2007年
2008年
3月

ガイ・アスリン
(08/03/29)

今週の火曜日、ボージャンが出場するというので久しぶりにスペインU21の試合を見て驚いたことがある。なんと、スタメンで出場している選手のほとんどが、すでに一部リーグでプレーしている選手なのだ。例えば、ミゲル・トーレス(レアル・マドリ)、ジェラール・ピケ(マンU),マーク・トレホン(エスパニョール)、イグナシオ・モンレア(オサスナ)、ラウル・ガルシア(At.マドリ)、ディエゴ・カペル(セビージャ)、シシ・ゴンサレス(バジャドリ)、フアン・マタ(バレンシア)、そして例えば我らがボージャン(バルサ!)。今から2、3年前、そう、わずか2、3年前には想像もできないことだ。U21の試合に出場している選手は、ほとんどが二部カテゴリー、あるいは二部Bカテゴリーの選手ばかりだった。それが、ここ2、3年で明らかな変化が生じてきていることになる。その変化が生まれた理由はわからないものの、一部リーグにおける若手選手の起用現象は個人的には嬉しい。

幸いにも、その傾向はライカーバルサにも見て取れる。17歳のボージャンや18歳のジョバニが登場してきている今シーズン。しかも、カンテラ育ち選手を含めた何人かの若手選手で、将来性を持ったチーム作りが可能となっているのが現在のバルサの素晴らしいところだ。30歳ラウル、31歳グッティ、最新のカンテラ育ちもうじき27歳カシージャスという3人カンテラ宿敵チームとは違い、予備軍からの台頭が激しいフットボール・クルブ・バルセロナ。23歳イニエスタ(まだ23歳!?)、20歳メッシー、24歳ヤヤ、17歳ボージャンという若手選手に、26歳バルデス、27歳ミリート、27歳エトー、28歳アビダル、28歳チャビという“ベテラン選手”を加えれば、しっかりとしたチームの核となる選手がそろうことになる。そして今また、下のカテゴリーからコンコン!と、バルサAチーム入り口の扉を叩き始めた選手が登場してきた。16歳ガイ・アスリン、そう、今シーズン途中からバルサBでプレーしているイスラエル人選手。

チリ代表相手の親善試合で、そのガイ・アスリンがイスラエル代表選手としてデビューしている。若干16歳でのデビューは、イスラエル代表の若手記録でもあるそうな。まだ所属クラブのAチームでプレーしたことがない選手が、代表チームでプレーするのも珍しいことだと思う。かつてクレメンテが代表監督を務めている時代に、バルサBでプレーしていたクリスティアンセンを招集しプレーさせたが、それ以来のことではないだろうか。

今から3年前の2005年、ガイ・アスリンに関して、ラ・マシアHPで次のように触れている。
●メディアプンタが彼に似合うポジションながら、バルサAチームと同じシステムをとっているインフェリオールカテゴリーなので、そのようなポジションは存在しない。というわけで、左サイド(ロナルディーニョの位置)をシーズン通じて自分のポジションとしている。イスラエルからやって来たキラキラ星。(05年10月)
●入団以来常に話題になってきている選手だし、それなりの活躍を今シーズンも見せているが、どうも個人的には伸び悩んでいるように思えてしかたがない。4−3−3というシステムに変わってからロナルディーニョがいる位置でプレーしているが、どうもそこはガイのポジションではないような気がする。もう少し下がったポジション、例えば左インテリオールあたりで起用するともっと伸びるのではないかとシロウト予想。(06年01月)

気の早いメディアは、メッシーと比較するコメントさえ見られるようになった。左サイドの第二のメッシー、そんな評価がされている。だが、これまで5年近く見てきたガイは、メッシーとは似ていない。メッシーのようなコチョコチョとしたボールタッチや、ドリブルのテクニックは誰にも真似のできないものだし、もちろんガイにはそのテクニックはない。どのカテゴリーでもそれなりの数のゴールを決めてきているが、いわゆるゴレアドールではない。運動量はメッシーと比べると遙かに多く、そして負傷など恐れないハードなタックルを可愛い顔して平気にやってしまう。痛みに強いタイプの選手のようで、試合途中で負傷しながらも例の可愛い顔を崩さず審判の笛が吹かれるまで走り続けているシーンを何回か見ている。ペップバルサでは左エストレーモ、あるいは右エストレーモとして起用され、期待に応える見事な活躍を見せているが、デランテロとしてよりはセントロカンピスタとしての方が似合う選手だと、いまだに思っている。中盤から上がってゴール前に絡むプレーこそ、ガイ・アスリンの最大の魅力の一つだ。しかも彼の持つ運動量の多さを最も効率的に発揮できるのも、セントロカンピスタの位置だと思う。

さて、そんなことをよそにベティス戦。“ペットボトルたまたま命中事件”でスタジアム2試合閉鎖措置が命じられているベティス。あすこはダメ、こちらもダメ、かといってあっちもダメと、スタジアム決定にグタグタやっていたところ、スペインフットボール連盟が怒りを持って勝手に“カルデロン開催”と決めてしまったのが木曜日。だが、翌日の金曜日には前からベティスが申し込んでいた“スタディアム2試合閉鎖措置の延期”が認められ、最終的に地元ルイス・デ・ロペラで試合がおこなわれることになった。何ともはや、スペインらしい話。

ジェットコースターに乗っているかのようなバルサ、果たしてこの試合で再び上昇できるか、あるいはまた、ガビ〜ンと急降下してしまうか、さあ、どっちだ!

■ベティス戦招集選手
バルデス、ピント、サンブロッタ、プジョー、トゥラン、アビダル、シルビーニョ、ヤヤ、イニエスタ、グジョンセン、チャビ、ジョバニ、エスケロ、アンリ、エトー、ボージャン、そしてペップバルサからビクトル・サンチェスを拝借し、合計18人。


ジャンルッカ・サンブロッタ
(08/03/28)

ジャンルッカ・サンブロッタ、1977年2月19日にイタリアはコモで生まれている。彼の“クラブ”であるコモを離れるのは1999年、ユベントスが約1600万ユーロの移籍料をコモに支払うことによって実現された。ユベントスで7シーズン・217試合出場した彼は昨シーズンにバルサにやってきている。2度のリーグ制覇とイタリアスーペルコパを1回、そして代表選手としてはユーロ2000オランダ大会での準優勝、ムンディアル2006ドイツ大会での優勝という輝かしき勲章を持ってバルサにやってきた。

