦、地元でのアラベス戦、この2試合にどんなことをしても勝利しなければならなくなった。もし両方も勝利すれば14ポイント獲得することになる。そうすれば私バンガールがこの時点で計算している15ポイント獲得にわずか1ポイント差となるんじゃ。」

練習前のミーティングに話しを戻そう。この場に置いて彼は個人攻撃はしていないようだ。チーム全体の「精神的問題」として選手総体を批判している。だがこの批判を受けることに納得いかない何人かの選手は、珍しくもその監督発言に対して不満をもらしている。

●納得いかない選手たち
プジョー、メンディエタ、コクーなどの選手にとって「精神的問題」として批判されるのはまったく納得いかない。ディフェンス面のすべてのミスを一人でカバーし続けているプジョー、右サイドを一人で上に下に走り回ることで、どうにかこのサイドからの守備的なあるいは攻撃的な部分を保っているメンディエタ、そして中盤での汚い仕事を目立たないまでも全力でおこなってきているコクー。彼らに「精神的問題」をいうのは当たっていない。
プジョーは語る。
「オレ達に精神的問題なんかない。オサスナ戦でもチャンピオンズリーグでの試合と同じように大事な試合として戦った。だが彼らのゴールは異常な早さで来てしまったんだ。あれはディフェンスのミスだとか、闘争心がないとかいうことで批判するのは間違っていると思う。彼らの2点ともラッキーな得点。我々の選手にぶつかったボールがちょうど相手選手の都合のいいところにいってしまう、本当に彼らにとってラッキーなチャンスだったと思う。でもいずれにしても2点入れられたら3点入れるのがバルサというものだ。その3点目を入れられなかったことを分析すべきだと思う。個人的には後半に入って急ぎすぎたのも一つの原因だと思う。必要以上に走りすぎたし、我々の特徴である細かいパスをつなげるというよりは、ロングパスを出しての攻撃に重点を置いてしまった。反省するとすればそこら辺だな。」

そしてコクーも語る。
「もちろん闘争心の欠如なんかが問題となるべきではない。後半の15分はいい感じでプレーできた。ところがその後、我々は攻撃を急ぎ過ぎた感じがある。しかも疲れ切っているのに走りすぎというのもあるだろう。とにかくパスをつなげるというよりは、ボーンと相手前線へのロングパスが多すぎたように思う。いずれにしても我々は地元でポイントを失いすぎている。これだけ多くのファンが来てくれるという素晴らしい状況なのに、彼らに信頼感を失わせるような試合結果になってしまっているのが残念だ。」

そして口数の少ないメンディエタも珍しく多くを語る。
「少なくても俺は一生懸命走っている。」

●納得いかないクラブ首脳陣
日曜日の夜はバルサ首脳陣のメンバーにとっても辛いものとなっている。試合が終了し自宅に戻った彼らの多くは、夕食もとらずにテレビを見ていた人が多いようだ。クラブ監督が語るいくつかの問題発言を聞くに至っては、オサスナ戦の引き分けがまるで0−10の敗北のように重く彼らにのしかかる。
「私はリケルメ獲得を要請していない。」
これが思わぬ引き分けという結果に終わったオサスナ戦が終了してから2時間後に語る監督の発言だろうか。そんなことは多くのバルセロニスタが暗黙の了解としてすでに知っていることだ。それを、カンプノウにかけつけた8万人のバルセロニスタも見ているであろうこのテレビ画面で、しかも試合結果にガッカリしているであろう彼らの前で、何でいまこの瞬間にことさら強調して語る必要があるのか。選手たちがバンガールの批判に対して納得いかないように、クラブ首脳陣もこのテレビでの発言にあきれかえっている。


緊張感ピリピリの練習

バルサのインチャでない限り理解できないこと。それはオサスナ戦の引き分けという結果がバルセロニスタに大きなショックを与えていることだろう。そしてショックを受けているのは彼らだけではない。監督もそして選手たちもピリピリした状態で試合翌日の練習に参加している。そしてこの練習風景を取り囲むように何人かのソシオが彼らに罵声を浴びせていた。その批判の対象は、もちろんバンガールとなった。

40分のミーティングを終えて予定より遅れて11時10分に始まった練習。いつもとは違いピリピリとした空気が流れる練習風景となってしまった。だがバルサでは何も特別なことではない。期待された結果が得られなかった翌日にはたまにではあるものの見られる風景だ。何人かのソシオが練習風景を見に集まり、監督や選手を批判する光景は昨日が初めてのことではない。ましてバンガールに批判の矢が射られるのもこれが初めてではないし、最後でもないだろう。そして当然のことながらピリピリした空気の中でおこなわれる練習はその空気を反映したものとなるのも致しかたない。

●口うるさいファンの集まり
練習を取り囲んで言いたい放題のファン。彼らの批判対象となったのはデ・ボエルとバンガールだ。もちろんそんなことに慣れている彼らは耳を塞ぎもせず無視している。時間を持てあます、この暇なファンたちは練習開始前から終了後までこの二人の責任を追及する。
「フランク!お前は何とダメな選手なんだ!」
「バンガール、早くオランダへ帰れ!」

これらは彼らの口から発せられたもっとも柔らかいものだ。

●バンガール対ロッケンバック
練習での最初の犠牲者はロッケンバックと決まった。オサスナ戦では後半に入ってから30分も身体を暖める練習を命じられていたのに、ついに試合出場は命じられなかった彼は24時間たった後でも不愉快な表情を崩そうとはしていない。練習態度にもそれが出ているのに気がつくバンガールはロッケンバックを追いかける。ボール回しをする「ロンド」に加わっているロッケンバックにバンガールの怒鳴り声が飛ぶ。
「もっと気を入れてやれロッケンバック!」
ロッケンバックは動きを止め、バンガールの方をジーと睨んで動かない。バンガールが彼に近寄り、しばらくにらみ合いが続く。どちらが先にこの勝負を放棄したか、それは想像にまかせよう。

●バンガール対ジェオバンニ
久しぶりの合同練習に参加してきたオーベルマルス。もちろんバンガールは計算できる選手の登場に目を細めている。いくつかの注意をオーベルマルスに与え、決して無理はするなとも忠告するバンガール。そしてミニ試合の最中、ジェオバンニの激しいタックルがオーベルマルスに襲いかかる。足を抱えて倒れるオーベルマルス。心配するジェオバンニの元にバンガールが100m選手のように走ってくる。ジェオバンニに説明を求めるバンガールとオーベルマルス。ジェオバンニはひたすら謝るもののオーベルマルスの怒りはおさまらない。

●バンガール対プジョー
試合翌日の練習ではスタメン出場した選手と、控え選手では練習メニューが異なる。毎試合出場しているプジョーは当然スタメン選手用の軽い練習となっている。だがこの練習に満足できない彼は、彼ら用のメニューをこなした後に控え選手に混じって練習を続けることがよくある。昨日も彼は自分の練習が終わったあと、控え選手に混じって練習を続行。これを見たバンガールがそのプジョーに近寄ってきた。10分ほど二人の会話が続く。そしてバンガールはプジョーを押すようにしてロッカールームへと連れ去っていった。