2008年
2009年
4月

チェルシー戦前日・当日
(09/04/30)

チェルシー戦試合前日の月曜日、夕方からテレビの前に釘付けとなって、バルサの練習風景と記者会見の実況番組を拝見。さすがにチャンピオンズの試合前ならではの、多くのジャーナリストが集合してきている。それも各国からやって来ているジャーナリスト。したがって、記者会見に登場してきた選手や監督に対しての質問も、フランス語であったり英語であったり、スペイン語であったり、そして当然ながらカタラン語であったりする。さすがに日本語は登場しない。

バルサからはチャビとペップが参加。チャビは生まれ故郷のテラッサとバルセロナしか知らないから、英語もフランス語も苦手。だが、各国でプレー経験を持つペップは、なかなか言語に強いところを見せてくれる。カタラン語にはカタラン語で、スペイン語にはスペイン語で応じるのは当然として、イタリア人ジャーナリストの「テレビニュースに流すのでイタリア語で答えてくれ」という要請を受け入れ、イタリア語で返答。同じようなイングランドジャーナリストの要請も受け入れ、英語で質問に答えるペップ監督。なかなかやるじゃないですか。同じカタラン人のレシャックや、マジョルカ出身のフェレールなどと違い、彼はインターナショナルであります。もちろん、彼の前任者であるライカーも凄かった。カタラン語、スペイン語、イタリア語、英語、オランダ語、ドイツ語、フランス語(この言語だけはしゃべることはできなかったものの、理解することはできるらしい)までいけちゃうライカーだから、まさにパーフェクト。フットボール選手を球芸だけに優れた人種と思ったらそれは大間違いで、言語能力の鋭さにたまげてしまう。

彼らの2時間後に登場してきたヒディングもまた凄い。英語、オランダ語、ドイツ語、スペイン語はもちろんのこと、カタラン語、フランス語も理解してしまう。ひょっとしたら韓国語やロシア語もしゃべってしまうかも知れない。そして彼らの隣に座る、いつもの通訳のお姉さんも凄い。いかに職業とはいえ凄い。前回でのリヨン戦やバイエルン戦でも通訳をやっていたから、フランス語とドイツ語はOK。この日の記者会見では英語とフランス語がゴチャゴチャとでてきていたが、それももちろんOK。これらの言語をスペイン語やカタラン語になおしてしまうスーパー通訳お姉ちゃん。今度生まれ変わった時には、言語だけでもこのような人たちのようになりたいと、ヨダレを垂らして敬服。

試合前日だというのに、かなりの数の試合観戦チケットが売り出されていた。その理由の一つは、チェルシー側に回ったチケットが1500枚も戻ってきたこと。ここのところチャンピオンズの常連となっているチェルシーとはいえ、マンチェスターやリバプール、あるいはアーセナルと比較すると、ドーバー海峡を渡ってまで応援にくるファン数は少ないのだろう。そしてもう一つは、シエント・リブレ方式で売り出されているチケットが多かったこと。だが、残念なことに、ソシオをのぞく一般販売では日本人には売ってくれない。いや、日本人だけではなく外国人には売ってくれない。買うにはスペイン国籍を示すパスポートや身分証明書が必要だという。その理由は明らかだ。マンチェスターが昨シーズン来たときに、数少ないとはいえチケットが一般販売されていたが、イングランド人だけには売ることを禁止していた。なぜなら、観客席の中に酔っぱらいフーリガンが混ざっては治安も何もないからだ。そこで彼らは日本人を利用してチケットを手にしている。窓口に並んでいる日本人に(もちろん日本人だけではなく、他の国籍の人々に)、少しマージンを支払うから余計に買ってくれと頼んでチケットを手にしている。その結果、多くの酔っぱらい共が観客席にバラバラと散らばることになってしまった。その反省の意味を込めての外国人販売禁止となったのだろう。

久々の大入りカンプノウ9万5千人。確かにマンチェスター戦と違って、酔っぱらいフーリガンが見られない。そして試合前に、周りの常連野郎たちと試合展開予想論議。一人のヒディング通がこう分析する。
「ヒディングはPSVで監督しているときにコパ・デ・ヨーロッパで優勝しただろ。あん時の準々決勝、準決勝、決勝の結果を覚えているかい?5試合とも引き分けさ。全部引き分け。地元で0−0で引き分けて、アウエーゴールの威力で準々決勝、準決勝を勝ち抜き、決勝戦ではPK戦で優勝しただろ?だから、今日の試合も勝とうなんて思っちゃいないさ。ガッチリと後ろを固めきって、カウンターで1点を狙ってくる、まあ、そんなところだろ。」
20年応援組がゴロゴロする周りの常連野郎たちは、フットボール知識の玉手箱だ。

チェルシーのポルテロが、試合が始まったばかりだというのにいきなり時間稼ぎ。どこかで見た風景。そう、マドリがやって来た時のカシージャスとダブル風景。そのポルテロがバルデスに向かってバカ〜ンと蹴りまくり、アシスト役となっている風景も同じ。そして、容赦のないファールがバルサ選手に襲いかかる。審判は一向に気にしてくれない。10人でしっかりと守っているところの隙間を見つけて攻めようとするバルサ側。選手たちがイライラしている風景を見ながら、見ている方もイライラしてくる。マルケスの負傷。ベレッティに対する拍手。その拍手に応えてオウンゴールでも決めてくれて、ベレッティ神話の復活と期待するも、それもなし。エトーが歩きながらベンチに下がる不愉快な風景。プジョーにカードが出されてロンドン試合不出場決定。0−0、決して良い結果ではないものの、悪い結果でもないという不思議な試合結果。去年の今ごろもマンチェスターとの試合後にそう思ったことを思い出す。

そうこうしてチェルシー戦前半90分終了。果たして来週はどうなるのか、だが、それは来週の楽しみとしてとっておこう。その前に、ペップバルサには重要な試合が待っている。そう、今週末はクラシコだ!


Yes, We Can !!!
(09/04/29)

■リーグ戦順位10位以内のチームとのカンプノウでの対戦結果。
バルサーレアル・マドリ −0(前半0−0)
バルサーセビージャ   −0(前半2−0)
バルサーバレンシア   −0(前半2−0)
バルサービジャレアル  5月第二週末
バルサーアトレティ   −1(前半5−1)
バルサーマラガ     −0(前半4−0)
バルサーデポル     −0(前半3−0)
バルサーマジョルカ   −1(前半1−1)
バルサーバジャドリ   −0(前半4−0)

■チャンピオンズ1/8、1/4でのカンプノウ試合結果
バルサーリヨン     −2(前半4−1)
バルサーバイエルン   −0(前半4−0)

圧倒的な強さ。うん、まったく問題なし。

今シーズン最後のものとなるカンプノウでのチャンピオンズの試合。チャンピオンズ準決勝、相手はチェルシー、バルセロニスタにとっては見逃せないこの試合に、9万観衆でカンプノウが埋め尽くされることは間違いない。もし12番目の選手というものが、チームの勝利に向けてほんの少しではあれ役立つ存在となりうるなら、それはこのような試合だ。

これまでの“強敵相手”のカンプノウでの試合結果を見れば、“圧倒的な強さ。うん、まったく問題なし。”とはなるものの、そこはそれ、チャンピオンズの準決勝であり、少々の問題が出てくる試合となるかも知れない。だが、それでも、ペップバルサを信じよう。これまで多くの喜びを与えてくれたペップバルサを100%信じよう。信じるものは救われるのだ。
Yes, We Can !!!
Yes, We Can !!!
Yes, We Can !!!


チェルシー戦
(09/04/28)

チェルシー戦が目の前にきているというのに、今シーズンのチェルシーのことはほとんど知らない。知ったかぶりをして書いてもしょうがないから、こういう時は優秀なジャーナリストの助けを借りるに限る。イングランド人ジャーナリスト、ジョン・カルリン。イングランドフットボールに詳しく、母親がスペイン人であることから、スペインのメディアにもよくコメントを書いている。決してバルセロニスタではない。レアル・マドリ関係の本を何冊か出版していることからみても、どちらかというとマドリディスタと言った方が良い。その彼が何日か前にスペインのメディアにバルサ・チェルシー戦のことに触れている。以下はその抜粋。

今シーズンのバルサに関して、これまで見てきた最高のチームであると多くのフットボールファンの人々が語っている。それは単なるフットボールファンだけに限らず、例えば、フットボール界ジャーナリズムの最高権威者の1人であるサンティアゴ・セグロラにしても、同じように最高のチームであるとコメントしている。1970年のセレソンを、1974年のアヤックスを、そしてそれ以降のサッキ・ミランやクライフ・バルサを見続けてきた彼がそう語っている。現在のペップバルサはこれまで見てきた最高のチームであると。

