2月17日

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Champions League
2月18日 20:45
CAMP NOU
FC BARCELONA
vs
INTER

 


人生っちゃあ、わかんねえもんだ

ラドミール・アンティックにとって決して忘れられない出来事がある。それは今から6年前の1997年、当時At.マドリの監督として就任していたアンティックはチャンピオンズの戦いを快調に進めていた。そしてタイトル獲得への道のりの途中、バンガール率いるアヤックスと対戦するアンティック・At.マドリ。ビセンテ・カルデロンでの悔しさを通り越した一生忘れることのできない敗戦を喫することになる。彼の脳裏には対戦相手のアヤックスのメンバーがいまだに昨日のことのように焼きついている。その中には、そう、オーベルマルス、デ・ボエル、そしてクルイベルの名前がある。そして彼にとってアヤックスに敗戦して以来の、つまり6年ぶりのチャンピオンズの試合が明日やって来る。もちろん彼の脳裏に焼きつく選手たちを起用しての戦いとなるだろう。

バルサの監督に就任してから初めてのチャンピオンズの試合となる明日のインテル戦。アンティックの想いは6年前のアヤックス戦へと自然に行ってしまう。
「あの試合は忘れられない。一生忘れられない試合となるだろう。試合が終了して30分たっても誰一人カルデロンから去ろうとしないあの光景を決して忘れることはできない。もちろんエスナイデルが外したペナルティーの瞬間も忘れることはできないだろう。」
その光景は彼にとってまるで昨日のことのように思い出される。その彼にとって、まさかバンガールの後釜としてバルサの監督になることや、当時のアヤックスの選手を起用して再びチャンピオンズの戦いに挑む、そんなことは夢想だできなかったことだろう。偶然のいたずらはさらに続く。相手チームのインテルには彼がAt.マドリの監督をしていた頃にいたビエリもいるのだ。

彼が監督に就任して2週間がたとうとしている。そして多くのことがあったこの2週間。わずか7回という合同練習ながら、親善試合を含め3試合を消化、そして彼を契約したガスパー会長の姿は見えず新たな会長が就任。変わらないのは冬のマーケットで獲得したソリンは別として、バンガール時代と同じような選手がスタメン起用となっていることぐらいだろう。
「1分間1分間が自分にとって大事な時間という気がしている。これまで経験のないビッググラブでもアンティックという人間に“成功”の可能性があることを証明するための貴重な時間だ。その証明は自分自身に、そしてフットボールの世界に示すものとなる。」
一昔前、バルサと同じようにビッグチームであるレアル・マドリの監督を務め、シーズン途中まで快進撃をおこなっていたにもかかわらずの不可解な解任事件も彼には忘れられないことの一つだ。それまで不振が続いていたレアル・マドリを上昇気流に乗せている最中であったにもかかわらずの解任騒ぎだった。
「マドリとバルサの共通点?それは両チームとも不振の時にアンティックを雇ったということぐらいだろう。」

これまで笑顔を絶やすことなく練習に、そしてインタビューに応えてきたアンティック。穏やかな対応でしかも楽観的な姿勢が今のバルサには必要なのかも知れない。だが彼は個性的で強烈なキャラクターを持っているセルビア人だ。その穏やかな容姿に隠れた強烈なキャラクターが時々見え隠れする。マドリとバルサに共通していいることは口には出さないものの、両クラブともに“正面入り口”ではなく裏口から入ってきたことでそれを強く認識している。自尊心の強い彼には傷つけられることであるが、同時に自分の実力を示すためには絶好のチャンスだとも思う。
「毎日がまるで最後の日のように仕事をしている。そして自分の目標はバルサに百年残ることだ。」

わずか2週間という期間しか経過していないとは思えないほど、彼はカンプノウのことを、そしてバルサのことを知り尽くしているようだ。例えばオーベルマルスという選手一人ととっても見ても、彼はこれまでのこの選手の経過を知り尽くしている。決して3試合続けてはすべての力を出し切ることはできない選手。誰よりも調子の波があり負傷にも弱い選手。だからこの選手は大事に大事に使っていかなければと思う。彼にとってリケルメは“問題”の選手だ。それはヨーロッパフットボールに慣れるのに時間がかかる選手という意味において“問題”の選手として理解される。だが彼は今後のヨーロッパフットボールを背負っていく選手の一人であるとも理解している。彼の可能性を100%疑わないアンティック。そしてエスパニョール戦にプレーする可能性のないルイス・エンリケを召集したことからもわかるように、彼は「バルサの魂」として認識する。

