2008年
8月
2009年

1991年世代
(08/08/30)

メッシー、ピケ、セスク、V.バスケス、カルボなどを擁した1987年世代がかつての黄金世代だとすれば、現在のバルサカンテラ組織のそれは、この1991年世代だと言える。昨シーズンにドーバー海峡をわたったパチェコを別として、この世代の代表選手と呼んでいいのが、ガイ・アスリンとティアゴ・アルカンタラの2人。だが、彼らに関してはここでは触れない。ここで紹介する1991年世代の選手は、フベニルカテゴリーで昨シーズンプレーしている選手。そして今シーズン、多くの選手がフベニルA、あるいはルーチョバルサでプレーすることになると予想。

●ポルテロ
アレックス・サンチェス
スペインU17代表ポルテロ。ルーチョバルサに在籍するミーニョとマシップに次いで将来を期待されるポルテロでもある。今シーズンはフベニルAでの絶対スタメンとなることが予想されていたが、どうやらフベニルB残留組となりそうだ。身長がもう少し伸びること、体重がもっともっと増えることに期待したい。

●デフェンサ
マーク・バルトラ
フベニルBでは右ラテラルと共に、必要に応じてセントロカンピスタまでやっていた。デフェンサの選手として容赦ない当たりを平気ですることや、フィジカル面の強さをいかして空中戦に強いこと、攻撃参加に面白いものを持っていることなどが彼の特徴と言える。毎シーズン、順調に成長している選手なので、今シーズンはフベニルAで更なる成長を期待。

マルティン・モントヤ
昨シーズン最も成長を見せた選手の一人。フベニルBでは右ラテラルを自然なポジションとしてプレーしていたが、セントラル選手としても起用されている。彼の最大の特徴は、アルベスなみの攻撃参加スタイルにある。いったい右エストレーモ選手なのか右ラテラル選手なのか、判断がつかない試合風景によく出会うことがある。フベニルAをベースとして、ルーチョバルサでのプレーも数多く見られるシーズンとなるような気がする。スペインU17代表選手。

カルラス・プラーナス
スペインU17代表ながら、昨シーズンは例年より出番が少なかった。1つ年上のクリスティアン・バージェがフベニルB居残り組となったため、同じ左ラテラルというポジションであるプラーナスは控えとなる試合が多かったように思える。今シーズンはフベニルBに残り、絶対スタメン選手の一人となるのかも知れない。

カルロス・テロン
第二のプジョーと期待されている選手だが、昨シーズンは少し伸び悩んでしまったようだ。フィジカル面での成長が見られないのが少々問題となっているようだが、それでも才能的には素晴らしいものをもっているセントラル選手。今シーズンはフベニルAをベースとして、シーズン終了近くには、ルーチョバルサに姿を見せてくれることを期待。フランスU18代表選手。

●セントロカンピスタ
デニス・クロール
何年か前にレバクーゼンから鳴り物入りで移籍してきたセントロカンピスタ。だが昨シーズンは、フベニルBでほとんど出番がないままシーズンを終了している。その原因は長期にわたる負傷が最大のものだが、ドイツ人のわりにはフィジカル的に成長を見せていないことも、出番が少なくなってしまった原因の一つだろう。プレステージ中にはバルサを去る可能性もあったようだが、今のところプレステージに参加してきている。残るとしてもフベニルB残留ということになりそう。

マルティ・リベロラ
カデッテAでプレーした一昨年、セントロカンピスタというポジションながら、パチェコやロチーナと同じぐらいのゴールを決めていた。だが、フベニルBに上がってきた昨シーズンは、長期負傷でほぼ出番がないままシーズンを終了している。カンテラ中のカンテラ選手としてブラウグラーナの血を染みこませた選手だが、残念ながら今シーズンは再びフベニルBを繰り返すことになるだろう。

オリオル・ロメウ
この年代では昨シーズン最も成長を遂げた選手の一人と言える。自然なポジションは守備的なピボッテだが、状況に応じてはセントラルもやらされていたし、時にはインテリオール選手ともなっていた。フィジカルの強さとインテリジェンスを武器とする選手だが、プレステージではルーチョバルサに招集されている。フベニルAとルーチョバルサを行ったり来たりするシーズンになることに期待。スペインU17代表。