それは確かにそうなのかも知れない。だが個人的には、そう、一つだけ“だが”をつけてみたい。多くの人々が語る“最高のチーム”は、スペインリーグでの試合を、基本的にはリーガの試合でのバルサの活躍を見て評価しているのだ。3位のチームに18ポイント(現在25)もの差をつけ、ここ何年かで最悪のレアル・マドリに6ポイント(現在4)の差をつけて首位を走り続けているバルサ。その彼らが戦っているスペインリーグは、確実に下降線をたどっているリーグでもある。チャンピオンズの試合でも、スペクタクルな勝利を飾っていると言う人もいるだろう。だが、相手はフランスリーグのリヨンであり、ブンデスリーガのバイエルンだった。そう、まだ、イングランドのチームとは対戦していない。ここ2年間続けて準決勝に3チームを送り出しているプレミアとの戦いはまだ経験していない。そして、バルサが火曜日に対戦するチームはチェルシーときている。アーセナルやマンチェスターなどと比べても、明らかに上昇カーブを描いて好調さを発揮しているチェルシーが相手だ。これはバルサにとって不運と言える。

マンチェスター・ユナイテッド。ヨーロッパチャンピオンであり、プレミアで首位をキープしているチームだ。そのチームが急に下降線を描き始めたのは、今から1か月半前にリバプールに大敗を喫してからだ。そのマンチェスターが、敵も多い代わりに尊敬する人々も多いアレックス・ファーガソン率いるマンチェスターが、ここ2、3試合勝ち続けてきたことで、若干の上昇気流を見せ始めている。だが、それでも決してかつてのマンチェスターのようではないことも確かだ。戦術・戦略を優先する、まるでカルッチオのようなチームと化してしまった。機会があれば、バルサの試合のあとにすぐ彼らの試合を見てみるといいだろう。最高級の芝生のグラウンドでおこなわれていた試合から、いきなりデコボコの土のグラウンドでプレーしてる試合を見るような感じになるだろう。

アーセナル。前記したマンチェスターとは比較できないほどの良質のフットボールを展開している。スペクタクルな試合展開を望むフットボールファンを裏切ることはないアーセナル。だが、決してバランスのとれているチームではないし、デフェンサ面ではお粗末と言ってもおおげさではないだろう。特に、完全に負傷が治らないまま戻ってきたシルベストレが登場してきてから、デフェンサ面では多くの問題を抱えるようになっている。バルサ・アーセナル、この両チームが決勝戦の対戦相手となれば、それはスペクタクルなフットボールが展開されることが予想される。バルサの大量点による、歴史的な決勝戦となる意味においてだが・・・。

チェルシー。すでに触れたマンチェスターとアーセナルの良いところだけを足したチームと言える。組織的にしっかりと固まっているチームであり。まるでラグビーチームのように強いフィジカルを持った選手によって構成されている。しかも、テクニック的にも優れた選手が多い。一時落ち込んでいたドログバは、かつてのようなゴレアドールとして戻ってきている。ランパーは中盤の主役として走り回り、強烈なミドルシュートは健在だ。もちろんデフェンサにしてチームのカピタンであるジョン・テリーもまた好調さを保ち続けている。

バルサ対チェルシー。例え、チェルシーが敗北することがあろうと、カンプノウでのリーガの試合のような、90分間にわたって為す術もなく相手チームが引き下がるということはないだろう。ペップバルサの目の止まらないような異常なスピードで走り回る試合展開に踊らされることはあっても、決して最後まで試合を諦めるということは考えられない。準々決勝でのリバプール戦で、イングランドの最優秀プレーヤであるスティーブ・ジェラードを最後の最後まで自由にプレーさせなかったエシエンを代表とするように、チェルシーの選手たちは最後の最後までバルサを追いつめようとするだろう。

だが、チェルシーに問題がないわけではない。それどことか大きな問題を抱えていると言った方が良いだろう。リバプールとは違い、バルサ相手の試合で、エシエンはいったいどの選手のマークについて不自由にさせようというのだろうか。メッシー?もしメッシーのマークにつくとすれば、イニエスタやチャビや、そしてエトーやアンリなどに多くのスペースができることになる。しかも、先日のセビージャ戦でメッシー抜きで、いつもと変わらないスペクタクルなバルサを我々は見ている。バルサにはリバプールとは比較にならないほどの優れた選手がゴロゴロいるのだ。

これは、バルサにとって不運と言える、という先ほどのコメントを書き換えなければなるまい。プレミアリーグは確かにスペインリーグより強力だ。だが、ペップバルサはリーグの違いにまったく関係なく、絶対的な意味で偉大なチームだ。これまでのフットボールの歴史においても、まったくもって最強といえるチームだということを再認識しなければならない。走り回るボールのスピード、相手選手にかけるプレッシャーの強力さ、効率的なゴールの奪い方、そして強固なデフェンサ陣。そこから生まれてくるスペクタクルなフットボール。不運なのはバルサではなく、チェルシーとしなければならないだろう。


残り5試合+ご褒美1試合
(09/04/25)

マドリ対ヘタフェ・ダービー戦。マドリにとって地元での試合であるし、相手はヘタフェということもあり、週末のセビージャ戦やバルサ戦とは比べものにならないほど楽な試合展開となる、はずだった。だが、そこはそれ、何でもありのレアル・マドリだ、とてつもなく苦しい試合展開が続き、あわや負けちまうのかと思った矢先のイグアインゴールで劇的な勝利。いかにも勝負強いというか、しつっこいというか、あきらめが悪いというか、まさにマドリらしい幕切れとなった。翌日のマドリメディアが興奮気味にタイトルを掲げる。
“奇跡を呼ぶレアル・マドリ!”
地元での試合、ヘタフェ相手の試合、そんな試合に奇跡を呼ばなければ勝てないレアル・マドリ。

そして一夜明けてバルサ・セビージャ戦。この試合に勝利するのに、ペップバルサには奇跡なんぞ必要なく、彼らのみ展開できるフットボールをすることだけで十分だった。平日だというのに、やけに混み合っているカンプノウ観客席。5分前に自分の席に着くとほぼ同時に“Boig per tu”という曲がカンプノウに流れる。新しいテーマソングだか第二のイムノだか知らないが、これはすでに破局している試み。誰も聞いていないし、まして歌う人など誰もいない。だが、そういう背広組のアホな試みをよそに、ペップバルサは快調に飛ばしている。試合開始2分、我らがクラックイニエスタのゴラッソが決まる。カデッテやフベニル時代には、ピボッテやメディアプンタとしてプレーすることが多かった彼だが、あの位置からの、あの角度のゴールは何回か見たことがある。まるでその時代に戻ったかのようなポジションからのあのゴールは懐かしい。そして15分にはエトーのゴール。前半で勝負を決めてしまういつものペップバルサの試合展開に、奇跡なんぞはまったく必要ない。強い、とてつもなく強いペップバルサ。カンプノウに通って20年強、こんな強いチームは見たことがない。

だが、分析好きの物知りファンには、セビージャのとってきた作戦がまずかったとうつるらしい。後ろの席に座る、初めてカンプノウにやって来たという二人組の若者は、セビージャ監督がとってきた作戦が誤りであり、それだからこそペップバルサのやりたい放題となってしまったと解説する。これまで多くのチームがカンプノウにやって来るたびに聞く理論。相手チームが普段のように戦わず、よそいきの試合展開を試みているというのは、例えば、バレンシアが来たときにも、デポルが来たときにも、リヨンが来たときにも、そしてバイエルンが来たときにも聞いた気がする。だが、彼らが気がつかないのは、あるいは気がつきたくないのは、相手チームに普段のようなプレーをさせないだけの“ボールのスピード”をペップバルサが持っているということだ。相手がどこであろうと、自らのフットボールを展開する能力を持っている。そこがクライフバルサとの違いだ。

そして、バレンシア戦。ここまでシナリオどおりに来ている。クラシコ勝利と共にリーグ優勝決定というシナリオは、この土曜日にバルサがバレンシアをやっつけ、翌日のセビージャ戦にマドリが負けちまうことがまず最低条件となる。そしてこのシナリオを完成させるための試合がクラシコだ。ヘタフェ戦で三振前のバカあたりをしたマドリが、セビージャ戦で空振りの三振、そしてクラシコにも負けて振り逃げ一塁アウト試合終了。うん、素晴らしいシナリオ。世の中なかなか思い通りにはいかないものの、もし神様の許可を得てシナリオどおりに事が運ぶとすれば、リーグ戦残り試合はバレンシア戦、マドリ戦だけとなり、チャンピオンズ・チェルシー戦2試合、そして国王杯という5試合のみ。そしてご褒美追加としてチャンピオンズ決勝戦の一試合。これなら全試合ともベストメンバーでいける。

「バレンシアやセビージャ、あるいはバルサ相手ならともかく、ヘタフェ相手にリーグを失うことは許されない!」
フアンデ監督がハーフタイムでこう檄を飛ばしたという。まったくもって異議なし。彼らがリーガ制覇にサヨナラをするのは、次のセビージャ戦であり、バルサ戦でなくてはならない。ドラマチックなリーグ優勝決定を夢見るバルセロニスタにとって、こんな試合でマドリはコケてもらっても困るのだ。ペップバルサが登り詰めている山が高度8千m級のエレベストのつもりだったのが、実は3千mにも満たない八ヶ岳だったということじゃあ洒落にもならない。

