11月10日

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LIGA 第9節
11月9日 21:15
CAMP NOU 66,791人
FC BARCELONA
vs
VILLARREAL

1 - 0


バンガール「結果が一番大事」

バンガールノートに書かれた「今日のシステム」は、スペインで大流行の4−2−3−1というシステムだった。今や彼のシステムは「客次第」でコロコロ変わる日替わりメニューとなってしまっている。しかも「今日のシステム」は間違いだったとも言える。サイド攻撃のほとんどないビジャレアルにこのシステムは似合わないし、ましてカンプノウでこんな保守的な戦いを挑むことは許されない。

「結果が一番大事」と試合後に語るバンガール。バルサにとっては「魔の11月」を迎えている時期であるし、これからコルーニャ、マドリ、ソシエダーと厳しい試合が控えていることを考えれば納得いく発言ではある。そしてこの日の試合内容を考え合わせてみれば、確かに結果の3ポイントだけが肯定的な結論となった。だがカンプノウでこれほどまでに「非攻撃的」なバルサをみるのも珍しいことだろう。攻撃的なメディアプンタが控えていて初めて意味をなす「9番」クルイベルがこの日は一人だけの攻撃要員。前半だけを見てみればゴールチャンスは皆無に等しいバルサだ。攻撃のアイデアがなければ、ゴールチャンスが生まれることもない。攻撃フットボールに必要な選手、ルイス・エンリケは負傷中、そしてサビオラはベンチに座っている。

試合後の記者会見でサビオラに関する質問が飛び交う。
「もし試合をもう一度繰り返すとしたら、やはりサビオラはベンチスタートになるのか?」
その質問に対し答えるバンガール。
「もちろんベンチスタートの可能性が大だろう。」

そのサビオラはベンチスタートを受け入れている。もっとも、受け入れるしか彼にはすることはないからだろう。バンガールノートを相手の作戦に合わせて変更したこのシステムでは、クルイベルしかプンタがいないことを承知しているサビオラでもある。
「この試合では監督はいつもと違うシステムで臨み、プンタが一人ということで自分の出番がないことはわかっていた。監督の采配に対して選手がどうのこうの言っても始まらない。でも僕とオーベルマルスが出てきてから試合展開が変わってきたのは事実だよね。試合の状況がイマイチだったこともあるし、彼にしても僕にしてもやる気満々で短い時間をプレーしたのさ。結果的にこの交代は成功だったと思うよ。オーベルマルスの登場で奥行きのある攻撃が可能になったし、自分のプレーでペナルティーが生まれたんだから。まあいずれにしても、これから再びスタメンの栄誉を勝ち取るために一生懸命やるだけ。」

バルサの「9番」の名前は、ハットトリック・クルイベルではなくパトリック・クルイベル。いつもハットトリックを決める選手ではないし、はっきり言ってゴールを獲得するよりは外す確率の方が多い選手。その選手が唯一のデランテロとなったこの日のバルサに点が入らなくても不思議はない。ロマンは決してデランテロではなく、オーケストラの指揮者である。メンディエタやモッタはチーム内の駒となって初めて力を発揮する選手。デランテロであるオーベルマルスとサビオラはベンチを温めている。そしてステージは地元カンプノウ。何かがおかしい。攻撃フットボールを信条とすると語るバンガールだが、何かがおかしい。この日の得点は珍しくセットプレーからのものではなかった。ペナルティー、そう、ペナルティーによる得点。10人の選手を相手としての試合で唯一の得点がペナルティーによるものであった。だがもうこの試合のことは過去のものとしよう。バルサには重要な試合がこれから控えている。それらの試合結果を待ってからバンガールバルサを検討することにしよう。


ビクトルの反乱

ビクトル・バルデス、20才の若者であり将来を期待されているバルサのキーパー。バンガールによって命じられた二部落ちという命令に彼は反乱をもって応えた。すでに先週の金曜日に二部Bでのプレーを命じられていたビクトルはその結論を出したバンガールに「ノー」と答えている。

これまでと違い、昨日は二部Bでの練習に参加しなければならなかったビクトル。彼は時間通りに練習場にこなかっただけではなく、クラブとの連絡をいっさい絶ち行方不明状態となっている。彼の携帯電話は不通状態となっているし、連絡のつけようもない状態。明らかにビクトルの意思によって生まれた状況としか考えられない。一時は交通事故とか何かのアクシデントとして心配したバルサコーチ陣は、そういう経過がいっさいなかったことを警察を通じて確認し、その意味では安心した。だがその次に出てくる結論は彼らにとって認めたくないもの、つまりビクトルの反乱という可能性しかない。

バルサBの監督であるキケ・コスタはビクトルのことを心配すると共に、彼に怒りを感じている一人だ。
「バルサBというチームに対して、そしてすべてのバルサBの選手に対しての冒涜であるし、もちろん監督としての自分対する反乱でもある。」
キケ・コスタはクライフと一緒にプレーした選手であり、現役引退後はこれまでバルサの下部組織の面倒を見ている歴史的な人物でもある。その彼の記憶にはこのような「事件」はこれまで1回として存在していない。まして20才の若者が、それも将来を期待されている20才の若者が、一部の試合でベンチに座っているよりはプレーを続けた方が彼のためという理由で二部に送られてきたというのに反乱をおこしてしまった。キケ・コスタには想像外の出来事がいま起こっている。

だがよく考えてみれば、彼の反乱の可能性は2、3日前からわずかながら予想できたことではある。金曜日に二部行きをバンガールから命じられたビクトルはその場で「自分は一部の選手」と語っていた。決して二部行きを拒否したわけではないが、それでもビクトルは明らかに二部行きを不愉快に思っていたのであろう。そしてそのことがさらにキケ・コスタを悲しくさせている。まるで自分の子供のように育ててきた彼が、こんなことで将来の道を誤ってしまうことが彼には悲しい。彼に対する怒りよりも悲しみの方が大きいキケ・コスタ。彼は練習が終わってもしばらくメディアから逃げていた。必死になってビクトルと連絡をとろうとしていたのだ。だがそれもムダに終わってしまった。まったく連絡がとれなかったのだ。

この20才の若者による、誰もが理解できない反乱。その代償は間違いなく高くつくことになる。これまで多くのカンテラが繰り返した一部チームから二部チームへの移動、それはペップにしてもデラ・ペーニャにしても、そしてチャビ、プジョー、ガブリにしても皆おこなってきたことだ。一部でプレーチャンスがなければ、少しでも経験を積むために二部行きを命じられてきた彼らは、そうして一流の選手に成長してきた。誰でも過ちはある。20才の若者ではなおさらだ。ビクトルが反乱をおこなう勇気があったのなら、その誤りを認める勇気にも期待したい。