●デランテロ
マヌ・トリゲロス
フベニルBに昨シーズンやって来たデランテロ選手。シーズン開始当初はロチーナが絶対のスタメン選手となっていたため、控え選手として甘んじていた。しかし、そのロチーナがフベニルAに昇進してからも、スタメンとして出場することはほとんどなかった。だが、それでも試合終了間際には必ずグランドに姿を見せていた選手で、しかも少ない出場時間の割にはゴールを決めていた。今シーズンは再びフベニルBでプレーすることになるだろう。

キメ
左エストレーモ選手で多くの試合にスタメン出場している。運動量の多いデランテロだが、残念ながらゴール運には恵まれないシーズンをおくっている。今シーズンはフベニルAに昇進しての活躍が期待されたが、ダムにレンタル移籍させられている。

ルイス・ロペス
ダムから昨シーズンやって来た左右エストレーモ選手ながら、まったくと言っていいほど出場しているのを見たことがない。キメ、カルモナ、ホセ・ルイスの影に隠れて、ベンチ生活、あるいは招集さえされなかったことが多かった。今シーズンはバルサに残るとしてもフベニルBを繰り返すことになるだろうが、クラブを去る可能性も大だろう。

ルベン・ロチーナ
エストレーモというポジションからデランテロセントロに移されて大成功を遂げている選手。それまでトップを務めていたパチェコがイングランドのクラブに移籍したことで、最も幸運をつかんだ選手だ。昨シーズン後半からはフベニルAに昇格し、スペインU17代表としても大活躍している。ルーチョバルサのプレステージでの試合では絶対の9番選手としてスタメン出場している。ガイ、ティアゴに続く、期待のキラキラ星選手。

クリスティアン・テージョ
一昨年まではこの年代のチームにあっては絶対の9番選手だったが、パチェコの台頭で、昨シーズンは1年限りという条件でダムにレンタルされていた。シーズンが終了してからの各地大会ではバルサに戻ってきてプレーし、プレステージにも参加してきていたが、理由はわからないもののエスパニョールに移籍していっている。気に入っていた選手だけに、個人的には大不満。


1990年世代
(08/08/23)

1989年世代にとって、昨シーズンがフベニル生活最後のものとなったように、今シーズンは1990年世代の若者がこのカテゴリー最後となる。すべての選手がすでにフベニルB、あるいはフベニルAで活躍してきた選手となっているが、ここでは1990年世代代表選手と呼んでいいヤゴとボージャンにかんしては触れない。(カッコ内は昨シーズン所属チーム)

●ポルテロ
ディエゴ・ゴメス(フベニルB)
アレックスという強烈なライバルの影になっているものの、決して悪いポルテロではない。フベニルBチーム2年目となった昨シーズンは、シーズン途中で大怪我をするという不運に見舞われ、今シーズンも同じカテゴリーを繰り返すかも知れない。フベニルAに昇格としたとしても、再びアレックスの控えとなってしまうだろう。

マーク・マルティネス(フベニルB)
ディエゴが負傷したことにより、急遽レンタル先のコルネヤから昨シーズン途中に戻されたポルテロ。数試合だけを見た感想ながら、なかなか良いポルテロだ。

●デフェンサ
アレックス・ボラーニョス(フベニルA)
フベニルA所属でありながら、すでに何試合かバルサBでプレーするチャンスを得た昨シーズン。今シーズンはいきなりルーチョバルサでスタートかと思われたが、プレステージには参加していないし、何人かのセントラル選手を補強したルーチョバルサだけに、今シーズンもフベニルAをベースとしてプレーすることになるのだろう。思ったほど身長が伸びないのがマイナス材料と言えるかも知れない。

ダニ・ガルシア(フベニルA)
ダムから昨シーズン移籍してきた選手ながら、ほとんど出番がないまま冬のメルカードを利用してコルネヤにレンタルされてしまった。わけのわからない加入選手となってしまったが、今シーズンも戻ってくることはないだろう。プレステージには顔を見せていない。

ペレ・セガーラ(フベニルB)
昨シーズンにフベニルB強化のために加入してきたセントラル選手。負傷していない限りテロンと組んでスタメン出場している。だが、はっきり言って、どうってことはない選手という印象。果たしてフベニルAチームに昇格することができるのかどうか、それはセントラル選手の補強作戦次第と言うところか。