※カンプノウでコルテ・デ・マンガをして不評をあび、ビルバオ戦でピエロ役を演じイエステの退場を誘ったイケル・カシージャス。伝統あるレアル・マドリのポルテロとして恥ずかしいことをした彼が、マルセロの挑発行為やぺぺの暴力行為に関して、「レアル・マドリという誇り高いクラブの選手がすることではない。」と語っている。それでは、この恥知らずぺぺさんに対する処分の基本的な規則要項はどうなっているのか。まずカスケロに対しての暴力行為は4試合から12試合の出場停止、アルビンに対しておこなわれたパンチ行為も同じく4試合から12試合の出場停止、審判に対して吐かれた侮辱発言も同じく4試合から12試合の出場停止、したがって最も少なくて12試合、最高刑となると36試合の出場停止処分。実際にはもっと少ない停止処分となるのだろうが、まあ、少なくとも今シーズンはサヨナラだろう。


4月23日サン・ジョルディ、そしてバルサ本
(09/04/23)

チーム成績がいいからか、偶然のなせる仕業か、今年に入ってからバルサに関する本が例年以上に多く出版されている。元バルサ関係者から現バルサ関係者、そして現役選手の自伝に至るまで、各種出版されている。気がついただけでも次のようなものが書店に並んでいる。

●El Barca al descobert(裸のバルサ)
2003年から2008年まで、ラポルタ理事会構成員の1人だったジョルディ・バディア氏が書いた本で、今年の2月に出版されている。昨年の7月にラポルタに対して不信任案が提出され、その際おこなわれたソシオ選挙の結果を正しく判断した8人の理事会員がクラブを去っていったが、このバディアという人物は、記憶に間違いがなければ、その前にクラブから去っている。最初から最後までラポルタ派の人物であり、サンドロ・ルセーのように反ラポルタ派というわけではない。詳しいことは覚えていないが、自らクラブを去っていったというよりは、“コイツは使いものにならん”という感じでクラブを去ることを強要された人物ではなかったかと思う。ラポルタとルセーの確執を具体的に表現している部分はなかなか面白いが、すでに多くのバルセロニスタに知られていることでもあり、その他の内容に至っては、非常に中途半端な印象を受ける。チクチクとラポルタに対する個人攻撃がかいま見られるが、基本的にはラポルタ政権を擁護している内容だ。

●Casi toda la verdad(ほぼすべての真実)
2003年におこなわれた会長選挙の時に、自ら会長に立候補したミンゲージャの本であり、今年の1月あたりに出版されている。もともと選手代理人という職業をしていた人なので、マラドーナとかロマリオとかフィーゴなどの選手契約にまつわる話は非常に面白い。

●La pilota no entra per atzar(ボールは偶然には入らない)
御存知もと副会長フェラン・ソリアーノ著による本。バルサ本といえばバルサ本だが、内容的には一般的なビジネスに関して触れている部分が多い本でもあり、その意味で言えばビジネスマン向きの本かも知れない。今年の4月に書店に出ているから、サン・ジョルディの日を睨んでの出版であると同時に、次期会長選挙出馬を臭わせる雰囲気も見られる。“ボールは偶然には入らない”というタイトルは、フットボールというスポーツの偶然性をすべて否定しているわけではなく、単純に語ってしまえば、あらかじめ予想可能となることをすべてやり遂げることによって、そこで初めて成功の道が開かれる可能性が増えてくるといったところだう。これまでのラポルタ政権がおこなってきたことは、基本的には誤りはないものの、ラポルタ個人に対するいくつかの攻撃(例えば、不信任案の結果を深刻に受け止めることをせず、会長辞任という決断をとらなかったことなど)が見られるが、同時に次の会長選挙に出馬する際の彼の立場を明確にしているという感じも受ける。

●Todos mis hermanos(私の兄弟たち)
“水球界のマラドーナ”と称され、世界的な規模で有名な元水球選手にして、ペップ監督の親友でもあり、そして現在はバルサでよくわからない役職に就いているエスティアルテ著の本。子供の頃から現在に至るまでの自叙伝であり、特にバルサ本というわけではない。この人は20年前に我が家を訪れてくれたこともある良い人。それにもかかわらず、この本はまだ読んでいないので、内容の説明はなし。今年の3月だったか4月だったかに出版。

●Mi vida es el Barca(バルサは自分の人生)
4月23日のサン・ジョルディの日にあわせてエスポーツ紙が出版したチャビの自叙伝。もちろん自分で書いたものではなく、エスポーツ紙のジャーナリストが書き連ねたもの。チャビファンには必見。

●Historias de La Masia(ラ・マシアの歴史)
これもサン・ジョルディの日にあわせてエル・ムンド・デポルティーボ紙が出版した、ラ・マシアの歴史に関する本。おそらく、これまで出版されたラ・マシア関係の本の中では、最も充実した内容のものだろうと思う。アモールやペップ、ルイス・ミージャ、ナジン、アルテッタ、レイナ、セルジ、セスク、その他大勢のラ・マシア出身選手のエピソードが語られている。ラ・マシア寮開設から現在に至るまでに、この寮で生活したすべての選手の名簿が掲載されていたので、いつか“ラ・マシアから”コーナーに転載する予定。


リーグ優勝決定間近!?
(09/04/22)

ヘタフェ、セビージャ、バレンシアと続くリーガ3連戦の中で最も難しいと思われていた(と思っていた)ヘタフェ戦をスペクタクルに勝利。これで、ベルナベウクラシコでのリーガ制覇決定という、多くのバルセロニスタにとって“夢の優勝シーン’が可能となってきた。レアル・マドリのヘタフェ相手の試合は火曜日。“常識的”に考えて、バルサ・マドリとの差が3ポイントとなって迎えるであろう水曜の朝。そしてその日の深夜ともなれば、再び6ポイント差と戻ってることも、これまた“常識的”なことだろう。そして今週末、“常識的”にバルサがバレンシアに勝利し、マドリがセビージャに敗北するという“常識的”な結果ともなれば、その差は9ポイントと広がる。そこで、ベルナベウでのクラシコがパンパカパ〜ンとやって来るのであります。

ここ何試合か続けてマドリの試合を見る機会に恵まれたが、いやはや、例えようのない凄いチームだ。決して悪い選手たちが集まっているチームではない、が、試合内容は非常にお粗末だ。それでも勝ち続けているというメリットは評価されてしかるべきだろう。先制点を決めてしまうと、すぐさまデランテロをベンチに下げてしまうというような、見栄もへったくれもないところも素晴らしい。我々は世に知れたビッグチームなどという、そんな誇りを捨ててしまっているところも微笑ましいし、勝利している後半ともなると、ボールボーイを下げてしまい時間稼ぎを平然としてしまう。これまで20年以上レアル・マドリというチームを見てきたが、まだまだ新しい発見というのはあるものだ。

だが、果たしてカンプノウクラシコの時のようなカウンタアタック作戦を、彼らの最大の武器である引きこもり後→カウンタアタックという作戦を、地元ベルナベウでのクラシコでやる根性があるのかどうか、それは大いに疑問だ。もし、バルサ相手の試合でそういう弱小クラブ根性で戦ってきたとしたら、さすがの8万メレンゲ族にもブーイングの嵐が起こるだろうし、かといって、まともに戦ってきたら大敗するだろうし、これは彼らにとってとてつもなく困った問題となる。と、ここまで彼らの心配をしてあげる必要もないだろう。“常識的”に考えれば、彼らがどのような戦いを挑んでこようが、まだバルサ戦が残っていたことを心の底から後悔することになるだろう。したがって、9ポイント差でベルナベウクラシコが訪れたとしたら、バルセロニスタの夢が実現することになるのでありました。捕らぬタヌキの皮算用にして、非の打ち所もない鋭い論理。

ペップバルサのアイデアはこれまでの試合を見れば明らかだ。セビージャ、バレンシアと続くリーガ決戦と、チャンピオンズ・チェルシー戦、そしてクラシコへと続く道は、すべてベストメンバーで戦うのだろう。ペップバルサのベストメンバー、それはヘタフェ戦でスタメン出場した11人に、アビダル、ヤヤ、ケイタ、あるいはボージャンを加えたあたりであり、彼らの後方部隊としてカセレス、グジョンセン、シルビーニョ組。もちろん、ピントとフレブは国王杯用だ。

平日水曜日22日22時セビージャ戦。帰宅するのは翌日となる試合ながら、そしてテレビ中継という誘われたくなるものがありながら、やはりこの試合は観戦しないといけない。これまで見てきたバルサの歴史の中にあっても最高の瞬間を迎えているバルサとその選手たち、彼らと同じ空気を味わいながら、一緒に楽しまない方はない。ワクワク水曜日にドキドキ今週末、そして手に汗を握る来週火曜日と、大騒ぎの来週末。よし、これでOK。