元々セントロカンピスタだった彼を左ラテラル選手として起用することにより、このフットボール世界でのエリート選手に仕立て上げたのはマルセロ・リッピーだったらしい。ライカーバルサでは2シーズンを通じて、ほとんど彼の自然なポジションである左ラテラル選手としては起用されていない。右ラテラル選手サンブロッタ、残念ながら多くのバルセロニスタが期待したほどの活躍は見せてくれていない。その彼も今シーズンを最後とし、来シーズンはミランに移籍する可能性は大だ。バルセロナの水に合わなかったのか、彼の奥さんはすでにバルセロナを離れミランに住んでいる。個人的にはどことなく愛嬌のあるところが気に入っていた選手だが、イタリアに戻るのは致し方ないことだろう。イングランド出身選手やイタリア出身選手がスペインで長い間プレーすることは過去にあまり例がないが、彼もまた自国に戻ることになりそうだ。その彼がスペイン代表との試合を前にして、エル・パイス紙のインタビューに応えている。

バルサに入団する際、あなたは「これは一つの冒険だ」と語っていましたが、その冒険は楽しいものとなっているのか、あるいは厳しいものとなっているのか?

非常に充実した楽しい生活をおくっている。だが、バルサのデフェンサとしてプレーすることは、決してなまやさしいものではない。とてつもなく険しい冒険と言って良い。しかもカルッチオで何年もプレーしてきた人間が、スペインリーグでプレーするということは、一から出直しという感じさえしている。なぜならイタリアリーグとスペインリーグでは、チームにしても選手にしても、まったくフィロソフィーが違うからだ。そう、フットボールに対するフィロソフィーがまるで違う。でも、大事なことは、自分がプレーしているチームのフィロソフィーにとけ込むことであり、住んでいる街の水に合うようにすることだ。その意味では自分なりに満足している。

スペインのクラブはイタリアほど守備的ではないということか?

スペインにももちろん守備的なチームは多くある。イタリアにもローマとかミランのようにそれほど守備的ではないチームもある。両国に共通しているのは、スペクタクルなフットボールを目指しているということだと思う。だが、その違いはスペクタクルの解釈の違いとなってあらわれる。例えば、イタリアである試合が1−0という結果で終わったとしよう。この試合を見た人々は、スペクタクルな試合だったと理解する。なぜなら、勝った方は相手を0点で抑えることに成功したことになるし、負けた方としても1点しかとられなかったと総括する。つまり我々イタリア人には、守備面を高く評価するカルチャーが厳然と存在するからだ。もちろん、スペインにもそういう文化は存在するだろうが、イタリアのそれと比べることはできない。

いつだったか、マルディーニが「ミランというチームのデフェンサで良かった」と語っていた。バルサのデフェンサとしてプレーしているあなとにとって、それは地獄のようなものか?

イタリアではフットボール文化がスペインのそれとはまったく違う。とくにバルサのそれとはかけ離れて異なる。もしあなたがデフェンサの選手であるならば、相手の持つボールを奪いさえすればそれでOKとなる。つまり、相手の攻撃を防ぐことのみがデフェンサの仕事だ。それがイタリアでのデフェンサ選手に対する一般的な教育だ。だが、バルサのデフェンサに要求されるのはそんな単純なことではない。多くのことが要求されるから、多くのことを瞬時に考えなければならない。ボールを奪ったらそのボールをどのように処理するのか、ボールを処理した後はどこへ移動しなければならないか。攻撃参加するタイミングをどのようにつかみ取るのか、攻撃参加した後はセントロカンピスタとして一時的にプレーするのか、あるいは全力で元いたポジションに戻らなければならないのか。バルサのラテラル選手としてプレーするには、多くのことが要求される。そして、何よりも違いがあるのは、ボールを自分の友達としなければならないことだ。

それはどういう意味か?

バルサではデフェンサの選手であろうが、セントロカンピスタと同じようなボールを処理する高いテクニックが要求される。イタリアでプレーしていた時代に、これほどボールを持ってプレーするということはなかった。たぶん、バルサでの1シーズンだけで、ユベントスにいた時代の4シーズン分ぐらいのボールタッチをしていると思う。そして不思議に思うのは、バルサほどではないにしても、他のクラブでもテクニック的に素晴らしいデフェンサがいるというのに、なにゆえスペイン代表が良い結果をだせないかということなんだ。この2年で、スペイン人選手のボールテクニックの素晴らしさはじゅうぶんすぎるほど見てきている。これほどの選手が集まっているというのに、何でスペイン代表はタイトルと無縁なのか、それが不思議なところだ。

しかし、ムンディアルチャンピオンになったイタリア代表は、テクニックの優秀さで栄光を勝ち取ったわけではないと思うが・・・。

それは言えてる。我々は決してテクニック的に他を圧倒するようなチームではなかった。だが、勝利への意欲という点ではどこにも負けないものを持っていたと思う。国に対する誇りは誰よりも持っていたし、国のために勝利するんだという意欲は相当なものだった。

スペイン代表がタイトルをとれないのは、やはりそういうメンタル面の問題だろうか?

それは、自分には何とも答えようがない。ただ単に不思議の一言さ。チャビがいて、イニエスタがいて、セスクがいて、トーレスがいる。いったいイタリアの友達に、何て言って説明するのかもわからない。本当に不思議に思っている。

これまであなたと一緒にプレーしてきた選手の中で特別印象に残る選手は?

幸運にも多くの素晴らしい選手とプレーすることができた。カンナバーロ、トッティ、デル・ピエロ、トゥラン、イニエスタ、メッシー、ロナルディーニョ、エトー、そしてユベントスのデフェンサ陣、イタリア代表の仲間、プジョー、マルケス、アビダル、ミリート、バルデス・・・、本当に幸運に恵まれていたと思っている。特にイニエスタという、信じられないほどの才能を持った選手の同僚になれたことに感謝している。


入場者数の減少
(08/03/26)

チャンピオンズとリーガを制覇した2005−06シーズンのリーグ戦カンプノウ平均入場者数は7万3239人、翌2006−07シーズンは7万4141人、そして今シーズン2007−08はこれまでのところ6万9946人で、平均入場者数7万人台を割ってしまっている。今シーズンは残り4試合がカンプノウ(ヘタフェ、エスパニョール、バレンシア、マジョルカ)で戦われるが、もし昨シーズン並みの平均入場者数に達するためには残り4試合とも9万人前後の人々がカンプノウにやって来なければならないらしい。それは現実的にあり得ないことだろうから、ここ3シーズン最少の入場者数となる可能性が大だ。