クリスティアン・バージェ(フベニルB)
スペインU17代表でありながら、バルサではそれほど出番がやってこない。すでにフベニルBチームを2年繰り返しているので、今シーズンは間違いなくフベニルAに昇格してくるだろう。もし彼がフベニルAに昇格してくると、同じポジションで1つ年下のプラーナスがフベニルBチーム残留という感じか。

●セントロカンピスタ
フェルナンド・アリエロ(フベニルB)
攻撃的なセントロカンピスタとしても、デランテロとしても起用されることの多かったシーズン。いずれのポジションでも合格点を付けられる仕事をするところが彼の素晴らしいところだ。すでにフベニルBを繰り返しているので今シーズンはフベニルA昇格かと思ったら、いつの間にかダムにレンタルされていた。

ダビ・ゴンサレス(フベニルA)
フィジカル的に強いセントロカンピスタであり、彼もまたスペインU17代表選手。だが、昨シーズンのフベニルAにはティアゴ、ジョナタン、イリエ、あるいはフォンタスという良い選手がそろっていて、控えに回ることが多くなってしまった。ルーチョバルサのプレステージに呼ばれなかった事がショックだったのか、マラガBへ移籍していってしまった。もったいない。

ジョナタン・ドス・サントス(フベニルA)
兄のジョバニがドーバー海峡を渡って行ったこともあり、彼はどうするのだろうかと思っていたら、どうやらバルサに残ることにしたようだ。昨シーズンの後半あたりから、成長度がグ〜ンと上がったような感じだが、それでもルーチョバルサにはまだ手が届かないだろう。

イリエ・サンチェス(フベニルB)
昨シーズン加入してきた1990年世代の選手としては、最も将来が楽しみに見える選手。だが、残念なことにシーズン途中で負傷してしまい、彼としては納得いかないシーズンとなってしまった。フィジカル的には問題ないし、テクニックも面白いものを持っているセントロカンピスタ。今シーズンはカテゴリーをあげてフベニルAでプレーすることになりそう。

ポラッコ(フベニルA)
昨シーズンのフベニルA絶対スタメン選手の一人。ガッツあふれるプレーが売り物だが、ガッツ監督ことルーチョ監督がその精神を気に入ったのか、プレステージに同行させて何試合か出場させている。シーズンスタートは今シーズンもフベニルAとなるのだろうが、シーズン途中でミニエスタディでプレーする可能性大と見た。

アンリック・バージェス(フベニルA)
フベニルA所属となりながらも、ほとんどの試合をフベニルBでプレーすることになってしまった昨シーズン。それでもシーズン終了間際にはフベニルAに仲間入りし、素晴らしい活躍を見せていた。長身のセントロカンピスタで、個人的には非常に気に入っていた選手だけに、今シーズンこそフベニルAでの活躍を期待していたところ、NACというオランダの一部チームに移籍。是非とも大活躍して、無能カンテラ責任者共を見返してやろう。

●デランテロ
ホセ・ルイス(フベニルB)
昨シーズンはフベニルB所属選手として活躍し、シーズン終了間際にはフベニルAでプレーしていた右エストレーモ選手。スピードにかんしてもテクニックにかんしても、昨シーズン大成長を遂げた選手の一人だ。フベニルAで今シーズンはスタートするだろうが、活躍次第ではシーズン途中からルーチョバルサ入りという可能性もあると思う。

アンジ(フベニルB)
右ラテラルというのが彼の自然なポジションながら、デランテロまでこなしてしまう便利屋さん。昨シーズンも右ラテラルというポジションでプレーすることが多かったが、フベニルB唯一の9番ロチーナがフベニルAに上がっていった瞬間から、このアンジが9番トップ役となっていた。今シーズンこそはフベニルAに昇格してプレーするものと思っていたら、あらまあ、ビネファルというクラブに移籍していってしまった。


1989年世代
(08/08/14)