※日曜日の夕方8時頃、バルセロナのメイン通りグラン・ビアにクラクションを鳴らす多くの車が走り回っていた。このうるさい連中はペリーコ共だ。まるで第二次世界大戦に勝利したかのように、モンジュイクでのラーシング戦での勝利を祝っている連中。この騒ぎで2年前のカンプノウデルビー戦を思い出した。タムードのゴールで引き分け試合となっただけで、こんな感じで騒ぎまくっていたペリーコ。まったく、迷惑な連中だ。彼らに望むものは、決して二部落ちでも二部B落ちでもなく、頼むからこの世から消えてくれ、ということだと再確認。


ゴールデンウイーク
(09/04/18)

今週末のヘタフェ戦から5月6日のチェルシー戦までの19日間で、今シーズンのバルサの将来を決める重要な試合が6つ用意されている。その中でも、バルセロニスタにとって間違いなく今シーズン最大のハイライト期間と呼べるものが5月の到来と共に始まる。5月1日、ベルリンで開催されるユーロバスケ・ファイナルフォー準決勝に出場するバルサバスケチーム、そしてその翌日5月2日(未決定ながら、バルサ側はこの日を希望しマドリ側は3日開催を要請している)は、ペップバルサがリーグ戦2位レアル・マドリ相手のクラシコを戦い、3日はバスケチームのユーロ制覇をかけた決勝戦(まあ、準決勝に勝てばの話だけど・・・)となる。そして4日にはロンドンへとペップバルサチームは飛んでいき、6日のチャンピオンズ準決勝チェルシー戦に備える。泣いても笑っても6日間の密集したバルセロニスタ・ゴールデンウイーク。忙しい、忙しい、バルセロニスタ。フットボールもバスケも、週イチだけの楽しみしかないメレンゲじゃなくて良かったと、心の底から思わせる期間がやってくる。

5月1日ユーロバスケファイナルフォー準決勝。相手は現役チャンピオンのCSKAモスクー。これまでの長いバルサバスケ史においても、ユーロ制覇したのはわずか1回だけ。もちろん難しい試合となることは間違いないものの、フットボールチームと同じようにこの試合に至るまでのスケジュールも密集している。4月18日土曜日にはレアル・マドリ相手のリーグ戦、そして23日にはリーグ戦首位を走るタウ相手のリーグ戦。そして26日のカハソル相手のリーグ戦を終了してから初めてファイナルフォーへの準備が始まる。バスケチームにとっては18日のクラシコをスタートとして、5月に入ってからのファイナルフォー終了までの約3週間が、今シーズンすべてをかけた戦いの期間となっている。

いっぽう、すでにエベレストの入り口を通りすぎようとしてるペップバルサは、ゴールデンウイークに至るまでの厳しい急坂を登り詰めなければならない。バスケチームが18日土曜日にマドリッドに馳せ参じてクラシコを戦うこの日、ペップバルサもマドリッドに向かいヘタフェとの試合を戦う。22日のセビージャ戦や、27日バレンシア戦と比較すれば、表面的には比較的楽な戦いと予想されがちだが、個人的には最も難しい試合となりそうな予感がする。だが、勝利しなければならないペップバルサ。その後のセビージャ戦、バレンシア戦と共にこの試合に勝利しさえすれば、すでに長い間リーグ制覇に片足を突っ込んでいるペップバルサが、その制覇に向けて両足をしっかりと突っ込むことが達成される重要な三連戦だ。

この超過密スケジュールに備えて、ペップバルサの準備はすでに万端だ。3日に1回の試合をこなすためのエネルギー補充はすでに済ませている。4月に入ってからの練習内容と言えば、体力をつけるものではなく、フィジカル調整だけのものと変化してきている。バルデスやアルベス、そしてチャビやメッシー、イニエスタたちは、残りのすべての試合にスタメンで登場してくるだろう。選手たちの疲労なんぞを心配する必要はどこにもないが、怖いのは負傷だ。だが、その不幸な出来事は練習中にも訪れてくるし、スポーツ選手には避けようのないものでもある。しかも、この過密スケジュールのおかげで、選手たちが集中力を絶やす可能性も少ない。週イチの、それも退屈な試合が毎週続く首都チームの選手のように、カード制裁で出場できないからといって、試合観戦を取りやめ闘牛場に行ってしまうというスキャンダルな事件もバルサでは起きようがない。いずれにしても、この最終期間における過密スケジュールは決してマイナス要素などではなく、神様がくれた素晴らしいプレゼントだ。

まずはヘタフェ戦。もとバルサ選手ビクトル・ムニョス監督対もと球拾いペップ・グアルディオラ監督(写真上)の対決。ペップバルサがこの試合に勝利すると、今シーズン一部リーグに所属しているチームにすべて勝利したことを意味する。そんなことはともかく、バルサゴールデンウイークに突入する前の雰囲気が更に良くなるか、あるいは若干気分が重たくなるかの重要な試合。ペップバルサ超ベストメンバーで戦うべし!

27人、今と昔


2年に一度の対戦
(09/04/17)

ルサ対チェルシー、チェルシー対バルサ。ここ10年で5回目の対戦。チェルシーはラニエリ、モウリーニョ、バルサはバンガール、ライカーがそれぞれ指揮をとってきているが、今回はグース・ヒディングとペップ・グアルディオラの戦いだ。それぞれのチームに就任して半年弱と1年弱の監督同士の戦い。62歳のベテラン監督と、38歳の若々しい監督との対決。そしてUEFAランキング2番目と3番目のクラブ同士の対決。

2年に一度の対戦

2003年夏、ジョアン・ラポルタがバルサの会長に就任。スポーツディレクターに選ばれたチキ・ベギリスタインと古株ヨハン・クライフが、第一番目の監督候補にあげたのがグース・ヒディングだった。2番目がクーマンであり、3番目がライカーという順番になっていた。1番目候補は年俸が高すぎたことが原因で、そして2番目は在籍クラブが移籍料を要求したことでオジャンとなり、移籍料なし年俸限りなく安しのライカーが監督としてやって来てくれた。この3人の共通事項はみなオランダ人であり、名の知れた元フットボール選手であり、当然ながらオランダフットボールスクールの血を引いている人たちだった。

クーマンがプレーするPSVで監督を務め、コパ・デ・ヨーロッパのタイトルを獲得。オランダではもちろん、韓国やオーストラリアでも、すでに神話的な存在ともなっているヒディングと、昨シーズンに三部リーグをスタートとして監督業の世界に入ったペップであるから、監督経験という意味では比較にもならない。だが、それでも、このエリート世界に登場して2、3年しかたっていないメッシーが、10年近くのプレー経験を持つツーリスト選手に劣るということもないのだ。

二人ともクライフの強い影響を持つ人物。だが、モウリーニョと同じように、常にスポットライトを浴びることを良しとする監督タイプではない。
「グラウンドを走り回る選手たちが素晴らしい仕事をして初めて、彼らの指揮をとる監督が素晴らしいものとなる。」
つい先日こう語っていたペップ。このコメントはどこかで聞いたことがあると思っていたが、バレンシア監督時代のヒディングが語ったのと同じものだったことを思い出した。メスタジャでおこなわれた試合で、ナチの旗がたなびいているのを見たヒディングが、あれを取り除かない限り試合はおこなわない、と試合前に語ったという逸話を持つ監督だが、ベニテスが監督を務めていたバレンシアチームより、個人的にはヒディングバレンシアの方が面白いチームだったという印象を持ち続けている。

「バルサというクラブの持つフィロソフィーが気に入っている。それも今始まったわけではなく、もう二昔以上前から同じフィロソフィーを持ち続けて戦っているクラブなんて、この世界にそうあるわけじゃない。しかも常に魅力的な選手たちがプレーしているじゃないか。シーズンが終わりに近づいているこの時期に、今シーズン最高のワクワクする試合となるのは間違いないだろう。ノーゴールで終わるような退屈な試合とはならないことだけは保証するよ。」
リバプールをやっつけ、バルサとの対戦が決まった瞬間にこう語るヒディング。モウリーニョ監督時代のようなバルサ・チェルシー戦前のピリピリとした情景(まあ、これも決して嫌いじゃなかったけれど)は今回はないだろう。挑発発言などはなく、お互いを褒め称える発言が続く試合前となるに違いない。実に楽しみなチェルシー戦。だが、それはまだ2週間先のこと。その前に、ヘタフェ戦、セビージャ戦、バレンシア戦という美味しい料理が待っている。