3月23日17時試合開始バジャドリ戦。クラブ公式発表によれば、この日の入場者数は5万6737人となっている。オサスナ戦より500人程度多いだけの、今シーズン最少ナンバーツーの観客数。セマーナ・サンタ大型休暇中の日曜日であること、国王杯バレンシア戦敗北からわずか3日後の試合であること、相手がカテゴリー降格に片足を突っ込んでいるバジャドリであったことなどがマイナス材料となるものの、日曜日17時試合開始というのはどんなマイナス状況があれ、それなりにソシオが詰めかける試合となるのが普通だ。だが、ソシオ・アボノの大部分の人々はカンプノウにやって来なかった。窓口一般販売チケットが2万強売れたというから、この試合に足を運んだソシオ・アボノの人々は3万人程度。つまり、約三分の二弱のソシオ・アボノの人々がこの試合観戦をボイコットしたことになる。年間指定席料を払っているヤツらはいったい何をしているのか!と、自己反省(は、していない)。

この表を見ればわかるように、この3シーズンでカンプノウリーグ戦観客席が8万人台となったのが5回、そして9万人を越えたのは4回しかない。ソシオ・アボノの人々が8万人強いて、各試合で5000枚近くの入場券が完売され、それでも9万人はおろか8万人もの人々でカンプノウ観客席が埋まることは滅多にないことになる。

いつだったか、バルサTVの関係者が我が家に来たときに、ここ最近5年間ぐらいソシオ・アボノの権利を買えた人はいないという話を聞いた。バルサTV関係者は決してクラブ関係者ではないから、真実のほどはわからないものの、ここ何年かでソシオなった人々がソシオを辞めることはあっても、昔からソシオになっている人々はソシオ脱退ということをしないし、同時にソシオ・アボノを辞める人もいない。だが、それは試合を見に来るということは意味しない。例えば、自分の席の前列の8人組ファミリーはクラシコの試合にしかあらわれないし、我が家の上に住むソシオ・アボノ老夫婦は年に3回程度しかカンプノウに足を運ばない。それでもドブレッテのシーズンとなった2005−06シーズンには7回もカンプノウに行ったと胸を張って言っていたが、まあ、こういう人が多いのだろう。ソシオカードと共にソシオ・アボノは“疲れ切ったバルセロニスタ”にとって勲章みたいなものだから、しかも年間指定席料が安いと来ているから、その権利を放棄することは滅多にない。“シエント・リブレ方式”を利用して席を一般の人々に譲ることも“自分の席に他人が座るのは良しとしない”と考える人々も多い。したがって、カンプノウは満席とはならない。チームの状況が悪かったり、雰囲気が悪かったり、試合内容が面白くないとすれば、余計その傾向は強まる。

ラポルタ政権が提案したカンプノウ改装案が実行に移されるとすると、カンプノウ収容人員は12万弱となる。かつてゴール裏や電光掲示板の脇にある最上階のヘネラル席が椅子なしの立ち見席だった時代には、カンプノウ収容人員も12万人近くとなっていた。もちろん、満席となった試合を経験したことはない。何年か後にカンプノウが改装され収容人員12万人となっても満席となることは10年に一回あるかないかだろう。だが、若くモチベーション豊かなソシオ・アボノ数が増えることや、一般席チケット販売数が多くなるだろうから、年間平均入場者数は増えるかも知れない。それでも、日本円にして450億円工事費というのは、どんなもんじゃろうか?


17位バジャドリ戦
(08/03/25)

セマーナ・サンタ中の最後の日曜日とは言え、17時試合開始という、一シーズンに一度あるか二度あるかという絶好の観戦時間。ミニバケーションからすでに戻ってきている人々や、バルセロナ居残りを決めた家族にとっては最高の時間だ。もっとも、相手が相手だけに、8万人や9万人もバルセロニスタが押し寄せる試合ではないが、それでもまあまあの入りとなるのではないかと予想。ところがふたを開けてみれば5万人チョイ。2万枚のチケットが売れたと言うから、半分近くがツーリストとなったバジャドリ戦。17時試合開始だからまだ昼間のように明るい。真っ青な空の下で戦われる試合ながら、スペイン各地に大雪注意報などという恐ろしい気象庁発表があり、ピューピューと吹きまくる北風はとてつもなく冷たい日曜日。こう書くと、いかにもカンプノウに行ったように思われるかもしれないが、もちろんこんな試合は見に行かない。あくまでも自宅のベランダでの感想。12ユーロ出してPPVを買い、テレビ観戦するかどうかも迷うような試合だ。

想像していたように、真っ白なバラの花が咲く感じではなく、ところどころに見られる地味な白ハンカチと軽いブーイングでスタート。不甲斐ないチームに怒りを燃やす3万人弱のソシオが頑張る。国王杯の試合でバレンシアに勢いをつけさせようとした我らが天才的智将フラン・ライカーといっても、そんなものを本当に信じているバルセロニスタはいない。当然にして、常識的で、健康的な不満表明。クラブから招待されたダライ・ラマの弟のような顔をしたバルセロナ・ティベット支部ディレクターのお坊さんや、エスケロ、デコ、マルケスの三人はハンカチ降りやブーイングをしていなかった(って、当たり前か・・・)が、カピタンの一人はいつものように姿を見せていない。

二部落ちに片足を突っ込んでいるチームを相手にしての壮絶な試合。ゴールポストに二回も助けられながら、それでも“今日のキラキラ星”ボージャンの活躍で運良く勝利。この試合が終了してから2時間後にはシュステルチームも惨めな試合を展開して上昇バレンシアに敗北したため、その差は4ポイントとなった。

ところで、バジャドリに1−1と同点にされた段階で、順位的にはバルサは3位に転落していた。アラアラという感じだが、ビジャレアルを恐れることはないだろう。これがかつてのバレンシアとか波に乗りまくっている頃のセビージャであったなら、それこそスリリングな展開となるだろうが、ビジャレアルには恐れるものが見あたらない。一時的に首位に絡むことはあったとしても、このチームには心配ない。優勝経験のないチームが上位に絡めば絡むほど受けるであろうプレッシャーは相当なものだし、とてもそれに耐えられるとは思えない。したがって、やはり今シーズンもマドリとバルサのレベルの低い“壮絶”な首位争いとなる。そのマドリがバレンシアと戦っている試合を深夜にテレビ観戦したが、マドリはバルサに劣らずひどい出来。リーグ戦前半の貯金を食いつぶしているマドリに対し、パリ決勝戦以降は抜け殻で、かろうじて戦っているバルサ。これまで経験したことのない、まったくもってレベルの低い首位攻防戦は、それはそれで面白いものだのう。

