12月16日

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LIGA 第14節
12月15日 20:30
CAMP NOU 54,257人
FC BARCELONA
vs
SEVILLA

 

0 - 3


そこの二人、神妙にせいっ!

カンプノウが爆発した。スペクタクルなフットボールが展開されたわけではなく、ドラマチックな試合展開となったからでもない。
“もう我慢できない”
その思いを抱く多くのバルセロニスタの叫びによって爆発したのだ。シーズンの半分が終わろうとしているこの時期に、バルサは首位に16ポイント差となり13位、ここ5試合で獲得したポイントはわずか1ポイント、そして二部降格ラインまで2ポイントとなった。観客席を埋めた人数と同じ数の白いハンカチが振られ、会長と監督に対して“即時辞任”を要求するバルセロニスタ。だがその声は彼ら二人には届かない。試合後、2時間近くの緊急会議を開いたガスパーを筆頭とするクラブ首脳陣。彼らが出した結論は多くのバルセロニスタが望むものとは正反対のものだった。

ガスパー会長は辞めない。バンガール監督は更迭されない。夜中の1時におこなわれたガスパーの記者会見で彼は語る。
「私は辞めないし、監督を更迭することもない。」
それは会長というクラブ最高責任者として、今の状況を乗り越える責任が彼にはあるからという理由だ。今の悪い状況は一時的なものであり、会長として責任をもって状況打破する自信があると語るガスパー。そしてそれはバンガールにしても同じだと語る。
「彼は今の状況を破る自信があるという。しかもヨーロッパでの戦いでは我々は素晴らしい成績を残している。ソシオの気持ちは十分理解できるが、急いでの結論はよくない。したがって彼を更迭するようなことはない。」

この日の試合の審判を務めたのはバルセロニスタにはなじみ深いロサントス・オマール。ベルナベウでバルサの勝利につながるリバルドのゴールを無効にした審判。そしてバルサが今のような状態でなければ、再び彼が主役となる試合であった。試合開始早々、ペナルティーエリア外でクリスタンバールが犯したファールをペナルティーとしたオマール。それはまるで今から13年前にクライフバルサに起きたバルサ・セビージャ戦と同じ出来事だった。あの試合を務めたのはブリット・アルセオ。彼もまたペナルティーエリア外のファールをペナルティとして、多くのバルセロニスタから怒りをかった審判だった。だが当時と今の状況はチーム状況が違う。あの試合は審判が主役となったが昨日の試合ではそうならなかった。

カンプノウにかけつけたバルセロニスタは理解のできない失点にも関わらず“彼らのバルサ”を力強く応援し続けた。リアクションを見せない選手に対しても、試合を読み切れない監督に対しても、批判の声を上げず応援し続けるバルセロニスタ。だがそれも前半が終了するまでだった。ハーフタイムが告げられるやいなや、ブーイングと共に不満の意思表示が吹き出すカンプノウ。

後半が始まってもリアクションは見られない。バンガールは観客席からのブーイングを恐れるかのようにもうベンチを出て指示を与えることもしない。バルセロニスタからのプレッシャーは時間の経過と共に強くなる。そして後半33分、決定的な瞬間が訪れる。セビージャのキーパーが蹴ったボールがバルサディフェンス陣を襲う。高いボールの判断を誤ったデ・ボエルは方向を見失い相手デランテロにボールを渡し、前に出てきたボナノの頭を越えようとするシュートが打たれた。ボナノはわずかに触るものの、セビージャの決定的な2点目が決まる。デ・ボエルの対するブーイングは同時にバンガールにも跳ね返ってくるかのようだ。そして完全にグロッキー状態になったバルサにセビージャの追加点が加えられた。

「出ていけ〜、出ていけ〜!」
「即時辞任、即時辞任!」
「ガスパー追放、バンガール更迭!」

92分にロサントス・オマールが試合終了の笛を吹いた瞬間からカンプノウは“会長辞任、監督更迭”の追及と叫び声の場となった。白いハンカチはすでに後半途中からあらわれていたものの、この瞬間に最大の白い花が咲くカンプノウ。ガスパーは会長席から立ち上がりまるで彫刻のように身動き一つしないでその叫び声を聞いている。うつむき加減のポーズをとっている彼の目頭からはうっすらと光るものまで見える。だがガスパーは動こうとしない。彼の周りにいたクラブ理事会メンバーや著名人の招待客たちが彼を励ましにくるが彼は反応がない。そして動こうとしないガスパー。飛び交う罵声と怒鳴り声を一身に浴びるガスパーはそれでも動かない。彼の最も信頼するクロッサ副会長がうながしても貴賓席から動こうとしないガスパー。そして彼がついに引き上げよとしたのは、貴賓席にいたすべての人物が消えたあとだった。

■ショックを隠さないバンガール
バンガールにとって、いかに自信に満ち満ちたバンガールとはいえ、この日のことは一生忘れられないだろう。かつて彼の第一次政権の時にも、この日のような白ハンカチでカンプノウが埋め尽くされたことはなかった。彼に対する罵声がこんなに強く沸きあがったこともなかった。彼に対する辞任要求の声がこれほど空高く叫ばれたことはなかった。それでもバンガールは耐えている。そしてこの状況を肯定的に変える能力があると信じている。いかにショックを感じていようとだ。
「はっきり言って落ち込んでいる。我々はひどい状況をむかえていることも認めよう。だが今は言葉でいくら語ってもしょうがない。明日からの練習、練習、そして練習、この練習を通して我々は語っていかなければならない。」
この日の試合に関しては“運の悪さ”、“選手の気力のなさ”、“闘争心の欠如”、“間抜けな失点”などについては触れないバンガール。最悪なのは試合の総括さえできないことだ。
「この試合のどこがどう悪かったのか今の自分にはわからない。選手たちと話し合い、そしてビデオを見て研究していかなければならない。」
試合後すぐには、どこが悪く、どこを改善していけばいいのか、それさえわからないバンガール。だが建て直しの自信だけはあると語る。
「勝たなければならない試合を我々は負けてしまった。極限的な状態をむかえているといってもいいかも知れない。だが私バンガールはかつてアヤックスで、オランダ代表で、そしてかつてのバルサで同じような状況を抱えて来た。そして見事にそのような状況を振り払い前進することに成功してきた。今のバルサを一番知っているのは私バンガール。選手たちの状態を一番理解してるのは私バンガール。したがってこの日の試合に負けた今でも、私バンガールが今のバルサに最適な人材だと信じている。」
そうは語るバンガールだが精神的に落ちるとこまで落ちているのは間違いない。もちろんこの記者会見で、今後の明るい見通しを聞くことはできなかった。

■プジョー、ナバーロ負傷
この日のバルサにとって痛いのは敗戦だけではない。左ラテラルのナバーロが、右ラテラルのプジョーが、それぞれ試合中に負傷し交代している。プジョーは後ろから来た相手選手に腰を強く打たれて負傷。だがドクター・プルーナを始め多くの関係者がみるところ大怪我にはいたらないようだ。だが心配なのはナバーロ。負傷部分は左足のひざで今日の精密検査での結果を待たなければならないが、大怪我の可能性もあると語るドクター・プルーナだ。