12月12

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Champions League
12月11日 20:45
CAMP NOU 45,110人
FC BARCELONA
vs
NEWCASTLE
 

3 - 1


カンプノウ法廷、
選手とバルセロニスタの再会の場に

嵐のような集中豪雨の後には、得てして不思議なほどの静けさが戻ってくるものだ。昨日のカンプノウがまさにそれだった。ガスパー政権に対する抗議の意思表示は多くの垂れ幕となっておこなわれたものの、彼に対するブーイングや白ハンカチは見られなかった。この日カンプノウに集まった多くのバルセロニスタはガスパーへの抗議の意思表示をするためではなく、輝かしい成績を残しているユーロバルサの試合を見に来たのだ。選手の闘志あふれるプレーに対してバルセロニスタがおくる大拍手。そしてそれに応える選手たちからのバルセロニスタにおくる拍手。そう、この日はカンプノウが法廷となる日ではなく、選手とバルセロニスタが今再び団結を確認する場となった。だが唯一、その仲間入りに外れた人物がいた。それはベンチから飛び出してくるごとに大きなブーイングを浴びたバンガールだ。

カンプノウはガスパー政権を追及する法廷ではなく、ユーロマネーに魂を売った過去の選手に対する恨みを晴らす場でもない。カンプノウは、少なくても昨日のバルセロニスタにとって、スペクタクルなフットボールを楽しむフットボールスタディアム、本来の意味でのカンプノウスタディアムだった。今から50年以上前、クラブが経済的危機をむかえながらもカンプノウという新しいスタディアム建設をおこなおうとしたとき、その建設資金を用意したのは何万人というソシオだった。彼らが2年も3年も先のソシオ年間費を自主的にクラブに提供することにより実現が可能となったスタディアム、それがカンプノウだ。そして、クラシコの試合を最後に18日間にわたって試合がなかったカンプノウ。その間に様々なことが起きた。アウエーでのソシエダー戦、ラージョ戦に敗れ、バルサペーニャの反乱が起きた。そしてクラブ理事会に対する怪しげな不信任動議が発表されかと思うと15年ぶりのカンプノウでの試合延期。競技委員会裁定による2試合カンプノウ閉鎖という暴挙。そう、この18日間、一つもいいことがなかったバルサファミリー。だからこそ、昨日カンプノウに集まった5万人近いバルセロニスタは、ガスパー政権批判の思いをそれぞれ垂れ幕で表現しながらも、ひたすらバルサの試合を楽しもうという人々だった。

カンプノウにフットボールが戻ってきた。試合開始早々のダニのゴールが観客席をさらに熱くする。しかも相手はイギリスのニューキャッスル。リーグでの窮屈な対戦相手と違いバルサに多大なプレッシャーをかけることなしにフットボールをさせてくれるチームだ。そしてこの日のバルサは両ウイングに広がっている、いわゆるバルサらしい陣形をしいている。大きなグランドを左右いっぱいに使い、奥行きのある試合展開が繰り広げられる。

この日のバンガールノートから生まれたシステムは4−3−3というもの。右にプジョー、真ん中にデ・ボエルレイジンゲル、そして左にコクーが守りを固める。中盤の3人は右にチャビ、左にモッタ、そして真ん中にロマン。左サイドにはオーベルマルス、右サイドにダニ、そしてプンタにクルイベルという布陣でスタート。だがこのシステムは試合開始3分を待たずに変わることになる。バンガールノートの2ページめが開かれる。今度は3−4−3というシステムだ。プジョーが右インテリオールに入り、中盤4人のロンド形式となる。ピボッテの位置にチャビが下がる。左インテリオールにモッタが入り、メディアプンタはもちろんロマン。そしてしばらくしてから二人の選手に思わぬ負傷がおそいかかった。レイジンゲル(6週間から8週間)が、そしてコクーが負傷する。彼らに代わってそれぞれクリスタンバールメンディエタがポジションを埋める。

チャビからのロングパスをボレーシュートでダニが決めた後、ニューキャッスルも反撃に出る。バルサの先制点からわずか15分後にイギリスチームの同点ゴールがあっさりと決まり、観客席のフィエスタ気分が沈みかけたときクルイベルの記念すべき100ゴールが相手ゴール枠内に突き刺さる。ユーロバルサ10連勝に一歩近づいた貴重なゴールだ。このゴールを生み出したのは左エストレーモと変貌していたオーベルマルス。彼の体調が戻ってきたことが同時に左エストレーモという存在を久しぶりに再現することになる。

バルサにとっては何試合ぶりかの危なげない試合展開となる。それは後半が始まってから10分程度で生まれたモッタのゴールにより3−1という結果になったからだ。コーナー付近から再三の絶妙のパスを出していたロマンのプレーがついに得点につながった3点目。これで完全にバルサペースとなった。わずか5万人というこの日の少ないバルセロニスタ、だがそれでも11人の選手たちとの合流は完全になされた。一人一人のプレーに声援をおくり、それに応えるバルサの選手たち。それでも一人だけその仲間として認められなかったバンガール。試合展開がどのように素晴らしいものであれ、そして試合そのものに勝利することがあれ、多くのバルセロニスタとバンガールとの間にはすでに埋められない亀裂があることを証明した試合でもあった。

■かくかくしかじか語るバンガール
カンプノウでの試合には必ず駆けつける奥さんのトゥルース。この日の試合も例外ではなかった。だが試合後の彼女の表情は普段と違って厳しいものとなっていた。彼女のご主人であるバンガールに浴びせられたブーイングがその原因であることは明らかだ。
「ここのファンはバンガールを嫌っている」
それが試合後のラジオインタビューに答えた内容だった。だがバンガールはバルセロニスタのブーイングなぞ聞こえなかったかのようにまったく違う内容のコメントをおこなっている。
「私バンガールはトゥルースではない。そして私バンガールは今日カンプノウに集まったバルセロニスタにお礼を言いたいと思う。試合開始1分から試合終了まで選手たちを応援し続けた彼らにこれ以上のものは望めない。彼らはファンタスティックだった。」

負傷というアクシデントにも関わらず、普段は控えとなっている選手が途中出場し活躍したことを喜ぶバンガールだ。それはもちろんクリスタンバールのこと。そしてオーベルマルスとダニの活躍も特筆している。
「今日の試合では、我々は素晴らしい選手たちを抱えているということが確認されたと信じている。それはわずか試合開始10分で二人の選手を交代させなければならない状況をむかえながら、途中出場した選手たちが完全に使命を果たしてくれたことからみても明らかだ。スタメン出場している11人の選手だけではなく、ベンチに中にいる7人の選手もじゅうぶん期待に応えてくれる選手たち。クリスタンバールは久しぶりのプレーだったし、メンディエタは本来の彼のポジションでないのに期待以上の働きをしてくれた。」

この日の90分間の試合で見せたいくつかのシステムの変更。彼バンガールは予想してたようにうまくシステムが機能したと満足する。
「4−3−3は私バンガールの好きなシステム。3−4−3も決して嫌いではない。だがいずれのシステムでもその有効性が証明されたのが今日の試合結果だと思う。私バンガールは自分のシステムに絶対の信頼を抱いている。それが間違いではなかったということが再び証明された。」