カンテラ選手にとって一つの厳しい現実が訪れてくるのが、年齢制限のあるフベニルカテゴリーでプレー資格がなくなるシーズンだろう。例えば、天才的な少年であれば10歳であろうがカデッテカテゴリーでプレーすることが可能となるし、12歳でもフベニルカテゴリーでプレーすることもできる。年齢制限のないフィリアル(二部チーム)では、例え28歳であろうが、契約期間さえ残っていればメンバーの1人となり得る。だが、フベニルカテゴリーだけは19歳までという年齢制限があるため、この年齢を過ぎようとしている選手は、所属クラブのフィリアルに昇格できないとすると、他のクラブを探すことを義務づけられてしまう。2008−09シーズン、フベニルカテゴリーではオーバー年齢となってしまう1989年世代。バルサにはどのような選手がいるか、それを見てみよう。

●ポルテロ
ルベン・ミーニョ(ルーチョバルサ昇格決定済み)
鳴り物入りで昨シーズン入団してきたオイエルが、今シーズンもスタメンポルテロとなる可能性が大なので、少なくともシーズン当初は控えとなるのだろう。個人的には、何としてもルーチョバルサでのスタメンを勝ち取って欲しい選手。

ジョルディ・マシップ(ルーチョバルサ昇格ギリギリのところ)
もし、ルーチョ監督が3人ポルテロ方式を採用するなら、このマシップもバルサに残ることになるだろう。だが、そうなったとしても出番は当然ながら少ない。才能あるポルテロだけに、3人目のポルテロとなるくらいだったら、レンタルでもいいから、他のクラブでプレー場所を探すべし、と思うのは余計なお世話か。

●デフェンサ
アレックス・ルイス(放出決定済み)
2年前にフベニルAチーム入りしてきた選手だが、1年目はともかく、昨シーズンはまったく出番がなかった左ラテラル選手。したがって、当然ながら放出組の1人となっている。オスピタレ(三部リーグ所属)へのレンタル移籍交渉中。

マーク・ブラスコ(放出決定済みの噂)
ルーチョバルサのプレステージに参加してきているものの、どうやら計算外選手として通告されたようだ。昨シーズンを含めて、バルサカンテラ組織では9シーズン送っている生粋のカンテラ育ち。ルーチョバルサの右ラテラルというポジションにはコルコレスがいるし、新星モントーヤも昇格してくるかも知れないので、いずれにしても出番はなかっただろう。プレーチャンスの多いチームに移籍できますように。

マウリシオ・ガルシア(放出決定済み)
昨シーズンにバルサにやって来たセントラル選手だが、なにゆえ獲得したのかわからないほど、出番がないままシーズンを終わっている。

マリオ・マンサナーレス(放出決定済み)
この選手もまた昨シーズン加入してきた選手だが、マウリシオと同じように出番は与えられていない。獲得作戦失敗の巻きの代表的な選手となってしまった。

●セントロカンピスタ
アンドレウ・フォンタス(ルーチョバルサ昇格決定済み)
昨シーズン加入してきた1989年世代選手で唯一となったルーチョバルサ昇格選手。守備的なピボッテを自然なポジションとする選手だが、フィジカル的にも恵まれているし、テクニックも面白いものを持っている。当人が意識しているかどうか分からないものの、遠くから見るとレドンドによく似ている。

●デランテロ
ルベン・マルティネス(放出決定済み)
2年前にバルサに加入してきたとき、右エストレーモ選手としてそれなりの活躍を見せてくれた。しかし、昨シーズンはチーム事情によるものなのか、右ラテラル選手として起用されていた。だがシーズンが進んでいくに従い、姿を消していってしまった。マラガBへレンタル移籍。

ホルヘ・イエッペス(放出決定済み)
ブラスコと同じように長い間バルサにいた選手だが、ここ2年間負傷に泣いたこともあり、ほとんど出番がないままシーズンが終了してしまった。カデッテ、フベニルB時代まで将来を期待されたエストレーモ選手であり、個人的にも気に入っていた選手だけに残念無念。地元のコルドバに戻り再出発となったが、コルドバにいたのはわずか1週間だけで、すぐにベティスBに入団している。

ジョアン・ポンス(放出決定済み)
昨シーズンにバルサにやって来た右エストレーモ選手。ガイ、ワルテル、イエッペス、ヤゴという選手たちがそれぞれ左右エストレーモ選手としていたので、当初はデランテロセントロとしてプレーしていた。しかし、ガイがバルサBに、ワルテルがレンタル、イエッペスが負傷ということが重なり、本来の右エストレーモにポジションを移動。だが、それでも下から上がってきたホセ・ルイスが活躍し始めたため、最終的に見栄えのしないシーズンをおくっている。マジョルカBへの移籍交渉中。

