Andres Iniesta Lujan
イニエスタ


イニエスタファン
(06/04/30)

かつてのバルサの4番グアルディオラとイニエスタとはラ・マシアの練習場でしか一緒に“プレー”していない。だがそれは彼ら2人がフットボールの世界において無縁の関係だったということを意味するわけではない。いや、それどころかグアルディオラは誰にも増して多くのメッセージをイニエスタに残していった選手と言えるだろう。そのメッセージはイニエスタにとって宝物でもある。例えば次のようなメッセージが彼の頭の中に深く残っている。

「我々のポジションは足が早いことを要求されるものでもない。要求される唯一のこと、それはボールを走らせることだ。なぜなら人間よりボールの方が早いのだから。」
「ボールが足下に来る前にどこにボールを出すかはすでに決めておかないとならない。もしそれが決まらないうちにボールが来た時は、決していい加減にパスを出そうとしないこと。ボールを守るか、あるいはポルテロに渡すべきだ。それがカウンタアタックを防ぐ方法だと思えばいい。」
「フットボールは数多くあるスポーツの中で最も単純明快なものだ。頭脳が命じるままに足を動かせばいいんだ。」
「もし相手選手にファールされたら、それは君のせいだと思うべきだ。なぜならボールを必要以上に持ち続けているからファールされるのであって、もしボール処理を適切におこなっていればファールされることはない。できる限りボールを回すことを考えるべきだ。もっともこれはクライフに教わったことだけどね。」

そのグアルディオラは現在メキシコでプレーしている。そしてもちろんカンプノウでのミラン戦を多くの友人たちとテレビ観戦している。画面に写る色白の選手を指さし周りの友人たちに語るグアルディオラ。
「彼が初めて練習に参加してきたとき、自分や将来を期待されていたチャビをも超える存在となるだろうと予想していたんだ。」

ベンフィカ戦でのイニエスタの活躍が世界のフットボールファンへのプレゼンテーションであったとするならば、サン・シロやカンプノウでのミラン戦での大活躍は、フットボール世界での彼の存在を揺るぎないものにしたことを意味する。そしてそのことを喜んでいるチャビ、これまで時々おこるメディアからのイニエスタ批判を常に「バカげた批判」としてイニエスタ擁護の先頭を切っていたチャビだ。
「彼のことは毎日一緒に練習している俺たちが一番よく知っているのさ。特に同じようなポジションを務める自分みたいな選手にとって、彼の才能が誰よりも群を抜いていいることぐらいはすぐにわかるさ。」

“イニエスタファン”であるグアルディオラやチャビ。だがイニエスタのアイドルは彼らではない。バルサインフェリオールカテゴリーでプレーしている時代から彼は明確に1人の選手の名をあげている。
「僕のアイドルはラウドゥルップ、いつか彼のような選手になることが夢。」
そう、彼のアイドルはマイケル・ラウドゥルップ。そのラウドゥルップもまたグアルディオラと同じようにミラン戦をテレビの前で観戦していた。そしてその翌日、イニエスタはアイドルからの祝福の電話をもらう光栄を得た。

「Aチーム」


“革命的天才色白四番”イニエスタ
(06/04/08)

バルサ・ベンフィカ戦にマンチェスター伝説の人物ボビー・チャールトンが観戦に来ていた。試合終了後、バルサの選手で誰が一番印象に残ったかという質問に次のように答えている。
「24番をつけた選手だね。彼1人でチームを動かし、彼からでるボールが攻撃の原動力となっていた。名前をうまく発音できないのが残念だが、とにかく素晴らしい選手だと思った。」
イングランド人にはなかなかうまく発音できない24番を付けたバルサの選手、それはいわずと知れたイニエスタだ。

“革命的天才色白四番”イニエスタがピボッテとしてもじゅうぶんすぎるほどに活躍できることを証明したのが第29節のヘタフェ戦だった。バルサAチームに上がってきて4シーズン目を迎えるイニエスタだが、ピボッテ役として起用されたことはこれまで皆無と言っていい。だが彼にとって初めてのポジションでは決してなかった。フベニルカテゴリーで、そしてバルサB時代にも自然にこなしてきた場所でもあるし、スペインアンダー15、16、17、19、21と、すべてのカテゴリーで何回か務めてきたポジションでもある。