“リーガさんサヨウナラ!”の週がやって来たと思ったら、“リーガさんコンニチワ!”という週が訪れ、そして“リーガさんまたサヨウナラ!”という週が姿をあらわすと、“リーガさんいらっしゃい!”と続く、なんだかまるでゴムひものようなマドリとバルサ。またすぐに“リーガさんアディオス!”の週がやって来るかも知れないものの、楽しいときにはしっかりと楽しんでおこう。

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ヤヤいいぞ!
(08/03/23)

ヤヤ・トゥレという名前で知られていた選手が、今シーズンの始めにバルサに入団してきた。ところが入団記者会見がおこなわれた瞬間から、トゥレ・ヤヤという呼び方に変更している。ヨーロッパ方式の呼び順ではなく、自国コスタ・デ・マルフィルで生まれ育ってから国を離れるまでの、彼にとって自然な呼び順に戻すことに決めたからだ。奥さんとよく話し合ったうえでの結論だとも語っている。そして今回、再び家族会議を開いて出した一つの重要な結論がある。それはヘルニアの手術をシーズン終了まで延期し、痛み止めを打ちながらシーズンを全うすることだ。なぁんとまあ、よくあるホームドラマに出てくるような、ホットなトゥレファミリー!

ビジャレアル戦で何回も苦しそうな表情をしながらプレーしていたが。よほど痛かったのだろう。試合終了後、バルサドクターが軽く診断をし、翌日の月曜日には手術する担当医と病院まで予約していたという。だが、その予約はキャンセルされることになる。なぜなら日曜日深夜のトゥレホットファミリー会議で、手術はシーズン後と決まったからだ。
「この大事な時期にチームに迷惑をかけるわけにはいかない。ネーションカップでも長い間不在にしているし、しかもこれから我々には大事な試合が控えている。手術は3か月後でも問題ないし、痛みは痛み止めを打てば治まる。女房とよく相談し、こう決めた。」
世の名声に己を失い、昼間よりも夜中の世界に生きることにモチベーション豊かにし、何かにつけてはナンジャカンジャと言い訳ばかりし、挙げ句の果てにはフットボール選手としてのプロ精神を忘却の彼方に葬ってしまっている選手がチラホラと見えるこの世界。そんな中、ファンにとってこういう選手は砂漠の中に突然現れたオアシスのようなものだ。かつてのリバルドがそうであったように、そして最近ではプジョーがそうであったように、トゥレ・ヤヤもまた痛み止めを打ち続けながらチームを助けてくれる一人となった。

だが、残念ながら、トゥレ・ヤヤには多くのことは望めない。ネーション・カップに向かう前の“鉄壁の第三セントラル”としての彼の活躍は今のところ期待できそうもない。失ったリズムを取り戻すのに苦労しているのか、痛み止めを打っても痛みを感じるのか、あるいは単にまだ練習時間が少ないのか、いずれにしてもバレンシア戦での活躍度はかなり低かった。それでも、その心意気は非常によし。バルセロニスタの心をつかむ、プロ精神の固まりのようなヤヤの決意は非常によし。この選手、お気に入りに追加。

国王杯当日、この試合に呼ばれなかった選手だけを集めておこなわれたラ・マシアの練習を担当したフィジカル・トレーナーであるパコ・セイルロが、一人の選手をジム送りにしている。その理由を彼はメディアに語っている。
「合同練習に参加できる“肉体的状態”ではなかった。」
右足に“違和感”を持ちながらもバレンシア戦は重要な試合だからと出場を申し出た選手が、合同練習にも参加できない状態でラ・マシアにやって来ているとは・・・。パコ・セイルロが語る“肉体的状態”は、もちろん右足の違和感を指しているのではなく、それとは関係ない他のこと。う〜ん、こういう選手の話を聞いてしまうと、トゥレ・ヤヤは宇宙からやって来たスーパーヒーローみたいだ。ちなみに、試合翌日におこなわれた練習には、セマーナ・サンタの休みを利用して多くの人々が見に来ていたようだが、その中から選手たちに罵声がおくられている。

“恥知らず!恥知らず!恥知らず!”と呼ばれた選手たちも、“ペセテロ!ペセテロ!ペセテロ!”と呼ばれた選手たちも、“カブロン!カブロン!カブロン!”と呼ばれた選手たちも、まあ、今のところ我らがバルサの選手なんだから、それなりに頑張りなさい!

■バジャドリ戦に招集された、恥知らず選手たちとペセテロ選手たちとカブロン選手たち。
バルデス、ピント、サンブロッタ、プジョー、トゥラン、アビダル、シルビーニョ、ヤヤ、エドゥミルソン、チャビ、グジョンセン、イニエスタ、ボージャン、アンリ、エトー、そしてバルサBからビクトル・サンチェス、ビクトル・バスケス、ペドロ。

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トリプレッテ→ドブレッテ→???
(08/03/22)

■1/16 ALCOYANO 0 - 3 FC BARCELONA
■1/16 FC BARCELONA 2 - 2 ALCOYANO
■1/8 SEVILLA 1 - 1 FC BARCELONA
■1/8 FC BARCELONA 0 - 0 SEVILLA
■1/4 VILLARREAL 0 - 0 FC BARCELONA
■1/4 FC BARCELONA 1 - 0 VILLARREAL
■1/2 FC BARCELONA 1 - 1 VALENCIA
■1/2 VALENCIA 3 - 2 FC BARCELONA

残念ながら国王杯の戦いから外れてしまったバルサの国王杯試合成績は、8試合2勝1敗5分け。勝利の内訳はフエラでの二部Bカテゴリーチーム・アルコヤノ戦と地元でのビジャレアル戦のみ。いやあ、それにしても、考えてみればこの成績でよく準決勝にまで来ましたなぁ。ハッハッハ!