※バイエルン・バルサ戦のあとに、違うチャンネルでやっていたスタンフォード・ブリッジでの録画中継試合をゴロゴロしながら観戦。世の中では、何やらバルデスなんぞより圧倒的に優れているという二人のポルテロが両チームでプレーしていた。もしバルデスが、最優秀ポルテロ五本指に入ると聞いたことがあるチェック選手のドジプレーをやったとしたら、カンプノウでは怒濤のようなブーイングが沸き上がっていただろう。もしバルデスが、スペイン代表ポルテロのレイナ選手のやったような、かつてスビサレッタがムンディアルでやったような“自らボールを入れちゃう”プレーをやったとしたら、カンプノウでは暴動が起きていたかも知れない。


アリアンス・アレーナ
(09/04/16)

チャンピオンズ準々決勝の対戦相手がバイエルンと決まった時に、第二戦となるアリアンス・アレーナでの試合を、メッシーやアンリがスタメンで出場しなくてもすむ試合となることを、いったい誰が予想しただろうか。カンプノウでの試合で観衆の拍手を浴びながら、マルケスが3枚目のイエローカードを誘うことができるなんて、いったい誰が予想しただろうか。まして、この試合を前にして、バイエルン監督クリンスマンが次のように語るなんて、誰も予想できたもんじゃない。
「我々がこの試合で4点差をひっくり返すというような、非現実的なことを言うつもりはない。それはどう考えても不可能なことだからだ。我々が戦う相手は現時点で最も優れたチームであり、とても4点というハンディをひっくり返せる相手ではない。我々の目的はこの試合に勝利すること、己のチームに誇りを持ってこの大会から退くこと、残念ながらそれしかない。」

コパ・デ・ヨーロッパ、あるいはチャンピオンズと名を変えてからも、4−0というスコアを逆転したケースは一つもないという。したがって、クリンスマンの弱気とも思える発言は当然なのかも知れない。

それでもペップ監督は慎重だ。かつてゲリー・リネッカーが、11人対11人の試合では最後にドイツのチームが必ず勝利すると、ドイツ人選手の持つその勝利魂を評価する有名なコメントをしたことがあるが、ペップもまたそのことを忘れてはいないようだ。そして、このミュンヘンでの試合を、クライフ時代のカイセルローテンでの試合に例えている。

カンプノウで2−0で勝利し、余裕綽々という感じでドイツに向かったクライフチーム。
「コパ・デ・ヨーロッパの大会で我々に3点を入れたチームはいない。」
と余裕たっぷりに語るクライフの言葉が、チームそのものの雰囲気を示していたと言える。つまり、消化試合に近い気持ちでドイツにわたったのだ。だが、試合終了間際までクライフバルサは3−0というスコアで負けてしまっていた。このままではコパ・デ・ヨーロッパから敗退するスコア。だが後半44分、クーマンからのフリーキックをバケロが頭で合わせて奇跡のゴールを生み、どうにかこうにか勝ち抜くことができた歴史的な試合。あのゴールシーンは今でも鮮明に脳裏に焼き付いている、まったくもって強烈な試合だった。

だが、今回は4点もハンディをつけている試合。それにもかかわらず、ペップ監督はいつもとたいして変わらないスタメンを用意して戦っている。誰もが予想しなかった(と、少なくとも個人的にはそう思っていた)メッシーまでスタメンで出場させている。しかも90分間の休みナシ。それならなにゆえレクレ戦に90分間もプレーさせたのか、そこらへんが理解できないところだが、誰よりもチームのことを知り、プロ中のプロ監督であるペップの考えることだから、それはそれなりに尊重しよう。このメッシー起用法から考えられることは、これからすべての試合に彼はスタメンで出場する可能性があるということだろう。週2回の試合出場が可能と判断されたのかも知れない。今週末のヘタフェ戦、来週のセビージャ、バレンシア戦、そして再来週のチェルシー、マドリ戦、少なくてもここまではすべての試合にスタメンで出場してくるだろう。もっとも、ここ最近の彼のプレースタイルを見ている限り、90分の練習も試合も同じような感じで“力を入れるところ、力を抜くところ”をしっかりと理解しているようで、それほど疲労を誘うような感じではない。まあ、適当に頑張りなさい。

コパ・デ・ヨーロッパという名からチャンピオンズと名称変更されてから、カサ→フエラという順番の試合を初めて勝ち抜いたバルサ。次の準決勝もその順番となっているが、バイエルン戦と同じように、再びカンプノウで勝負を決めてしまいましょう。チェルシー戦、ふぅ〜、楽しみだなあ。

※この試合前にラジオを聞いていたら、チャンピオンズのカード制裁のルールに関して2つの意見が出ていた。一つは、たとえ三枚目のカードをもらっても決勝戦には出場できるというものであり、もう一つは、たとえ決勝戦であってもそれはダメという意見。この人たち、決して我々みたいなシロウトではなく、一丁前のジャーナリストでありプロなのだから、それくらいのことは知っていなければいけない立場にある。エスポーツ紙やエル・ムンド・デポルティーボ紙というカタルーニャのオトボケメディアも、先週あたりは“出場可能説”を発表していたが、昨日あたりから反対のことを言いだしている。そして最終的に、クラブが公式発表までして、UEFAルールには変更がないとのこと。つまり三枚もらったら決勝戦だろうが何だろうがダメという結論に達した。ディスイズスペイン、カタロニアイズスペインアズウェル。


お褒めの言葉
(09/04/14)

THE GUARDIAN (イギリスメディア)
バイエルンをスペクタクルなフットボールで粉砕したバルサを見る限り、ペップバルサは現代フットボールにおいて最も魅力的なチームと言ってもおおげさではないだろう。

DAILY MAIL (イギリスメディア)
チャンピオンズの戦いにおいて、バルサが最も危険なチームであるとしたアレックス・ファーガソンの予言が正しかったことが証明された。

LA GAZZETTA DELLO SPORT (イタリアメディア)
1人1人の選手の高度なテクニック、チーム総体が持つスピード、勝利に対する飽くなき渇望、そしてプレーする方も見る方もフットボールの楽しさに触れさせてくれる、それがスーパーバルサのフットボールだ。

L' EQUIPE (フランスメディア)
砂漠の中で必死になって水たまりを探しているようなリベリーが、ついに目的を達することができたのは試合後のことだった。親友のアンリと肩を組みながら、まるですでにバルサの選手になっているかのような風景だった。

DIARIO OLE (アルゼンチンメディア)
どこのクラブのインチャであろうと、いかにチームカラーを体に染みこませていようと、リオネル・メッシーの繰り広げるバルサのフットボールを否定することはできないだろう。

ALFREDO RELANO(マドリインチャ・アス紙編集長)
かつてみたことのない高度な内容のフットボール、ひたすら芸術的なフットボール、それがペップ監督がオーケストラの指揮者となって繰り広げるフットボールだ。

FRANZ BECKENBAUER(元皇帝・現バイエルン会長)
これまでのバイエルンの長い歴史において、この試合の前半ほど恐怖に包まれた時間を過ごしたことはないだろう。

KARL HEINZ-RUMMENIGGE(元クラック・現バイエルン副会長)
悲しみのためか、怒りのためか、あるいは心の痛みのためか、ウド・ラテックが涙を流していたのを私は見てしまった。バイエルンにとって歴史上最も悲しい試合だと言って良い。

FRANCK RIBERY(現バイエルン選手・今夏バルサ選手)
バルサは素晴らしいチームだったし、個人的には1人のプロ選手として羨ましささえ感じている。アンリが繰り返し語っていたバルサの素晴らしさが、この一試合で実感することができた。来シーズンの自分?そのうちわかるさ。

LAURENT BLANC(元バルサ選手・現ブルデオス監督)
バルサの繰り広げるフットボールは、このスポーツを愛する人々に対するプレゼント。前半の45分だけを見たら、まるでプレステーションの世界だった。

4月8日カンプノウ・バイエルン戦翌日の各国各紙、そして関係者によるバルサ絶賛オンパレード。4−0という試合結果もさることながら、バルサの繰り広げたフットボールの内容がこの絶賛を生んだのだろう。何と言っても相手はバイエルン、腐ってもバイエルン相手の試合。当然のお褒め言葉として受けとめておこう。そしてこれまでのチャンピオンズの歴史において、4点差をひっくり返したチームはいない。だが、それでも慎重なペップ監督はほぼすべての選手をバイエルンに連れて行っている。果たして、この試合後の各紙のコメントはいかなるものとなりましょうか。

※イエローカードが3枚貯まると一試合の出場停止。一度3枚貯まった選手は、次から2枚目で一試合の出場停止処分。バイエルン戦で不当なカードを頂いたメッシーにとってはこれが最初のカードであり、あと2枚もらうと出場停止処分となる。だが、バイエルン戦の次の日の新聞記事によると、準決勝2試合目で例えカードが3枚目となっても決勝戦には出場できるということだ。赤紙一発退場というケース以外は、それまでの累積カードは精算されることになるからだ。もしそうなら、なにゆえバルサはUEFAに異議申し立てをしたのか。間違った選手に出されたカード以外、これまで取り消しということをしたことがないUEFAに、なにゆえバルサは異議申し立てをしたのか。それはペップ監督に対するカード制裁処置を、最低の1試合だけにとどめるためのプレッシャーだろう。審判に抗議して退場となったライカーが2試合の停止処分を喰らっていたが、ペップに対しても同じように2試合の停止と予想されていた。だが、メッシーに対する不当なカードを無効にすることができないUEFAは、ペップに対しては1試合だけの停止処分としている。バルサのフットボールは、相手に対するプレッシャーが重要だ。