ジュアン・オサード(放出決定済み)
パチェッコがドーバー海峡をわたったこともあり、期待の9番として昨シーズン加入してきたデランテロ選手。ポンスと交互にプンタというポジションでプレーしていたが、次第に影が薄くなり、出番が少なくなってしまった。折り返し地点を過ぎたあたりで、ロチーナが下から9番として上がってきたこともあり、出場する機会があってもエストレーモ選手としてだった。それでもまったく良い結果を出せずにクラブを離れることになった。カステジョンへの移籍交渉中。


ルーチョ監督、お気に召しませぬ選手
(08/08/07)

ポルテロのパウとプランチェリア、デフェンサのファリとバリエンテ及びチコ、セントロカンピスタのディマス、デランテロのエネコ、彼らはそれぞれプレステージ開始前に自らクラブを離れることを決意、あるいはクラブ側から離れることを宣告された選手であり、7月17日に開始されたプレステージには参加してきていない。だが、プレステージに参加しながらも、何人かの選手がすでに計算外宣告され、他のクラブを探すことを要求されているらしい。最初の選手がエミリオ・ゲーラであり。彼に続いてセルヒオ・ウルバーノ、マーク・ブラスコ、そしてヤゴ・ファルケといった連中だ。もっともゲーラ以外はまだ“公式発表”ではなく、あくまでも噂の段階に過ぎないが、かなり真実性のありそうな噂ではあるようだ。それを踏まえた上で、なにゆえ彼らが計算外選手となったのか、ゲーラとヤゴに関して個人的な推測をしてみようと思う。

●エミリオ・ゲーラ
ルーチョ監督から計算外選手通告されるわずか1か月前、つまりオフシーズンが始まる頃に、クラブ側から提案された延長契約書にサインしている。昨シーズンのバルサB得点王ではあるものの、すでに26歳となった選手はバルサフィリアルには似合わないと思っていただけに、個人的には意外な感じがした。それはともかく、プレステージ初日にゲーラは参加してきていない。新婚旅行が長引いてしまってのオッチョコチョイ不参加だった。クラブ側の許可をとったという噂もあるが、いずれにしてもルーチョ監督はこれが気に入らなかったらしい。そして4日間遅れて合同練習に参加してきたゲーラだが、監督とスッキリした関係にならなかったのは想像できる。練習態度も良くなかったという噂も、それほど不思議な感じはしない。昨シーズンもペップ監督によって“マジに練習せい!”という何回かの警告を受けている彼だから、それは十分考えられることだ。そして、最初の練習試合にこそ45分間だけプレーしたものの、それ以来一試合も出場していない。

“チームの和を乱す愚か者”の印を押されてしまったのが、計算外選手となった一つの理由としても、さすがにそれだけではないだろう。たぶん、プレステージにおける9番選手ロチーナの予想以上の台頭があると思う。17歳の若きデランテロ・ロチーナが最初から快調に飛ばしている。昨シーズン、フベニルBからスタートしたロチーナが、ルーチョバルサのデランテロとして今シーズン計算できるのであれば、26歳のゲーラはそれほど必要ない選手となる。したがって、もしこのチャンスをロチーナがいかすことができれば、ゲーラ放出もそれなりに意味ある話となる気がする。

多くのクラブを渡り歩いてきているゲーラは、こういうことに慣れているようで、計算外選手通告された翌日にはクラブ側と話し合いを持ち、契約の解除をおこなっている。そしてそれからしばらくして、At.マドリBチームに加入している。さすが、ベテラン選手。

●ヤゴ・ファルケ
インファンティルカテゴリーに上がってきた頃から見始めた選手だから、かれこれ6年ぐらいは、その華麗なプレーを見続けていることになる。カピタンマークさえ付けてはいなかったものの、どのカテゴリーにおいてもチームの“主役”となるのは常にヤゴだった。言ってみればお山の大将的な存在であり、スポットライトを浴びるのはゴールを決めまくっていたボージャンと共にヤゴとなったこの数年間。テクニック的にもスピード面においても、そしてフィジカル面においても、各シーズン確実に成長してきていたが、ただ、一つだけ変わらないものがあったとすれば、どこのチームにおいても守備面でのお粗末さだろう。昨シーズン、ペップ監督がなにゆえ彼を起用しなかったのか、その答えをフットボール的な面で考えるとすれば、その点にしか見つからない。ガイ・アスリンがペップ監督お気に入りの選手となったのは、攻撃面だけではなく、守備面での効率の良さがあったからだ。だが、ヤゴには残念ながら守備をしようという発想さえないかのようだ。これまで彼がファールをしたところもほとんど見たことがない。