最近のフットボールの傾向としてピボッテ役を務める選手はフィジカル的に強さを持つ選手が選ばれることが多い。それはどこのクラブのピボッテ役選手を見ても一目瞭然となる。つい最近ペップが次のように語っている。
「バルサと他のクラブとの違いは色々な意味で多くあるが、その一つに身長が高くてフィジカル的に強い選手でなくてもピボッテ役を務めることができることだろう。つまり守備的なピボッテというよりは攻撃の起点となるような意味合いのピボッテがいまだに残っているチームと言える。」
イニエスタはもちろん身長が高いわけではない。かつてピボッテ役をやっていたチャビにしても、やはり長身ではない。
「だが、」と、イニエスタを誰よりも知るトレーナーのパコ・セイルーロが口を挟む。
「だが、イニエスタがフィジカル的に弱いと思っている人がいたら、それはまったくの誤解というものだ。確かに見た目にはキャシャな感じを受けるが、ユニフォームに隠された体を見たら意見が変わるだろう。彼は恥ずかしがり屋だから試合後にユニフォームを脱いで体を人目にさらすことはまったくないが、実は凄い体をしているんだ。そう、例えて言うなら、ロナルディーニョの体を白くしたような感じさ。」

「フットボール選手にはフィジカル面での強さよりインテリジェンスの方が必要だと信じている。監督が各ポジションの選手に何を期待し、どのような動きをしてどのような仕事をして欲しいのか、それを明確に受け止め効率的に仕事をすることが各ポジションに配置された選手の役目だと思っている。そういう意味で言えば、色々なメディアが何か月前かの自分より最近の試合での自分の方が良い調子だと語っていることは明らかに間違いだ。自分は単に監督の要請することを自分なりに理解した上でプレーしているに過ぎない。それは例えば3か月前もそうだし、今でも同じことさ。イニエスタはどこのポジションでプレーしようとイニエスタだし、もちろんチャビでもデコでもない。」
そう語るイニエスタ。そして彼をカンプノウで初めて見たボビー・チャールトンは24番の選手の印象について付け加える。
「あの選手は見た目よりもフィジカル的に強そうだし、頭も良さそうだねえ。もし、イングランドのクラブでプレーしていたら大騒ぎになっていた選手だと思うよ。御存知のように、我々には歴史的にああいうタイプの選手が育ってこないからねえ。」

「Aチーム」


イニエスタはイニエスタ
(06/02/15)

チームが連勝している状況にあって、しかもダントツの首位を走っている状況にあれば、いかに悲観的なキャラクターを持つカタルーニャメディアであれ、バルサ選手に対する批判が生まれないのは当然のことだろう。だが、ひとたび連敗という思わぬマイナスな事態が訪れてくると、それまで潜んでいた選手批判が浮かび上がってくるのもよくあることだ。At.マドリ戦での敗北に続いてバレンシアにも敗北することになったバルサの選手に対して、地元メディアからの厳しい批判が登場している。そしてその批判の的となっている一人の選手がアンドレス・イニエスタだ。彼への批判は、同時にチャビへのノスタルジーともなる。曰く“チャビの不在を埋められないイニエスタ”となり“もしチャビがいれば・・・”という、カタルーニャメディアの特徴の一つとなる“不在者ノスタルジー”のコメントが花を咲かす。

だがフラン・ライカー監督にとって、イニエスタとチャビはまったく違うキャラクターとして認識されている。チャビが“カラコーレス”の選手であるとするならば、イニエスタは“プリメル・トッケ(ワンタッチフットボール)の選手であり、チャビがリズムを作り出す選手であるとするならば、イニエスタはスピードを生み出す選手である。昨シーズン、イニエスタは12番目の選手として後半に登場するのがほとんどだったが、チャビと交代して登場してきたのはわずか2回程度しかない。常にジュリーとの交代選手であり、あるいはデコとの交代選手だった。