バルサ・セマーナ・サンタ
(09/04/10)

シャクターとかブレーメン、あるいはレバクーセンとかいうドイツのチームがここ最近カンプノウに来ているが、バイエルン・ミュンヘンは久しぶりだ。そう、実に久しぶりのバイエルン戦ながら、最後に見たのがいつだったのかも覚えていないし、どんな選手がいたのかも記憶から欠けている。一緒に観戦に行った人の記憶によれば、バルサ百周年の年であり、最初のグループ戦で対戦したという。そうか、そのことはよく覚えている。ヨーロッパの大会には半端なく弱かったバンガールバルサが、グループ戦でバイエルンとマンチェスターと同じ組となり、そのグループ戦でサヨナラしたシーズンだ。最終的に、同じ組だったマンチェスターとバイエルンが再びカンプノウに戻ってきて決勝戦を戦い、バイエルンがあの劇的な敗戦をしたシーズン。

カーンとかクフォーやエッフェンベルグ、リサラスあたりが出ていたらしいが、フムフム、そうでありましたか。だが、そう言われてみても、試合の内容はまったく覚えていない。なぜだか知らないが、それよりも何年か前に見たジエゲとかスコール、マタウス、パペン、あるいはクリスマンなどが出ていた試合を見たときの方が、なんとなくではあるもののまだ覚えている。たぶんUEFAカップあたりの試合だろう。あの時のバイエルンは良いチームだった。

そのクリンスマンが監督をしている現在のバイエルンチーム。試合前日にカンプノウでおこなわれた練習風景をボケ〜と見ていても、あまり知っている選手がいない。とにかくカンプノウにやって来ないチームにかんしては無知そのものであります。何やら過去に見たことのある色の黒い選手がいたが、あれはゼ・ロベルトではないかいな。レアル・マドリを出てレバクーセンあたりでプレーしているのを見た記憶があるが、いや、まだお元気でしたか。

月曜日から天気が崩れ、試合前日火曜日は一日中雨のバルセロナ。それでも赤いTシャツやジャンパーを着込んだバイエルンファンが、街中をウロウロしている。飲み物はもちろんでかいジョッキでのビール。イングランドファンと同じように、ビールしか飲み物はないと思っている連中だ。イングランドやドイツチームが来ると、ランブラス通りにあるバルでは、試合前日と当日で普段の日の5倍ぐらいビール需要が跳ね上がると言われているが、この二日間も例外とはならないだろう。雨の多い地方からやって来た彼らに、バルセロナのしみったれた雨など雨の内に入らない。と言うことで、雨に濡れながらバルのテラスでビールを楽しむバイエルンファン、ご立派です。

メッシー対ラーム、ピケ対ルカ・トニ、チャビ対ボメル、アルベス対リベリ、カンプノウに向かう途中でラジオを聞いていたら、そういう直接対決が楽しみな試合だという。だが、メッシーのお相手となるはずだったラームという選手は、負傷のため出場しなくなったとも言うじゃないか。いずれにしても、亀の子作戦を敷いてくる相手とのハンドボールのような試合展開となることを予想。気をつけなければならないのは、リベリにボールを送ってのカウンタアタックと、セットプレーでの電信柱ルカ・トニのヘディング。これまた誰でも予想できること。

だが、そんな予想とは裏腹に、亀の子作戦でもなく、かといって攻撃してくるという感じでもなかった前半戦。まったくもってのバルサペースで、相手がどんな作戦で臨んでこようがひたすら我慢するしかないという雰囲気の試合展開が続く。これまで長い間バルサを見てきたが、こんな素晴らしいバルサは見たことがない。固いデフェンサ陣、ロンドの天才たちが集まるメディオカンポ、そしてどん欲にゴールを狙うだけではなく、守備にも顔を出すデランテロたち。素晴らしいの一言。そして、こういうバルサをこれから8週間にわたって楽しめるバルセロニスタは幸せな民族だ。

雨にもかかわらず、9万3千人の観客で埋まったカンプノウ。スペインはセマーナ・サンタで木曜日、金曜日、土曜日、日曜日とお休み。カタルーニャ州は金曜日、土曜日、日曜日、そして月曜日とお休み。だが、バルサの選手たちは止まらない。木曜日は地元パラウでタウ相手の準決勝5戦目を戦うバルサバスケ。もしこれに勝利すれば、ベルリンでおこなわれるユーロ・ファイナルフォー進出が決まる。バモス、ナバロ!

※スペインのチーム(?)がチャンピオンズの試合にスペクタクルに勝利したというのに、心の狭い中央メディアの翌日の見出し。


バン・ボメル
(09/04/08)

わずかひとシーズンしかバルサのユニを着ていないバン・ボメル。それでもどういうわけか、何気なく愛着を感じる選手である。彼が望んだほどの出場機会が得られなかったこともあり、1年間だけバルセロナに住んだあと、ミュンヘンへと引っ越していってしまった。そして今ではバイエルンの重要な選手となり、8日のチャンピオンズ戦でカンプノウに戻ってくる。繰り返すことになるが、たった1年しかバルサに在籍していない選手。だが、それでも、彼に対するささやかな拍手がカンプノウ観客席から聞こえてきそうな気がする。ファンにとって、選手は活躍してナンボの存在ながら、やはり人柄も大事だ。

ミュンヘンでの生活はどうか?

非常に満足している。ミュンヘンは大きな街だし、バイエルンも偉大なクラブ。自分だけではなく、家族みんなが快適に過ごし満足している。昨シーズンはタイトルもとったし、今シーズンはチャンピオンズを征するチャンスも残っているし、フットボール的なことでも非常にうまくいっている。

そうは言うものの、例えば、先日の最下位チーム相手の試合に四苦八苦して勝利していたようだし、快調さを保っているバルサに勝てると思うか?

マラガ戦を見たけれど、別に驚くことはなかった。なぜなら、バルサが快調に飛ばしているのは前から知っていたからね。確かに我々の試合はひどかったさ。あんな試合をしていたら、間違いなくバルサには勝てない。でも、あの試合だけで我々を評価してもらっては困る。これまで、バイエルンらしい良い内容の試合もずいぶんとやってきている。

抽選でバルサと対戦することが決まった時の仲間の反応は?

大騒ぎして喜ぶわけがないだろう?何たって、今の段階で世界一のクラブと対戦しなければならなくなったんだから。バルサと当たるぐらいなら、我々はマンチェスターと対戦したかったさ。

バルサに対して恐怖感を持っているということか?

恐怖感というのはないけれど、彼らに対するリスペクトは持っているさ。ドイツでは毎週のようにバルサの試合がテレビ中継されているから、当然ながら彼らがどんな戦いをしているかすべての人が知っている。正直言って、彼らは他のクラブとは別次元の内容で今日まで来ていると思う。

あなたがいた2006年のバルサより優れている?

あえて同じぐらいだと言っておこう。両方とも素晴らしいチームであることだけは間違いない。自分がいたときには、ロナルディーニョという世界一の選手がいたし、今のバルサにはメッシーという、やはり世界一の選手がいる。まったく21歳という若さで、あれだけのプレーができるというのは信じられないことだよ。しかもバルサは彼だけじゃない。限りなくプレッシャーをかけ、どこまで続くかわからないほどのパスの連続で、スペクタクルなフットボールを展開するチームそのものが凄いと思う。フットボールファンであるならば、バルサの試合を毎週楽しみにしているだろうね。

どうやってバルサと戦うつもりか?

難しいさ。とても難しい。もし参考になるものがあるとすれば、2年前にバルサと対戦したときのリバプールがとった作戦だろうね。90分間途切れることのない集中力で限りなくバルサの選手にプレッシャーをかけ、彼らに不自由な感じでプレーさせるように追い込むこと。もちろん、それは簡単なことじゃない。メッシーやエトー、そしてアンリというずば抜けたデランテロの他にも、チャビとイニエスタという素晴らしいセントロカンピスタがいる。個人的には、この二人が機能しないようにできる限りのプレッシャーがかけられるかどうか、それが我々にとってのキーポイントだと思っている。

カンプノウに戻ってくるのは久しぶりのことになるが?

グラウンド内でのこととは別に、バルセロナへ戻るこの日は、自分を幸せな気分にさせてくれるだろうし、特別の日となるだろうと思う。かつての仲間、例えば“タハマタ”イバルスやチェマ・コルベラ、あるいはガブリ・ガランやカルロス・ナバルといったスタッフや、プジやチャビ、エトーやマルケスに会えるじゃないか。本当に楽しみだ。

グアルディオラには?