だが、彼はまだ年齢的にはフベニルの選手。監督の役目はその弱点を矯正していくことにあるのは明らかだ。昨シーズン、ほとんどがフベニルAチームの試合出場であったにもかかわらず、毎日の練習ではペップバルサに顔をだすことが多かった彼だけに、教えることが大好き人間ペップ監督がなにゆえそれをしなかったのか、そこら辺がわからない。毎日の練習で指摘しても一向にプラス方向にいかなかった可能性も捨てきれない。ルーチョ監督にしてもそこらへんを指摘する毎日でありながら、改善の傾向が見られなかったのかも知れない。だが、まだプレステージの半分も消化していない段階であることを考えると、そういう面での理由で計算外選手となること自体がよくわからない。いずれにしても、それは第三者にはわからないことだ。

バルサカンテラ組織に詳しい友人によれば、フットボール的な意味合いよりは、ヤゴの持つキャラクターが問題だったのではないかと言う。それはじゅうぶんあり得そうな推測だ。決して練習態度が悪い選手でないことは知っている。だが、試合中の彼の態度からキャラクター的に問題があることは、これまで彼を見続けてきたファンなら誰でも知っていることだ。どんなに大差で勝利している状況でも、自分が納得できないプレーの試合では、わがままなプレーが多くなる。誰かがゴールを決めても彼だけ一人ポツンとしていることが多い。ヤゴがゴールを決めても他の選手が祝福することなしに、孤立しているシーンもよく見ている。途中交代されるとベンチに座らず、一人離れてベンチの横に座り込んでいることも多い。昨シーズンのとある試合で、途中交代を命じられてそのままグラウンドを離れ、父親と共に車でスタジアムを離れていったところも個人的に目撃している。確かに、問題がないとは言えない。

だが、繰り返すことになるが、いずれにしても彼はまだフベニルカテゴリーの年齢の選手。監督やコーチたちは、彼の持つプラス面をいかすと共に、マイナス面を矯正する立場にある人々だ。もし、指摘したことを守らないのであれば、数試合ベンチに置くなり非招集とし、反省を促せばいいことのはずだ。それはシーズンを通じておこなっていけば良いだけの話となる。何と言っても、スペインU19代表に招集されている唯一のバルサ所属の選手でもある。プレーするカテゴリーの器が小さくなってしまったから、レンタル移籍して彼の実力に相応しい場所で成長しなさい、ということでは当然ない。まだ、彼は一シーズンまともにバルサフィリアルチームでプレーした経験がない選手だ。したがって、外側から見ている第三者には決して理解できない“事件”でもある。

ヤゴとバルサとの契約期間はまだ5年間も残っている。計算外選手となったことを知った彼は、クラブ側に自由契約の身となることを要求しているという。当然の要求だろう。それでもファンとしては、どうにかレンタル移籍という方法で落ち着くことを願う。せめて二部Aカテゴリーか外国のチームで経験を積み、一回り大きくなってバルサに戻ってこれる方法を探すべきだ。それじゃなきゃ、この不可思議な“事件”はどうにもこうにも救われない。

少々明るいニュース。それはフベニル選手のカルロス・テロンがフランスU18の代表チームに招集されていること。父親がフランス人であり、スペイン代表が彼を招集していないからこそ可能となったことでもある。


加入選手
(08/08/04)

8月4日現在、ルーチョバルサには5人の他クラブからの新加入選手がおり、そして昨シーズンバルサBに在籍していた何人かの選手が、すでに移籍クラブを見つけてクラブを去っている。加入選手のポジションで目立つのはセントラル選手が3人もいること。ペップバルサと同じように、このカテゴリーでも守備をまず固めて、という発想があるようだ。そしてセントロカンピスタの選手が1人もいないところを見ると、このポジションはラ・マシア出身の選手にお任せということだろう。年齢的には22歳前後の選手であり、基本的にはカテゴリー昇格を狙っての補強で、うまくいけば第二のオラゲールが発掘できればということかも知れない。これまで2試合おこなわれたミニエスタディでの練習試合を見た感想と共に選手紹介。

