今日の期待、デ・ラ・クルス

選手としてはクライフと同時代をバルサで過ごしたデ・ラ・クルス。バルサ史上最高のラテラル選手として、サイドからの攻撃に果敢に参加するのが彼の持ち味だった。その彼が“歴史のいたずら”とも呼べるものによって、今日のAt.マドリ戦を最高責任者として指揮することになる。今日一日だけのバルサ監督として公式試合を指揮することになるデ・ラ・クルス。彼の現役時代のような思い切った試合展開のバルサが見られるか、今日一日監督の彼に多くの期待がかかる。

最初にして最後の公式試合、それがデ・ラ・クルスにとってのAt.マドリ戦となる。準備期間はほとんどなかったと言っていいだろう。しかもスタメン常連選手となっているクルイベルやコクーは試合出場が不可能となっている。サビオラも負傷のため出場できない。明るい材料を見つけるのに苦労するデ・ラ・クルス・バルサだが、それでも彼にとっては“生涯を賭けた”戦いとなる。

「私に与えられた準備期間はほとんどなかったといってもいいだろう。それでも短い期間を通じてできる限りの準備をしてきた。木曜日と金曜日をかけて選手たちに私が何を考えているのかを理解してもらうよう努力してきたし、わずか２日間だけの期間ではあったものの、彼らは私のことを理解できただろうと思う。この試合は私デ・ラ・クルス一人がプランニングした試合となるだろう。スポーツ・ディレクターのレシャックはいっさい関係ない。私一人が熟慮し、At.マドリに勝利するための最善の方法を駆使して勝利を勝ち取りたいと思う。」

バンガールが去ってからまだわずかな時間しか経過していないバルサ。これまで揺れに揺れたガスパーを筆頭とするクラブ首脳陣、そしてほとんど準備期間が与えられなかった監督のもとでプレーしなければならない選手たち。肯定的な材料は見つからない。普段の試合以上に難しい試合となっている今日の試合だ。だがこれまでバンガールを擁護し、自らの責任と主張してきた多くの選手たちが、今こそその意地を見せなければならない。

スエルテ！デ・ラ・クルス！

＜スタメン予想図＞

●エスポーツ紙●	●ムンド・デポルティボ紙●

明日の希望、アンティック

ラドミール・アンティック、組織的な戦いを好み各選手の長所を最大限に活かすことが監督としての仕事だと信じる男。それはバルサというクラブの監督に就任した今でも変わることはない。ディフェンス面に優れた選手はディフェンサーとして、中盤での働きに優れた選手はセントロ・カンピスタとして、そして攻撃に優れた選手はデランテロとして、自然な流れに沿って選手起用をはかる。

彼の考える理想的な攻撃陣、それはリケルメをメディアプンタとして彼の前に２人のデランテロ、つまりサビオラとクルイベルを配置する“トリデンテ”となることは明らかだ。バルサの前任監督と違い、現在バルサの擁する二人のアルゼンチン人選手と一人のオランダ人選手がバルサの攻撃の最大のキーポイントを握っていると考えるアンティック。それはこれまでバルサの試合のテレビ解説をしていた時の彼の発言を見れば明らかとなる。アンティックはサビオラやリケルメを非常に高く評価している人物の一人だ。

デ・ラ・クルスほどではないものの、彼にも準備期間はあまり用意されていない。監督期間も基本的には今シーズンの残りの試合だけだ。一人一人の選手をテストする時間さえアンティックには許されていない。だが彼はこれまで多くのバルサの試合を観察してきている。彼にはテスト期間など必要ないかも知れない。適切なポジションに適切な選手を、それが彼の基本とするアイデア。したがってレアル・マドリの監督を務めていたときも、決してルイス・エンリケをラテラルなどでは起用することがなかった監督でもある。

もうすでにベテラン監督と呼べるアンティック、彼は多くの記者たちに囲まれてバルサ監督就任に関して語っている。
「At.マドリ戦に関しては私はいっさい介入しないつもりだ。この試合のバルサの監督はデ・ラ・クルス。彼の責任のもとに戦われる試合であって、しかも彼は十分に期待に応える素質を持っていると思う。アンティック・バルサの誕生は来週からスタートすることになる。これまで多くのバルサの試合を見てきたが、現在の選手たちでじゅうぶんに反撃していけると信じている。立派な選手たちがいるんだから固いチームブロックを確実に作り上げていけると思う。我々には十分な時間があると信じている。だいじょうぶ、バルサは間違いなくチャンピオンズ圏内に入れる実力を持っているさ。」

スエルテ！アンティック！

遠くまで行くんだ、ソリン！

アルゼンチン代表選手であり、どこのクラブでも成功を収めてきているフアン・パブロ・ソリン。彼を優秀なラテラル選手であると誰しもが認め、人によっては現在世界最高のラテラル選手として評価もされる。だがバルセロナに到着した彼の風貌を見た人々は、彼がフットボール選手だと聞いたら驚くだろう。まるで役者かロックシンガーのようなソリン。だが彼は間違いなくフットボール選手、それも残り半年はバルサの選手となる一流のフットボーラーだ。

読書と音楽とジャーナリズムに興味を示すソリン。事実アルゼンチンにいる間は、彼自らがディレクターも務める一つのラジオ番組さえ持っていたという風変わりな選手だ。だが正真正銘のフットボール選手、それもかなり高く評価されているフットボール選手である。しかも彼の経歴を見れば輝かしいそれであることがわかる。

現在２６歳のソリンは９歳でアルゼンチン・ジュニオールズに入団している。彼の青春はそのチームと一緒にあったと言っても言い過ぎではない。そしてヨーロッパへの冒険はユベントスを皮切りに始められる。ちょうどユベントスがチャンピオンズに優勝したシーズンに彼はユベントスの選手となった。だが多くの中南米選手がそうであるように、ヨーロッパでの最初の冒険は限りなく絶望的なものとなった。そして再びアルゼンチンの地へ戻ることになるソリン。今度はリーベルの選手として再出発をはかる。最終的にそのリーベルでフットボール選手として爆発することになる。なぜならここで４回のリーグ優勝を経験するからだ。

彼の風貌と同じように、経歴も非常に変わっているところがある。アルゼンチン選手でありながらブラジルリーグへと移っていくソリン。クルゼイロでカップ戦の優勝を獲得した彼は、それから再びヨーロッパへの冒険を試みる。今度はラッチオだった。

昨日ローマからバルセロナに飛んできたソリンは、そのままサン・クガットにあるアセペイヨ・クリニックに直行してメディアカルチェックを受けた。もちろん何の問題もなくチェック完了。そして彼を取り囲む大勢の記者たちに次のように語っている。
「私に興味を示してくれたバルサに非常に感謝している。そしてその期待に応えたいと思う。まずAt.マドリ戦に出られないのが残念だが、是非とも勝利して欲しい。バルサの置かれいる厳しい状況は知っているるもりだ。だからすべての試合を最終戦のように戦っていかなければならないだろう。個人的には何がなんでも４位以内に入ることが目標。そして現在はレンタルという状態だけれど、来シーズンから完全移籍という形でバルサに残り多くのタイトルを獲得したいと思う。バルサというビッグクラブに来れて今は非常に幸せに感じている。」

スエルテ！ソリン！