彼は自分にとって特別な存在。自分にとって常にアイドル的な存在だったし、彼のプレースタイルは自分の鏡と言って良い。幸運にも自分がバルサでプレーしているときに、彼とプライベートな食事をする機会に恵まれたんだ。一緒に海岸に行ってね、食事したんだ。子供みたいと思われるかも知れないが、あの日のことは一生忘れないだろうと思う。我々の住む世界によくあるチャラチャラしたところがまったくなく、そこらへんを歩いているごく普通の人とまったく変わらない感じだった。フットボールにかんする知識も非常に豊富だし、その世界を離れたところでのインテリジェンスも伝わってきた。彼が監督に就任したと聞いてメールを送ったんだが、すぐに返事をくれたんだ。一度で良いから彼の指揮のもとでプレーしてみたいな。

バルサを離れたことを後悔している?

いやいや、それはない。これまでのプロ生活をとおして自分に課していた最低目標は、常にグラウンドでプレーし続けること。バイエルンが自分にオファーをくれたときにその旨をライカーに告げたんだ。なぜなら自分が2年目となるシーズンで、監督がどれくらい自分を信頼しているか、それを知りたかったからね。そのとき、ライカーはプレーチャンスが多いという保証はくれなかった。だから、それを保証してくれたバイエルンに移籍したことは後悔していない。そしてもちろんバルサには感謝しているさ。たった1年だけだったけれど、バルサのユニフォームを着てプレーすることができたこと。これは自分にとって何にも代え難いことなんだ。いや、自分だけじゃなく多くの選手にとってそうだろうと思う。チームとしてしっかりとした戦いのフィロソフィーを持っているだけじゃなく、それが攻撃的なフットボールを目指しているものなんだから、フットボール選手には限りなく魅力的なチームだ。カンプノウ、バルセロナの街、人々、温暖な気候、バルサの魅力を言ったらきりがない。

リベリーにもその魅力を話してあげたか?

いや、話していないし、これからも話さないさ。彼はバイエルンに必要な選手だからね。ハッハッハ。

最後に。バルサとの対戦ではセカンドラウンドを地元で戦えるメリットがあなた方にあるが?

それはそうだが、初戦のカンプノウで我々が生き延びることができて、初めてメリットとなり得ることだろう?もし3−0とか4−0で負けてしまったら、メリットもクソもないさ。だから、0−1か0−2ぐらいのスコアで我々が勝利してミュンヘンに帰ることができたら最高だね。いやいや、これは冗談。引き分けで満足さ。

エル・ムンド・デポルティーボ紙より抜粋。

●好むと好まざるとに関わらず、こうなるであろうスタメン


4月、エベレストへ!
(09/04/04)

シーズン開始当初に多くのバルセロニスタが望むことの一つに、春の到来が近い4月が訪れてきたとき、バルサがすべての戦いに生き残り続けている、ということがある。チャンピオンズ準決勝進出決定、国王杯決勝進出決定、そしてリーガ制覇に大いなる可能性を臭わせていること、それが“すべての戦いに生き続けている”ことを意味する。そしてその4月がやって来た今、バルセロニスタが抱いていたその夢が現実のものとなっている。週に1回しか試合がなく、しかもつまらない試合ばかりを見せられているアチラのファンに比べたら、そう、バルセロニスタは何と幸せなことだろう。

もし、予定どおりバイエルンを退けることができたら、そしてそれはじゅうぶん可能なことだと思うが、ペップバルサは6週間で13試合を戦うことになる。単純計算で3.2日に1試合をこなすスケジュール。しかもすべてが重要な試合ときている。かつて、セビージャ、バレンシア、シャクター、マドリ、ビジャレアル相手に戦った昨年の11月の末から12月の中旬までの期間を、ツールドフランスの厳しい山越えに例えて“トゥールマレ”と呼ぶメディアがあったが、この4月から5月にかけての期間は、まさにエベレスト級のものと言える。そしてその厳しい戦いを前にして、ペップバルサは完璧な状態で目的を達成する準備が整っている。

フィジカルトレーナーの神様(パコ・セイルロ 09/02/04)のお告げを信じるとすれば、ペップバルサ選手のフィジカルは3月以降にベストのものとなっている。確かに、リヨン戦、アルメリア戦、マラガ戦では昨年末の最高潮時のような戦い方を見せてくれたから、そのお告げを疑う余地はない。多くの試合消化とエネルギー補充のための厳しい練習をこなしてきた2月には、一時的な落ち込みが見られたが、それも神様が予言されたとおりだった。やはり、神様を疑ってはいけない。そして4月に入った今、ペップバルサはこれまで以上にベストの状態にあるようだ。いかに試合スケジュールが込み入っていようが、選手たちに疲労はない、と信じよう。少なくとも、見ているだけのファンには、どんなに試合が多くても疲労はやって来ない。

だが、週イチのアチラの選手たちは楽観的にこう語る。国王杯の戦いは最初から存在せず、チャンピオンズの戦いからは例年のように早く消えていき、バルサとの直接対決が残っているというハンディーに加え、そのバルサに6ポイントも離されている週イチの選手は語る。
「彼らには週2回という厳しい試合スケジュールが待っているから、選手たちの疲労は相当激しいものとなるだろう。したがって週イチというヒマなスケジュールの我々が、リーガを制覇する可能性は大いにあると思う。」
それは甘い。大甘ちゃんだ。そうはいかない!

以前触れなかったことながら、我らが神様は次のようなことも予言されていた。
「3月中旬以降の練習は、それこそ体調維持を目的としただけのものとなる。すでに残りのシーズンを70%から80%のフィジカルで戦うためのエネルギー補充は終わっているので、激しい練習はおこなわない。試合リズムを持続するための7人対7人のミニゲームなども必要ない。なぜなら週に2回試合があるからだ。つまるところ、この時期は試合そのものがフィジカルの好調さを持続するためのものとなるだろうし、それはフットボール選手にとって理想的な“練習”でもある。」

とは言え、余計な代表戦などというものに出場した選手には、当然ながら疲労が襲ってくる。試合出場したことによる疲労もさることながら、長時間の移動による疲労が襲ってくる。今シーズンこれまで5回の代表週間があったが、いわゆる“FIFAビールス”後の最初の試合成績は1勝3分1敗というパッとしない結果のペップバルサ。そして今回の最初の試合はバジャドリに飛んでのものだ。このエベレストの入り口と言ってもいいこの試合で、そしていきなり瓦礫だらけの厳しい道のりながら、頂上制覇に向けてペップバルサは快調に進んでくれるだろう。我らがクラック、ベラルーシ共和国からやって来たツーリストが、旅行疲れで出場できないという痛々しくも大きなハンディーが生まれてしまったが、そこは他の18人の選手たちがその穴を埋めてくれる。バモス、バルサ!

※まことにもって怪しげなMLS進出計画(バルサマイアミ 09/02/13)が、最後まで不透明のまま失敗の巻きに終わったラポルタ政権。この計画がおじゃんになったことにより、プレステージをアメリカでおこなうメリットが少なくなったようで、来シーズンのプレステージ先の再検討をおこなっているようだ。もともと、アメリカよりはアジアでの方が経済的には美味しいこともあるし、しかも世界的な経済危機を迎えている今、中国・日本あたりでのプレステージ計画が再浮上することは間違いない。


中央からやって来た代理人
(09/04/02)

フットボールの試合を観戦した人なら誰もが経験するように、試合観戦者の目はおのずとボールのあるところに行ってしまう。パスする選手やそれを受け取る選手、そしてドリブルで走り抜けようとする選手、あるいはそのボールを奪おうとする選手へと、観戦者の目はボールを追っかけてアッチコッチへと飛び回る。したがって、いかにポルテロへのバックパスが多いバルサの試合とは言え、バルデスにその目が行くことは非常に少ない。もちろん、テレビカメラもボールから遠く離れているバルデスの姿を撮すことは少ない。

新しく入ってきた選手がどういう動きをするのか、ボールを持っていないロナルディーニョやメッシーはいったいどこで何をしているのか、大量点で勝っていたり試合内容が退屈な試合に限って、1人の選手を追っかけて観戦することがある。そして時たま、目の前にいるバルデスは何をしているのか見てみたりする。ドリブルで相手デランテロを抜いていったり、攻撃参加することが許されない彼だから、攻撃時間が多いバルサというチームにあって、彼はいつも暇そうにしている・・・かと言うとそうではない。ペナルティエリア内で体をいろいろ動かして、いつか訪れるであろう相手のシュートに備えて準備運動している彼の姿が見られる。どこのチームのポルテロにしても同じようなことをしているのだろう。だが、彼の場合、その時間はどこのポルテロよりも長い。集中力がとぎれないようにするために、体が冷えないようにするために、彼はボールがアッチの方に行っている間でも、動き回っている。

バルサのポルテロに求められることは特殊なことが多い。足のテクニックに優れていること、デフェンサセントラル選手とのスペースが広大にあるため、三番目のセントラル選手として求められることもある。したがって出だしの判断の良さと一対一の勝負に強いことも要求される。そして相手の少ないシュートを確実に防ぐこと。3回のスーパーセーブより1回のミスが人々の脳裏に残ってしまう最後の守護神。そして彼は、肝心な場面で見事にそのミスを見せてくれる天才でもある。だが、それでも、バルデスよりペップバルサに相応しいポルテロがいるだろうか?