今週はセマーナ・サンタ(聖週間)の真っ最中であるスペインだから、早いところでは15日の土曜日から23日の日曜日までミニバカンスとなっているし、短いところでも20日の木曜日から23日まで休みとなっている。どこもかしこも盆と正月が一緒にきた感じで、人々が車や飛行機や電車やバスで移動に忙しい。カタルーニャは24日の月曜も祭日となっているから、多くの移動組は日曜日の深夜とか月曜日にバルセロナに戻ってくる。したがって、スペインの強豪チーム・バジャドリがカンプノウにやって来て、手に汗を握るような緊迫した試合が予想されたとしても、この試合に駆けつけられない多くのソシオがいる。日曜日17時試合開始という理想的なファミリー観戦時間なれど、まだ他の都市でバケーションを楽しんでいたり、あるいはまだ車の中という人々も多い時間。したがって、バルセロナを訪れている多くのツーリストにとっては、またとないカンプノウ観戦チャンスとなる。シエント・リブレ方式で売りに出されるソシオの席が何万席とあるからだ。ということで、我らがだらしないライカーバルサに対し、観客席からスペクタクルな白いバラの花が咲き乱れることは残念ながら期待できない。それに値するチームながら今回はない。地味な、部分的な白バラがチラホラと見られることはあっても、スペクタクルなそれは見られない。それどころか、久しぶりに登場して来るであろう我らがサボり選手に対し、大きなコールが聞かれることになる、と予想。

ライカーバルサの抱える諸悪の根源を無視し、ひらすらアッケラカンと“このボトルには半分ものワインが入っている”と無理矢理楽観的に考えるとするならば、メスタージャでの敗北は、ひたすら日曜日のマドリ・バレンシア戦に向けたバレンシア応援シュプレヒコールとしよう。この勝利で少しは勢いづいたであろうクーマンチームが、9番なきシュステルチームにうまいこと襲いかかれるかも知れぬ。ひょっとしたら、我らが天才的智将フラン・ライカーが作り出してきた多くのの伝説的な名戦略の一つとして記録されるかも知れぬメスタージャでの敗北。すでに我らが天才的智将は、国王杯などというみみっちいタイトルより、リーグ制覇という輝かしきタイトルを狙っていたのであった。

さてと、もう2週間前に予約してしまった4月16日バルセロナ・マドリ間の新幹線のチケットをキャンセルしないと・・・。

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Vamos a la final !!!
(08/03/20)

アルメリア戦当日の日曜版“エル・ペリオディコ紙”が、ロナルディーニョが非招集となった理由をコメントしている。
“3月9日のビジャレアル戦に敗退した翌日の月曜日、ライカーバルサは軽い練習をおこなった後、すべての選手に57時間のミニバケーションを与えている。つまり火曜日は完全休養日とし、水曜日の夕方におこなう練習まで自由時間とした。多くのバルセロニスタがビジャレアル戦での敗北で沈みきっているこの時期に、選手たちにミニバケーションを与えるのはおかしいのではないかという批判もあったが、バルサの今後のスケジュールを見てみれば、この時期にしか体を休ませることができないのがわかる。したがって、敗戦後のこととはいえ、それなりに納得できるものだろう。だが、残念ながら、体を休めることなく忙しい生活をおくってしまった選手が何人かいるようだ。その一人がロナルディーニョ。彼はビジャレアル戦敗戦後におこなわれたエトー誕生日パーティーに参加し、パーティーが終了してからも友人たちとカステルデフェルスのディスコにいたことが確認されている。それだけでは飽きたらず、水曜日の深夜におこなわれたメッシー送別会に参加し、この日もまたカステルデフェルスのディスコで朝まで過ごしている。”

そして月曜日のバルセロナ版“Gol紙”がさらに詳細に触れていく。
“水曜日におこなわれた練習では普段どおりの動きをしていたロナルディーニョが、木曜日の朝におこなわれた合同練習に参加してきていない。クラブ公式発表によればジムでの調整ということだった。だが、現場を担当し彼とすれ違った当紙記者によれば、まさに二日酔い状態でとても練習できる状態ではなかったようだ。そして非公開練習となった金曜日には練習に顔を見せたものの、10分程度で切り上げている。翌日の土曜日、どうやら右足に違和感を感じているという、クラブ(ドクターではなくクラブ)による公式発表がウエッブサイトにあらわれた。だが、フラン・ライカー監督はロナルディーニョの抱える右足の違和感が理由ではなく、選手の行為そのものに違和感を感じて招集しなかったのだろう”

面白いことは面白いが、別に目新しいニュースでもない。このコーナーでこの手のニュースを拾ったら、毎週のようにR10の名前が出てきてしまうからあえて一々紹介していない。ライカーが、このコメントを否定するのに躍起になっていたのも目新しいニュースでもないし、ラポルタがその手の質問はチキとライカーに聞いてくれと応じたことや、チキ・ベギリスタインがこのニュースの真実味を問われて、ノーと答えなかったのも目新しいニュースでもない。
「ライカー監督とは各選手の日常生活のことまで毎日のように検討し合っているが、内容に関しては機密事項だ。」
これじゃあ、肯定しているようなものだが、さぞや、ロッカールーム内は雰囲気が悪いのだろう。ちなみにアルメリア戦の翌日の練習に30分遅れて参加してきたR10が、6分間の練習で切り上げて姿を消したことも目新しいニュースではない。

目新しいニュースはこの日の午後にやって来る。バルサドクター陣によって精密検査がおこなわれたが、その結果、負傷の可能性はまったくないという爆弾発表が出されている。これはニュースだ。でも、特別ギャアギャアと言うほどのことでもない。今年の1月に“負傷中”であるにもかかわらず、ミニステージをおこなっていたのは誰もが知っていること。しかも、この目新しいニュースをもってR10だけを“悪者”扱いするのは的が外れている気がする。そういうことを許してきたクラブ会長ラポルタ(億万長者選手に対してバレンシア戦勝利ボーナス人参だと?)、フットボール最高責任者マーク・イングラ、ライカーを筆頭とするコーチングスタッフ、そしてカピタン連中にも問題があるとするのが正当というものだ。だが、この手の話はもう誰もが飽きている。R10に関する話題もこれを最後にしよう。

嬉しいことに雰囲気が悪いのはバルサだけではい。中央メディアにおじゃましてみれば、マドリ会長カルデロンやシュステルもメチャクチャな評価がされ始めている。唯一の9番であるバン・ザ・マンはついに手術をすることになり、今シーズンはもう終わりという可能性もある。そしてバレンシア付近のメディアをのぞいてみると、いやいや、素晴らしいことに国王杯準決勝の相手となっているクーマン・バレンシアもかなり雰囲気が悪い。多くのメディアが、このバルサとの試合と週末のマドリとの試合結果次第では、クーマン更迭というように理解しているようだ。雰囲気の悪さはエンパテ、カンプノウ前半90分の戦いも1−1とエンパテ、監督もオランダ人同士で、しかも疑問符のつけられかたもエンパテ、チームの調子も同じように悪くエンパテ、2−2のエンパテという結果でもいいぞ!と、何もかもエンパテ同士の壮絶な国王杯準決勝。
バモォォォ!バルサ!
10年ぶりの国王杯制覇に向けてバモス!
Vamos a la final !!!

