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Champions League
10月29日 20:45
JAN BREYDEL
BRUJAS
vs
FC BARCELONA
 

0 - 1


トッポジージョとカンテラの夜

この日の試合に登場した11人のバルサ選手。彼らの平均年齢は今シーズンもっとも低い22.6歳というものだった。27歳のダニを最年長選手とし、25歳のエンケ、24歳のリケルメとプジョー、そして最年少選手はイニエスタの18歳だ。外国から来たクラック選手とカンテラが一体となったこの夜は、グループ最終戦となる11月13日のカンプノウでのガラタサライ戦で再び繰り返される可能性がある。またこの日の勝利により、バルサはチャンピオンズ予備選を含めて7連勝という記録を達成した。

ヨーロッパチャンピオンを競う権威ある戦いに、しかも莫大なユーロマネーがかかっているこの試合に、バンガールが用意した11人のバルサ選手たちは1人の若きドイツ人キーパー、2人のブラジル人選手、6人のカンテラ育ち選手、カタラン人のダニ、そして1匹のトッポジージョだった。平均年齢22.6歳という、チャンピオンズリーグでの試合ではどこのクラブでも不可能であるような若い選手たちを起用してのこの戦い。そして相手はベルギーリーグの首位を走るブルッハス。

結果は、そう、若きバルサがベテラン選手を擁するブルッハスを敗り勝利を飾った。チャンピオンズリーグ本戦5連勝、予備選を含めると何と7連勝という信じられない爆勝街道を走り続けるバルサ。そしてこの試合では少なくてもバンガールの勇気あるチーム作りを誉めるべきであろう。「11人の選ばれた選手たち」を休める必要性があったとはいえ、この若いチームで戦った試合が勝利したことは大きい。

二人のバルサBの選手、トルトレーロとイニエスタがスタメン出場となる。トルトレーロはデ・ボエルの代わりに、イニエスタはチャビの代わりにポジションにつく。試合が始まってからの15分間、トルトレーロにとっては厳しい時間となる。初の一部での試合ということで固くなったのか、はっきりとしたミスが何回か見られるプレーぶりが続く。だがトルトレーロの右隣にはカンテラの鏡となるスーパープジョーがいたことが彼にとっては幸いだった。何回となくトルトレーロを励ましに行くプジョー。そのかいあってか、トルトレーロは次第に落ち着いて彼本来のリーダーシップをとるプレーが戻ってくる。何と言っても彼はバルサBでのカピタンなのだ。足が地に着きさえすれば問題はない。

試合展開といえば、どちらも勝ちたくないような試合内容といえばよいか。つまり、中盤での激しいつぶしあいに明け暮れる試合展開となっている。バルサ側ではジェラール、ロッケンバック、リケルメ、そしてイニエスタなどによるボール回しがおこなわれるが、前線にいるダニやジェオバンニに届くまでには至らない。どちろも守備固めに走るわけでもなく、かといって怒濤のような攻撃を展開するわけでもない。バルサはともかく、ぜったい勝利が必要なブルッハスとしては納得がいかない試合展開だ。

後半が始まり、落ち着きを完全に取り戻したバルサ守備陣をバックに、中盤の選手たちがさらなる戦いを開始する。時間の経過と共に(バルサの中盤の構成が若い選手でなされていようと)テクニックの違いがはっきりとプレーに表れてくる。それに対してブルッハスの選手は激しいファールで対抗。まずナバーロがロッケンバックがそれぞれ厳しいタックルやヒジテツを受ける。それでも試合は完全にバルサペースとなっている。そしてそれまで消えていた一人の選手が突然現れる。それもここというときに、そういう瞬間にあらわれる。それはトッポジージョだった。中盤左でボールを受け取り、ジワジワとゴール正面に近づいていくトッポジージョ。彼の狙いは明らかだった。ゴールスペースを見つけようとしている。そしてディフェンスの隙間を見つけた彼からは強烈なシュートが相手ゴールに飛んでいく。その瞬間から2秒後、ベルギーの空の下に、それまで隠れていたトッポジージョが姿を表した。