彼がプレーするカンプノウ、ここにも特殊な人々が集まる。チャンピオンズの試合などで、ビジター用に外国語のアナウンスがされた瞬間にブーイングする人々。ロベルト・カルロスに対して猿の鳴き声を真似してブーイングする人々。レイナだとかジョバニだとかのまだ18歳前後の若きカンテラ出身選手のミスにブーイングする人々。それにもかかわらず、クラシコへの出場を自ら放棄し、まったくもってバルセロニスタをおちょくってくれた、かつてのデコやロナルディーニョに拍手をする人々。あるいは、痛み止めを打ちながら出場し続けたリバルドのシュートミスにブーイングする人々。そして多くのスーパーセーブを忘れ、ちょっとしたミスを犯したバルデスにブーイングする人々。こういう、必要なきプレッシャーに負けていった選手は数え上げたらきりがない。バルサのポルテロはこういうつまらないことにまで戦わなければならない。だが、彼の素晴らしさの一つは、そういうプレッシャーに負けないことだ。ミスしたあとの集中力維持も半端じゃない。

そんな環境のもとでプレーしているバルデスも特殊な人物だ。この7年間で6人もの選手代理人を取っ替え引っ替えしているというマニアックな人物だ。そして、各国代表戦ばかりでバルサの試合が何にもないこの時期に、バルデスは再びミスを犯してしまった・・・と思う。最新の代理人がヒネス・カルバハルというじゃないか、それはまずいんではないかい?

多くのバルセロニスタには無関係ながら、馴染みの人物でもある。あのラウルやサルガドの代理人であり、そしてフアンデ・ラモスのそれでもある人物だ。レアル・マドリTV局の対談番組だけではなく、中央メディアがよく放映する“マドリ万歳”系の番組には必ず姿をあらわしている。フロレンティーノが去ったあとに、クラブの影の実力者として話題となった人物でもある。この代理人取っ替え引っ替えマニアック坊やは、何をトチ狂ってこんな人物を選んでしまったのだろう。

やれ、カシージャスと同じ程度の年俸を要求するだとか、4つ、5つのビッグクラブからオファーが来ているとか、クラブ側からは何の連絡もないとか、このメディア出たがり大好き代理人は、話題の少ないこの時期を狙ってすでに戦いを開始している。もっともクラブ側にまったく落ち度がなかったわけではない。安い年俸のまま、無責任にも今日まで放っておいた責任は重大だ。ここはひとつ、大岡越前様に登場してもらい、喧嘩両成敗ということでお互いに過ちを認めさせ、クラブ側はその財政が許す限りの年俸をバルデスに与え、バルデス側も無理なことを言わずそれをありがたく頂戴して一件落着・・・というわけにはいかないのだろうか。

※フィジカルトレーナーとコンビを組んでの退屈なリハビリから、大勢の仲間がいる合同練習へと戻っていたミリート。だが、それは、どうやらリハビリが終了したことを意味したわけではないらしい。つまり、合同練習以外にも彼自身でおこなうリハビリ自体はいまだに続けられている。普通は合同練習に参加してきて1か月ほどでドクター許可がおりるものだが、ミリートの場合はそうならないと、ドクター・クガット氏が語っている。このまま順調に回復が進み、再び痛みが発生しなければ、ミリートの復帰は5月の中旬から末。それも、リーグ優勝がすでに決まっての消化試合が理想的と語っている。そう、ミリートは簡単には戻ってこない。


関係者になりたいぞ!
(09/04/01)

国王杯決勝戦が開催されるバレンシア本拠地のメスタジャスタジアム収容人員は5万4000人。普段のリーグ戦の試合であるならば、ビジターの応援団が団子になってやって来てもたかが知れた人数だから、警備用スペースもたかが知れたものとなる。だが、チャンピオンズの試合となると少々事情が変わってくる。例えば、イングランドのチームなんぞがやって来れば、ビジターの応援団が多かろうが少なかろうが、酔っぱらい連中が騒ぐ可能性もあるということで警備用スペースも広くなり、収容人員が5万3000人、あるいは5万2000人とかなり少なくなる。そして国王杯の決勝戦ともなると、4000席分が警備用スペースにあてられてしまい、収容人員数が5万人と制限されてしまう。今回は特に、バスク人とカタラン人がスペイン国王の前で戦うスペイン国王杯決勝戦となっているから、警備は他の試合より厳しいものとなることが予想されるから余計だ。

と言うわけで、バルサとビルバオによって争われる国王杯決勝戦の入場券枚数は5万枚。これを単純に2で割って、バルサとビルバオに半分ずつ分配されるのが理想的ながら、現実はそうとはならいない。国王杯主催者であるスペインフットボール連盟が、1万3000枚ものチケットを持っていってしまうからだ。だが、まあ、それは仕方のないこととしよう。チャンピオンズ決勝戦でも決勝進出チームだけではなく、主催者UEFAがかなりの数のチケットを確保し、その一部をネット上で一般販売したりしている。だから、フットボール連盟が1万3000枚のチケットを要求するのも良しとしよう。だぁ〜が、許せないのは、この連中のチケットがスポンサーや関係者のみにわたり、一般販売用のチケットが一枚もないということだ。つまり、メスタジャのチケット窓口は国王杯決勝戦を前にして開かないことになる。この連盟のやり方は、少し生意気ではないだろか。スポンサーというのはわかりやすいが、関係者というものほど怪しくもわかりにくいものはない。

5万枚−1万3000枚=3万7000枚、これをバルサとビルバオで仲良く分け合い、1万8500枚がそれぞれのクラブ分担チケット数となる。そう、たったの1万8500枚しかない。しかも、このチケットがすべてソシオに行くわけでもないときている。クラブそれぞれにスポンサー企業がおり、そして関係者と名の付く人々がいるからだ。バルサ、ビルバオとも、この1万8500枚の20%、つまり3700枚がスポンサーや関係者の手へと渡されていく。

1万8500枚−3700枚=1万4800枚、この枚数がソシオ用に売り出されるものとなる。だが、バルサとビルバオではソシオに売り出されるチケット数が微妙に違っている。ビルバオは3700枚の中にペーニャ用の割り当ても含めているのに対し、バルサはスポンサーと関係者のみのチケットとなっている。したがって、ペーニャ用のチケットは1万4800枚の中に含まれており、実際にソシオに売り出されるチケット数はそれを引いた数となる。う〜ん、気にくわない。納得できない。畑で取れた野菜や果物が、中間業者をいくつか経てドンドンとマージンを取られたあげくマーケットに並べられるような感じだ。

だが、それも仕方なく良しとしよう。気にくわない納得できないながら、仕方なく良しとしよう。しかし、どうしても許せないのは、すでにこういうところでチケットが売り出されていることだ。今回は、例のサンドニ決勝戦の時とは違い、クラブ側からは旅行代理店には流さないと発表している。したがって、バルサ公式旅行代理店RACCにもチケット込みのパックは売り出されていない。それではなにゆえこういうところで売り出すことができるのか、それはスポンサーや関係者(それは理事会員だったり、選手だったり、元選手だったり、クラブ職員だったり、警備会社社員だったり、カンプノウ内お店関係者だったり、グランド整備員だったりする人々。そして彼らすべての家族だったり、彼女だったり、友人だったり、ご近所さんだったり、よく通うレストランやバルの従業員だったり、キオスコのお兄ちゃんだったりするだろう。)がらみのチケットとしか考えられない。それしかないのだよ、コーニョ!

フットボール連盟関係者1万3000人、両クラブスポンサー及び関係者合計7400人、合計2万4000人の関係者。メスタージャで観戦する40%の人々は、ソシオでも、ひょっとしたらフットボールファンでもない、単なる関係者となる。

※1年前だったか、2年前だったか、あるいは3年前だったか覚えていないが、このコーナーでリーガ予想名人リカルド・パストル氏こと通称ピトニソ・ピトと呼ばれる人物に触れたことがある。リーグ戦が残り10試合となったところでリーグ戦優勝チームやカテゴリー降格チームを予想し、ドン・バロン誌に毎シーズン掲載している。そして個人的に知るところ、少なくともこの20年間、彼の予想が外れたのは1回か2回ぐらいだったと思う。さて、今シーズンのリーグ戦制覇クラブは・・・バルサとなりました。そしてペリーコ(ちなみにこの方は自他共に認めるペリーコでもある)は、来シーズンは2部リーグ。まったくもって完璧でっす。