■招集選手
バルデス、ピント、サンブロッタ、プジョー、ミリート、トゥラン、アビダル、シルビーニョ、エドゥミルソン、ヤヤ、グジョンセン、チャビ、イニエスタ、ボージャン、アンリ、エトーの16人。

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情けない
(08/03/18)

今年に入ってからのレアル・マドリの成績を見るとビックリする。リーグ戦11試合7勝4敗、国王杯2試合2敗、チャンピオンズ2試合2敗、合計15試合戦って7勝8敗という成績。リーグ前半戦も結果だけは記録的に素晴らしかったものの、試合内容はお粗末の一言であり、そして今年に入ってからは、その内容のお粗末さは変わらないのに加え、結果そのものも寂しいものとなってきている。こんなチームが2位に7ポイントもの差をつけて堂々とリーグ首位を走っている。リーガを長いあいだ見続けてきているが、これほどお粗末な首位チームを見た記憶がない。言い換えれば、これほどひどい2位のチームも見たことがないことになる。クラブ史上、最も素晴らしい選手をバランス良く取りそろえた最高のチームであるはずのバルサ、それがどういうわけか2位のチームとなっている。

アルメリア戦を前にしてライカースタッフはいつもと違うことをしている。これまでの4年半、試合前日の練習のみがメディアシャットアウトとなり非公開練習日となっていた。だが、今回は日曜日のアルメリア戦を前にした2日前の金曜日から非公開練習としている。金曜日1時間半の練習と土曜日午前中の練習を非公開練習とし、ライカースタッフがおこなったのは戦術的プレーの練習だったと言う。つまり、セットプレーなどの攻撃・守備に関する練習をマジにやろうとしたフシが見られる。そして皮肉なことに、アルメリア戦の2失点はすべてコーナーキックからのものだった。絵に描いたような“付け焼き刃”とは、こういうことを言うのだろう。

アルメリア戦後の記者会見で、オウム・ライカー監督は相も変わらず次のように語っている。
「選手たちは最後の最後まで必死になってよく戦ってくれた。普通のフエラの試合であれば2点を入れれば勝てるのに、残念な結果となってしまった。これからも努力していくしかない。」
毎度毎度のライカーセリフ。しゃべる方はあきないのだろうが、聞く方はもうウンザリ。この監督に“今日のバルサ”や“明日のバルサ”を期待するのは冗談が過ぎる。ソシオはバカじゃない。

オウム・ライカー監督のあとに記者会見場に出てきたアルメリアの若い監督の言葉を聞いているうちに、ラウドゥルップがバルサ戦の後に、とあるメディアのインタビューに応じて語っていたことを思い出した。まったく同じようなことを言っている。
「ヘタフェの選手とバルサの選手一人一人を比べたら、内容、質、センス、エトセトラ、エトセトラ、その違いはとてつもなく大きい。もちろん、その差を毎日の練習で埋めることは不可能だから意味のないことだ。したがって、私が毎日の練習で選手たちに要求しているのはそういうことではない。いかにヘタフェの選手とは言え、彼らもまたこのフットボール界のエリート選手であるわけで、そのエリートプロ選手が最低限可能とするプレーに磨きをかけることが、私の使命だと思っている。それはどういうことか。チームを指揮する監督のフィロソフィーに基づいたプレー内容を煮詰めること。最低限おこなわなければならないことを、可能な限りレベルの高いものとしていくこと。この二つ。」

「誰が相手であれ、目指すことは同じ。可能な限りのボール支配を心がけること。左右の空いたスペースを利用することを常に心がけること。決してミスを恐れず勇気を持ってプレーすることを心がけること。単にボール回しをするのではなく、規律に基づいた意味のあるボール回しを心がけること。そして最も大事なこと、それは常にボールが主役となるプレーを展開すること。これが、選手時代からの自分のフィロソフィーであり、監督となってもそれは変わらない。」

「テクニック的には大きな差があっても、我々の選手がバルサの選手と同じようにできることはいくつかある。相手選手にプレッシャーをかけること、スピードあるパス回しをすること、相手選手より先にでて有利なポジショニングをすること、集中力を切らせないこと、そしてモチベーション豊かに90分間戦うこと、エトセトラ、エトセトラ。これらのことが最低限おこなわなければならないことだ。そしてそれが満たされたとしたら、我々でもバルサに勝利することができる。」

いわゆる名のない選手で構成される弱小チームでありながら、誰もが予想できなかったほどの活躍を見せることがある。こういうチームを率いる監督が「選手たちは最後の最後まで必死になってよく戦ってくれた。これからも努力していくしかない。」と語ったとしたら、それは確かに説得力がある言葉だ。だが、バルサの監督であるオウム・ライカーが、聞く者にとって耳にタコができるほど毎試合毎試合この言葉を繰り返すのは、まったくもって説得力がない。億万長者であり、限りなく名声があり、才能的に素晴らしいものをもち、どこのクラブに行ってもスタメン選手となれる現在のバルサの選手に、この監督が“努力”を要求したことがあるのだろうか?そしてこの監督を頭とするコーチングスタッフが果たして“努力”したことがあるのだろうか?

答えがでました。それはノーです。それでもへたすりゃ、いや、うまくいけば、トリプレッテの可能性も残っている不思議なチームです。


明日のバルサ(その5)
(08/03/16)

モウリーニョの1週間は、すべて次に対戦する相手チームの研究につぶされる。かつてバンガールのコーチとして働いていた時代、親分と彼はカンプノウオフィスに朝の9時から夜の9時まで缶詰状態となっていたのは有名な話だ。バンガールもまた相手チームの研究に余念のない監督の一人だった。モウリーニョの相手チーム研究はどのような教材でおこなわれるか。それはここ最近10試合のビデオをみることから始まる。非常に長くて退屈な時間。だが、彼にとってはどうしても必要となる基本的なことだ。相手のチームの戦いぶりを研究することで、どこに弱みがあり、どこに気をつけなければならないか。ドリブルをしながら左にいく傾向のある選手、あるいは右に向かう傾向のある選手、コーナーキックの際には誰がどの位置に配置され、どのように攻撃を防ごうとしているのか、このビデオ研究で出された結論に、実際に試合観戦にいったコーチスタッフの意見が加えられ、レジュメとしてまとめられることになる。これが各選手に配られることになるのはもちろんだ。そしてそれをもとに最後の練習が何回か行われ、週末の試合へと突入していく。
ライカースタッフの仕事時間は非常に短い。密度が高いかどうかは別として、1日だいたいが3時間と言われている。そして試合前日は、彼らもまた相手チームのビデオ研究することにあてている。