この2週間でバルサの雰囲気が変わったとはいえ、それは表面的なものにすぎないと考える現実的な監督でもある。これまで彼は監督としてより、精神科医といとしての仕事が多かったことを認めている。だが彼は精神科医ではなくてプロの監督だ。監督としての仕事はこれから始まると考える。
「わずか2週間という短い期間ですべてが変わるということはあり得ないし不可能な話だ。私は魔術師でもなければ発明家でもない。そしていま私がやろうとしていることは非常に難しいこと。それは常識的なことを単純明快にやろうということだ。そのことがフットボールの世界では最も難しいことの一つでもあるんだ。まず最初にしていることは、各選手たちと話し合い彼らが自然にシステムにとけ込んでいく方法を探すこと。まだ非常に初期的な段階であることは間違いない。とにかくアンティック・バルサが見られるようになるにはまだまだ時間が必要だ。」


チャンピオンズが戻ってくる

12月11日カンプノウでのニューキャッスル戦を最後に休憩に入っていたチャンピオンズの試合が明日戻ってくる。2003年最初の試合はカンプノウ、しかもスペクタクルな対戦相手の試合となる。ここ10年以上もスクデットを獲得していないし、最後のチャンピオンズのタイトルを獲得したのもはるか昔のインテルとはいえ、あのクーペル率いるインテルがカンプノウにやって来る。

そのインテルを迎え撃つのはチャンピオンズの試合に10連勝という歴史的な快進撃をみせているバルサだ。もし明日の試合に勝利するようなことがあれば、1992−93シーズンにミランが達成した10連勝という記録を破ることになる。そして記録達成よりも遙かに大事なこと、それは勝利の3ポイントが決勝リーグへの参加をほぼ可能とすることだ。

■ガブリとアンデルソン
ソリンのチャンピオンズ出場は不可能だ。すでにラッチオの選手としてUEFAカップに出場した彼には、今シーズンが終了しない限りヨーロッパの大会への参加資格は与えられない。バルサ唯一の左ラテラル専門家が不在となる明日のインテル戦。この穴を埋めるのは誰になるのだろうか。ムンド・デポルティーボ紙はデ・ボエルをソリンの代わりとし、アンデルソンのセントラル復帰を予想している。またエスポーツ紙は便利屋ガブリの右ラテラル起用、そしてレイジゲルの左ラテラルを予想している。だがいずれの選手がセントラルやラテラルに入るとしてもアンティックのシステムに変化はない。これまで通り4人のディフェンスに守備的ピボッテとしてコクー、攻撃的ピボッテとしてチャビ、左右インテリオールにメンディエタとオーベルマルスを、そして前線にサビオラとクルイベルという布陣となる。

■生き返ったサビオラ
アンティックの監督就任により、昨シーズンもっとも活躍した一人の選手が“らしさ”を取り戻して復活の傾向を見せている。もちろんそれはハビエル・サビオラだ。システムの善し悪しは別として、バンガールが試みたことは結果的にサビオラの欠点を補う代わりに彼の長所を奪い取ってしまうことになった。これまでしたことのない慣れないことをやらされたサビオラは、精神的にも肉体的にも疲労してしまう。だがアンティックは選手の長所をより伸ばしそれを有効に活用しようという発想を持った監督だった。
「バンガールが監督のときには、今の自分がしていることと違う役目を指示されていた。相手ディフェンスをマークしてボールを奪いゴールまで決めなければならないというスーパーな仕事だった。でも今は違う。マークするのは他の選手の役目だしボールを奪うのも優先事項ではない。自分のしなければならない最大の仕事、それはかつてのようにゴールを決めるということ。だから今ではボールを持ったらどのようにゴールを決めるかだけに専念することができている。子供の頃からプレーしてきたスタイルに戻ったんだ。」

■脱臼の常習犯、チャビ
エスパニョール戦前半に右肩脱臼をしたチャビ。だが彼にとって脱臼はこれが初めてでもないし珍しいことでもない。シーズンオフの夏にもプールに飛び込んだ際に脱臼しているし、プレステージの試合でも同じことを繰り返している。そしてバルサのドクターであるドクター・プルーナにとってもチャビの脱臼を“はめ直す”のは初めてのことでもない。
ドクター・プルーナはフットボール部門の担当医となる前はハンドボール部門を担当していた医師だ。このスポーツをする選手が脱臼することは日常茶飯事の出来事といっていい。したがって“脱臼事件”に慣れている彼は、一瞬のうちに“はめてしまう”技術を持っている。だが一回脱臼した直後にプレーを続けることを良しとしないドクターでもある。だからエスパニョール戦でもチャビの交代をアンティックに要請していた。だがチャビはそれに首を縦に振らなかった。
「渋々ながら自分の意見を聞いてくれた。でも条件として右手を身体から離すなということだった。試合中にそんなことは不可能だとお互いにわかっていての条件。実際、あの後どのように右手を使ってプレーしたかなんて覚えていない。試合中は痛みをそれほど感じなかったけれど、試合が終わって身体が冷えてきてからが大変。一晩中痛かった。」