ホセ・アントニオ・ソラーノ(23歳)セントラル選手
カディス所属の選手ながら3年間エシハ(二部Bカテゴリー)というクラブにレンタルされていた。固く守ってカウンターフットボールを展開していたエシハというクラブは、昨シーズン二部Bカテゴリーでの最少失点数を記録したらしいが、もちろんルーチョバルサではデフェンサそのもののプレースタイルが変わってくる。
「自分はセントラルが自然なポジションだが、状況に応じてはピボッテもこなしたことがある。エシハとバルサでは当然ながらプレースタイルは異なってくるだろうが、攻撃的なフットボールにもじゅうぶん適応できる自信がある。」
カディスのカンテラ組織で育った選手だから、昨シーズンの途中に入団してきたチコとはカディスで同僚だったらしい。練習試合を2試合見た限り、ピボッテをやったこともあるという割には、恐ろしくも球離れが悪い選手という印象。大いに学習すべし!
バルサとの契約は2年間。

エクトル・ベルデス(22歳)セントラル選手
二部Aカテゴリーに祖属していたヘレスからやって来た、185cmという長身のセントラル選手。
「二部Bカテゴリーでプレーすることになるわけだが、バルサというビッグクラブでプレーすることには変わりはなく、個人的にはステップアップしてきた気分。このチャンスをいかして多くのことを学びたいと思う。」
ルーチョバルサの最初の練習試合では左セントラルを務めていたが、2試合目は右セントラル。なかなかエレガントなプレースタイルを見せていた。ただ、彼もまたこれまでの練習試合を見る限り、ソラーノと同じようにセントロカンピスタ、あるいはデランテロへの良い球出しはそれほど期待できない感じ。大いに学習すべし!
バルサとの契約は2年間。

ジョナタン・ロペス(21歳)セントラル選手
ルーチョ監督地元のスポルティング・ヒホンからやって来たセントラル選手。昨シーズンはヒホンBとAチームを行ったり来たりしてプレーしていたらしいが、今シーズン一部リーグでプレーすることになったヒホンAチームでは計算外選手となったらしい。それでも、19歳という若さでヒホンAチームでデビューしている。ヒホンBチームでプレーするよりルーチョバルサでプレーすることを当人が望んだために、レンタル移籍が実現したようだ。8月2日にミニエスタディでおこなわれた練習試合で後半に入ってから登場し初見参となったが、やたら色の白い選手という印象のみで試合が終了してしまった。
1年間のみのレンタル移籍。

ルベン・ラージョス“ラージョ”(22歳)エストレーモ選手
エルチェ所属ながら、昨シーズンはビラホヨッサにレンタルされ、契約期間が終了し、自由契約の身となってバルサに入団してきている。左インテリオール、あるいは左エストレーモとしてプレーしていたという彼だが、ルーチョバルサの練習試合では、右エストレーモとして起用されている。右足利きの選手は左エストレーモ。左足利きの選手は右エストレーモとして起用されることになるのは、ペップバルサと同じようだ。これまで2試合見た限り、テクニックよりもスピードを武器とする選手のようで、バルサでは珍しく空いているスペースにボールを要求するタイプとうつった。すでに2ゴール決めているが、どちらもゴラッソ。今シーズンからペドロがペップバルサ在籍となるだろうから、彼の穴を埋める選手となる。
バルサとの契約は2年間。

マヌエル・アグード“ノリート”(年齢不明)デランテロ選手
バレンシア所属の選手ながら、彼もまたソラーノと同じようにエシハにレンタルされ、2年間プレーしていた。バレンシアのフベニルカテゴリーではメディアプンタを自然なポジションとしていたらしいが、エシハではデランテロセントロとしてプレー。だが、ミニエスタディでの最初の試合では左エストレーモ、第二試合の前半も同じポジションながら後半にはトップとしてプレーしている。彼の特徴はラージョとは反対で、スピードよりもテクニックを武器とする選手のようだ。本番になれば左エストレーモには当然ながらガイが入るだろうし、トップにはロチーナがいるから、彼らの控え選手となりそうな気がする。
バルサとの契約は3年間。