それでもチャビの不在というアクシデントが、イニエスタの状況を少し複雑にしてしまっている。例えば、昨シーズンと今シーズンではフラン・ライカーがイニエスタに要求することが変わってきていることだ。チャビが負傷してから、フラン・ライカーがイニエスタに要求し始めた基本的なことは三つほどある。試合の流れを読みとりリズムメーカーとなること、状況を判断してチームに“休息”を与えること、そして機を見てゴール前への進入を試みること。
「監督からの要請が昨シーズンとはキャラクターを変えてしかも増えてきていることは確かさ。それはそれで期待されている証でもあるから可能な限り期待に応えていきたいと思う。でも、自分以外のセントロカンピスタの選手が誰かによって自分の動きも変わってくるのも確かなこと。例えばバン・ボメルがメンバーとして加われば自分の攻撃参加は少なくなる。なぜなら彼はゴール前に飛び出していくことが多い選手だから、その状況を判断して誰かが後ろをカバーしなくてはならない。でも自分が組む相手がデコだと状況はまったく違ってくる。彼は多くのスペースをカバーするしピボッテの位置にまで下がってボールをとることが多いから、より自分はフリーになるし攻撃参加もしやすくなる。小さいときからそうであったように、常に攻撃参加できる“自分のポジション”が与えられることになる。」

バルサコーチのエウセビオが続きを語る。
「イニエスタの良さを最大限にいかすにはメディアプンタの位置に置くのが良いと思っている。だがチャビがプレーしている間はそれも可能となるが、その彼が負傷中の今はそれができない。もしイニエスタの他にバン・ボメル、そしてエドゥミルソンという選手で中盤を組むことになると、イニエスタが攻撃に参加する確率はとても低くなることは仕方がない。そうでないとバン・ボメルやエドゥミルソンの良さがなくなってしまうからだ。したがってこのメンバーでの彼の役割はボールコントロールということになるが、そういう意味ではAt.マドリ戦でもバレンシア戦でも期待通りの活躍をしてくれていると思う。」

チャビがいようといまいと、毎週末の試合が彼にとって最終テストとなっていると語るイニエスタ。そのテストとは監督の要請にどれだけ応えられるかということだ。
「自分の特徴にあっていようといまいと、監督が要求することに応えるのがプロの選手だと信じている。そして自分なりに判断すれば、後半20分だけの仕事であれスタメン出場90分の試合であれ、監督の期待には少なくとも応えることができていると思う。もちろん改良していかなければならない部分は山のようにあるさ。例えば、相手選手からのあたりに強くなること、ボールを奪われないようなテクニックをさらに磨くこと、ボールを奪う技術をもっと高めること、そしてゴールの確率をもっと高めること、そう、いろいろあるさ。ただゴールに関しては運の問題が大きいと思っている。バルサインフェリオールカテゴリーやスペインアンダー時代にもゴール運がある時は自分でも信じられないぐらい気持ちよくゴールが決まったし、まったくダメな時期は何でこれが入らないのかと思うぐらいゴールが決まらない。ゴールなんてそんなもんだと思っている。」

メディアの間で囁かれるイニエスタ批判が気にならないわけがないだろう。だが、そこは冷静さを装う彼でもある。
「監督の要請に確実に応えられることが自分にとって一番重要なこと。もしその使命が達成されたと自分で納得できれば外部からの批判なんかどうでもいい。」
イニエスタはあくまでもイニエスタ一世であり、決してチャビ二世ではない。それだけは確か

「Aチーム」


イニエスタ、100試合出場達成!
(06/02/03)

2002年10月29日、18歳という若さでバルサAチームデビューを飾ったアンドレス・イニエスタ。デビュー戦当時の監督はバンガール、そして試合はチャンピオンズのブルッハス戦、しかも0−1という結果で勝利した試合だった。それから3年と2か月たち2006年2月1日におこなわれた国王杯サラゴサ戦で、彼としてはバルサAチーム出場100試合を達成することになった。その内訳は、リーグ戦72試合出場(3ゴール)、チャンピオンズ16試合(1ゴール)、UEFA3試合、国王杯8試合(1ゴール)、そしてスーペルコパ1試合出場の合計100試合出場となる。