4−3−3システムというのは彼のお気に入りだが、絶対のシステムではない。プレステージの前の段階で20人前後の選手の分析をおこない、それらの選手にあったシステムをプレステージで試していく。もし、左右のサイドを務めるスピードある選手がいないとしたら、4−3−3システムは効果的でも効率的でもなくなる。もし、二人のゴレアドールがいたとしたら、4−4−2システムはより効果的なものとなる。もし、スピードのあるデランテロと背の高いフィジカルに優れたデフェンサがそろっていたとしたら各ラインは低いものとなり、テクニック的に優れたデランテロとスピード豊かなデフェンサ陣がいたとしたら、各ラインはより相手ゴールに近いものとなる。各選手の特徴を分析しながら、プレステージを通じて最終的に出された最も効果的なシステム、それが彼にとってシーズンをとおしてのAプラン。だが、常にBプランを準備しているのもモウリーニョの特徴の一つだ。システムは絶対のものではなく、状況に応じて変化を生むBプランが絶対必要だと考える。
ライカースタッフのアイデアは少々異なる。どちらが良いか悪いかは別として、違うアイデアを持つ。4−3−3というシステムは絶対譲れないものであり、それがライカーバルサのフィロソフィーだととらえる。したがって、もし基本となる選手が何らかの理由で欠場することになっても、そのポジションに他の選手を配置することでシステムそのものは維持させている。そのアイデアのマイナス面はロナルディーニョ、エトー、アンリという三人を、彼らの持つ特徴を考えずオートマチックにポジションを振り分けていることに見られるだろう。“練習したことがなかった”と、何人かの選手が試合後に語っていた3−4−3システムでの試合があったが、そういう思いつき以外には、当然のことながらBプランは存在しない。

誰もが知っているように、モウリーニョは挑発者でもある。敵を挑発することによって己のモチベーションを更に高くさせようとする挑発者だ。挑発を受けるのは相手チームの監督や選手だけではなく、審判やメディアに対しても同じように襲いかかる。どこまでも高慢で誇り高く、敗北の仕方を知らない無礼者でもある。だが、その持って生まれたキャラクターを武器とし、選手たちが受けるであろう厳しいプレッシャーから彼らを守るために、己一人でそのプレッシャーを受け止めようとする戦術家でもある。したがって、味方も多いが敵の数も多い。中途半端な存在は許されない。それがモウリーニョの良さであり、ハンディーとなるところでもある。
4年と半年、これまで見てきたフラン・ライカーという人物は、基本的に温厚な人物として良いのだろう。挑発というような単語は彼の辞書にはないし、挑発行為を浴びせられたとしても、外側から見る限り平然としている人物だ。ただ“彼が怒り出したら逃げるしかない”とアリゴ・サッキが語っているように、激情すると怪物に変身するらしいが、これまでバルサではその怪物に変身した姿を見せたことはない。あくまでも、すべてを丸く収めるために、世の中常に平和であるために、トーンの高い発言をして波風を立たせることはない。彼がバルサの監督に就任して以来、このクラブには珍しく、バルサファミリーに平穏の時期が続くことを可能としてくれた。

多くの点で180度の違いが見られる二人の監督。どちらが良く、どちらが悪いというわけでもない。ただ一つ言えることは、モウリーニョがいかに戦術家であると共にプロ精神に富んだ監督であるとは言え、そして監督としてライカーよりも優っているイメージがあるとはいえ、それはタイトルの獲得を約束してくれることを意味しないことだ。事実、チェルシーでは想像を絶するほどの資金を投入し、彼好みの選手を獲得してチーム構成をしたにもかかわらず、チャンピオンズのタイトルを獲得したのはライカーバルサだった。

果たしてモウリーニョがバルサに来ることになるのかどうか、それは神のみぞ知ることになる。インテルに、ミランに、ユーベに、あるいはレアル・マドリに行く可能性もあるようだし、そもそもラポルタ政権が本腰をを入れて獲得に乗り出すことになるのかどうかもわからない。ライカーがクラブを去ることことになるのかどうかさえわからない現段階だ。だが、ライカーのサイクルは確実に終わりに近づいている。多くの人々が昨シーズンの終了を持って彼のサイクルの終焉を予想していたが、いずれにしても彼のサイクルを終焉を迎えている。トリプレッテ(リーガ、コパ、チャンピオンズ)を達成すれば超素晴らしいし、二つのタイトル、あるいは一つのタイトルでも獲得してサイクルを閉じれば、それはもう、バルサファミリーにとって最高のサヨナラパーティーとなるだろう。

■アルメリア戦招集メンバー
バルデス、ピント、オラゲール、プジョー、ミリート、トゥラン、アビダル、シルビーニョ、エドゥミルソン、チャビ、イニエスタ、グジョンセン、アンリ、ボージャン、エトー、そしてバルサBからビクトル・バスケス、ビクトル・サンチェス、ペドロの3人を加え合計18人。R10がいないこの試合、勝てそうな予感。


明日のバルサ(その4)
(08/03/15)

バルサ監督4年間で、リーグ優勝2回・チャンピオンズ1回という栄光ある成績を残しているフラン・ライカーだから、クラブ史に名を残す名誉ある監督で“あった”ことは間違いない。だが、物事に永遠というものがないように、バルサの監督の座にも永遠という言葉はない。いや、それどころか、一つのサイクルはとてつもなく短い。ここはイングランドではないから、ファーガソンという存在はあり得ない。良いときもあれば悪いときもあり、再び良いときが来るまで待とうという発想もない。もし、期待したとおりに機能しないのであれば、それは一つのサイクルの終焉を意味する。今シーズンを含めると5年目となるライカー監督が、現在のスペインリーグで最も長期にわたって監督を務めている一人であるということがそれを証明している。そして、その彼にもサイクルの終わりがやって来ている、そう多くのバルセロニスタが考える。もちろん次にやって来るサイクルの特徴となるものは、前回のサイクルと正反対のものでなければならない、あらゆる意味での厳しさ、プロ精神、厳格さ、規律、統制、犠牲精神、団結、ライカースタッフに欠けていたこれらのものを求めることになる。