■クラック選手
この試合でもっとも頑張らなければならなかった選手、それはダニとジェオバンニだろう。ゴール前にいる彼らにそれほどボールが届くチャンスがなかったとはいえ、少ないチャンスをものにするのがクラックだ。だが残念ながらダニはもちろんジェオバンニもクラックではない。スピードとテクニックをもつジェオバンニ、だがこれまで与えられてきた何回かのチャンスをものにできないでいる。そしてこの試合でも中途半端なプレーが続きカンテラのセルヒオと途中交代させられるハメとなった。
リケルメも決してよかったわけではない。彼が参加したプレーが少なかったことに見られるように、完全にリーダーシップをとったわけではなかった。だがチームが必要としているときに、必要としていることをしてみせるのがクラックだとすれば、やはりリケルメはクラックだった。彼だけではなくすべての選手に言えることだが、決してやさしい試合ではなかった。練習では何回か一緒にやっているチームメイトではあるが、本番の試合ではほぼ初めての組み合わせによるチーム構成だ。だがクラックには「一瞬」さえあればいい。その「一瞬」に試合を決めてしまう才能。まさに違いを見せたリケルメだった。

■カピタン・プジョー
ルイス・エンリケとコクーが抜けたことにより、プジョーが試合開始から初めてカピタンを務めることになる記念試合。そしてもちろん、カピタンとしての役割を完璧にこなすことになる。
ブルッハスの最も危険な選手のマークに走るプジョーは完全に勝利したと言っていい。一度たりとも右サイドからの攻撃が実現されなかったことから見てもそれは確かだろう。だがこの日の彼はカンテラ育ちの鏡として、そしてディフェンスの要として普段以上に仕事の多い試合でもあった。試合早々、神経質気味になっているトルトレーロとエンケを励まし続けるカピタン。彼のエネルギーが二人の若者に乗り移ったように、時間の経過と共に彼らに落ち着きがやってくる。再び、あるいは三度、あるいはいつものことながらというべきか、いずれにしてもバルサには欠かせないプジョーの90分間の戦いが見られた試合となった。

■衝撃的なデビュー、イニエスタ
バルサBの選手であって、すでにバルサBの選手ではないイニエスタ。彼はバルサ以外のクラブであれば、とっくに一部デビューを果たしている選手だ。その彼がヨーロッパデビューを飾った。それもスペクタクルなデビューだった。
「フットボール選手として、もっとも幸せを感じた試合だった。試合開始の笛が吹かれても、自分でも不思議なくらい神経質になることもなく落ち着いてプレーできた。とても楽しい90分だったよ。」

■さらに飛躍、トルトレーロ
前半、特に試合開始から20分ぐらいにわたって彼らしくないプレーが続いた。だがそれも時間がたっていくにしたがい、彼らしい落ち着いたプレーが戻ってくる。前半は神経質になりすぎていたトルトレーロだ。だが後半には入りバルサBでのカピタンとしてのトルトレーロが戻ってくる。
「前半は、それも試合開始当初はブルッハスの選手のプレッシャーが強くて焦ってしまった。いつもとは違って非常にややっこしいプレーをしてしまった感じ。それでも時間が過ぎていくにしたがって落ち着いてきた。同僚の選手たち、特にプジョーには感謝している。彼が何回か来て、冗談を言ったりいろいろくだらないことを言って自分を落ち着かせてくれた。試合が終わってみれば自分のプレーに満足することができた。本当に幸せ。」

■テスト合格エンケ
ノベルダ戦以来の出場となったエンケが神経質になっていたとしても不思議ではない。だが彼はポルトガルでのプレー経歴を持つ選手。なぜ彼がバルサのキーパーとして入団したのかを説明する試合となった。試合終了間際に彼が救ったゴールは少なくとも二つあった。
「試合に勝利できたことが何よりも嬉しい。試合は確かに難しいものだったよね。初めて一緒に試合する選手たちが多かったし、個人的にはノベルダ戦以来の試合だったし。プレー一つ一つを顕微鏡で覗かれるような感じだったけれど、プレー内容には非常に満足できるものになった。これでノベルダ戦のことは忘れることができるだろう。」