過去をチョイと振り返れば・・・イニエスタがこのHP上で登場したのはまだ15歳程度の時であり、アンダー16の大会でフェルナンド・トーレス(当時At.マドリフベニル・現At.マドリ)やホセ・アントニオ・レージェス(当時セビージャフベニル・現アーセナル)などと共に三羽がらすと呼ばれ、ほんの一部のメディアに登場したこともあった時代だ。そしてそのイニエスタがもう21歳となっている。

カンテラ育ちの選手がAチームに継続して出場するのはビッグチームであればあるほど難しい。例えば、ACミランではその継続性を持つ“最新’の選手があのマルディーニであったり、レアル・マドリなどでもカシージャスが“最新”のカンテラ育ち選手であることを見ればその難しさが証明される。それでもバルサは多くのカンテラ育ち選手がAチームに進出し、少ないながらも継続性を与えられているクラブだ。今シーズンのチャンピオンズに参加してきているクラブを見てもバルサのように10人近くのカンテラ育ち選手が出場しているところは皆無と言えるだろう。もちろんそんなバルサでも試合出場の継続性を得るということは限りなく困難な作業であることには変わりはない。

創造性と若干の守備力を要求された4番ピボッテというポジションが過去のはるか彼方に埋められ、守備力のみが優先されるという傾向が最先端を行く現代にあって彼はもう4番の選手ではない。そして残念ながらメディアプンタというポジションも存在しないライカーバルサにあって、彼の存在基盤となるポジションはインテリオール、あるいは見せかけのエストレーモということになる。それでも昨シーズンは12番目の選手として出場機会が豊富にあった彼だが、今シーズンはバン・ボメルという選手の加入とスター選手メッシーの登場により少しながら陰に隠れてしまっている状態だ。もしバルサというビッグクラブではなく他のクラブ、それはレアル・マドリさえ含めた他のクラブでプレーしていれば間違いなく毎試合スタメン出場となるであろう彼であり、今年の夏のワールドカップ出場権は保証されていたであろう彼であるが、断固として他のクラブからのオファーを断りバルサに居続けることを最優先してきたイニエスタ。その心意気良し、とっても良し。そして間違いなくイニエスタの時代がやって来る。この100試合達成はほんの通過点に過ぎない。

「Aチーム」


アンダー21での活躍は当然
(05/09/08)

カデッテAカテゴリーを卒業した翌年にフベニルBカテゴリーの昇格する選手は数多いものの、その昇格したシーズンに四つのカテゴリーでプレーすることになる選手はこれまで二人しか知らない。つまりフベニルBでスタートし、フベニルA,バルサC,そしてシーズンが終了する頃にはバルサBの助っ人としてプレーする経験を持つ二人の選手、それはイニエスタとメッシーだ。そして今シーズン、彼らと同じような経験を積むかも知れない一人の選手、それはジョバニ・デ・ロス・サントス。だが彼のことは別の所で触れることにしよう。ここはイニエスタの話題だ。

イニエスタは相変わらずアンダー21でプレーさせられている。それはまるで、もうとっくにバルサAチームの選手である彼をバルサBチームでプレーさせているかのようなものだ。容れ物的にはもうとっくに小さくなりすぎているスペイン・アンダー21,そこで彼が活躍するのは当然のことだろう。火曜日におこなわれたセルビア戦でペナルティーを含め2ゴールを決めたことや、アンダー21のチームを一人で引っ張っていった活躍も当然のことだ。彼はこのカテゴリーの選手ではなくスペインAチームの選手なのだから。

そして彼のゴール能力に関して疑う人がいるとすれば、それは昨シーズンの彼しか見ていないことを暴露している。これまで彼が通過してきたカテゴリーで、それはバルサのインフェリオールカテゴリーであれ、スペインのアンダーカテゴリーではあれ、4番あるいはメディアプンタというポジションの選手としては合格以上のゴールを決めてきているのを見れば明らかだ。昨シーズンのイニエスタには確かにゴール運が欠けていた。だがそれはどんな選手にも起きうる現象の一つに過ぎない。

「Aチーム」