「今のライカーバルサがプレミアにやって来ても、彼らがリーグ優勝できる可能性はスペインでのそれに比べればとてつもなく低いものになるだろう。同じように我々(チェルシー)がスペインリーグに参加したとしても、優勝の可能性は少ないものとなる。それぞれのリーグにはそれぞれスタイルがあり、それを見きわめた上で勝ち続けることのできるフィロソフィーとシステムを採用していかなければならない。」
ライカーバルサが初のリーグ優勝を達成した2004年、こうモウリーニョは語っている。
ライカーの口からはもちろんこの言葉は出てこない。何はなくとも4−3−3、例え、エストレーモとして見栄えする選手がいなくても、エジプトであろうがオーストラリアのクラブであろうが、システムは4−3−3。

モウリーニョの理想とするチーム構成、それは22人、あるいは23人という多くの数の選手によって構成されるものではなく、どちらかと言えば少数精鋭主義と言える。彼の信頼を勝ち取っている20人弱の選手によって構成されるモウリーニョ・チーム。決して彼のプロジェクトから外れるような選手がいてはいけない。少数ながらすべて計算内となっている選手でチームが構成されていなければならない。もちろん三つのタイトルを争うことを義務づけられているバルサだから、ある程度のローテーションを組む必要がある。疲労困憊気味となっている選手がいたとしたら、当然ながら休ませなければならない。だが、彼のローテーションの基本は別のところにある。相手チームを分析した結果によって得る戦術的な意味での選手起用がそれであり、毎日の練習で調子が良さそうと感じた選手の起用も特徴の一つと言えるだろう。彼にとってロッカールーム内の統制をとる手段は、決して八方美人的に選手をあつかうことではなく、その時点で最高の調子を維持している選手を起用することだ。選手名が優先されることはなく、あくまでも一人のプロ選手として同等に扱うことにより、選手からの信頼を勝ち取ることに成功してきている。
ライカースタッフはオートマチック的にローテーションシステムをとらえている。前の試合ではA選手を休ませたから次の試合はBの選手。そして次の試合はCの選手というような交代制だ。この発想には、もちろん相手チームを分析してのローテーションというイメージはない。しかも練習内容がどうであれ、名のある選手は自動的にスタメンとして起用されることが多い。好調さを発揮していたグジョンセンが、“クラック選手”の復帰と共に影を薄くしていった事実がそれを証明している。

練習時間は決して長くない。プレミアのチームの中で最も短かったのが、モウリーニョ・チェルシーだ。フィジカルトレーニングもそれほどおこなわれていない。それは練習時間外に各選手が最低限おこなっていなければならないものだし、この練習時間内にジムにこもる選手など問題外となる。なぜならジムでのトレーニングは、練習時間外に各選手が自らの判断によっておこなうものだからだ。彼にとって1時間半、あるいは2時間という短い時間を利用しておこなわれる練習内容は、常に試合を想定した基本的モデルを煮詰めることにある。つまり戦術に基づいたモデルの完璧さを追求することが、毎日の練習内容となる。一人一人の選手が何を求められ、そして何をしなければならないか、あらゆる場面を想定してのシュミレーションが内容濃くおこなわれる。
「練習時間はバルサとほぼ同じだが、その密度はまるで違う。」
そうベレッティが語っている。そしてモウリーニョにとっては、毎日の練習は選手だけのものではなく、監督としての彼にとっても練習時間となる。もしミニゲームがおこなわれるとすれば、彼はそのゲームを観察しながら選手交代やポジション変化を指示することで、ゲームの流れを変える監督としてのシュミレーションをおこなっている。
ライカーバルサの練習時間も短い。だが、決して密度の濃い内容とはお世辞にも言えない。タイトル獲得に飢えた選手が多く、まだ“満腹”状態になっていなかった状態では、それはそれで活気ある内容となっていた。だが、多くのものを勝ち取り、すでに“満腹”状態となっている選手がいる状態ではそれも望めない。しかも、ジム籠もりや、何らかの理由をつけて練習をさぼっても“内部規律”がないから、たいした問題ともならない。そう、名目上にしか存在していない“内部規律”に見られるように、各選手の管理能力に欠けるライカースタッフと言われてもしょうがないだろう。それはビジャフランカでおこなわれたエトーの爆弾発言事件や、R10やメッシー、あるいはデコの過剰な夜遊び病を放置していることにも見られるが、例をあげたらきりがない。つい最近でも、ビジャレアル戦で試合終了を待つことなくスタジアムを後にしたアンリ事件もほったらかしだ。


明日のバルサ(その3)
(08/03/14)

ここ何か月も沈黙を守っていた時の人モウリーニョが、つい先日メディアの前に登場してきた。バレンシアでおこなわれたアディダスのプロモーションに参加してきた彼は、スペインメディアを前にしていくつかの興味深いことを語っている。ライカーとかエウセビオという変化球タイプとは違い、バンガールとかモウリーニョはクセのある球ながら直球一本で攻めてくるタイプ。決して八方美人的な言い回しはしないし、嘘をつかなければならないときは何も語らず沈黙してしまう。そのモウリーニョがチキとの接触を聞かれても否定していないところを見ると、やはり噂どおりバルサも彼の獲得に興味を示してるのだろう。

バルサとの接触はもうすでにあるのか?
チキとマーク・イングラに会ったのは確かなことだ。だが、彼ら以外にも多くのクラブ関係者と会っている。フットボール界に生きる人間として当然のことだし、来シーズンはどこかのクラブで監督を務めることになるのも確かなこと。私が現在おこなっていることは、イングランドをはじめ、スペイン、イタリア、ポルトガルのそれぞれのリーグ戦やチャンピオンズの試合を見ながらクラブ分析すること。プレステージに入る前に、知り得るすべてのことを知っておきたいし、自分なりのチームにするために細かい分析が必要だからだ。だが、もちろん、具体的にどこのクラブと交渉したとか、口頭で何かを約束したとか、あるいは仮契約をおこなったとかいうことは一切ない。現在の心境としては、スペインかイタリアのビッグクラブで指揮を執りたいと思っている。

クラブを決めるさいの最優先事項は何か?
最も重要なこととなるのは、あくまでもそのクラブが自分を必要としているのがはっきりしていること。何の疑いもなくモウリーニョという監督を必要としていること。それは100%でなければならない。つまり、クラブ首脳陣内に自分の監督就任に反対する人物がいたり、クラブに影響力のある人物が疑問を抱えているようでは100%とは言えない。クラブ会長から道具係に至るまで、すべてのクラブ関係者が一つの方向に向かって進む決意があること。そして何よりも彼らすべてが自分に対して信頼感を持っていること。それを的確に示したクラブに行くことになるだろう。

いつ決断することになるのか?
それは適切な時期にとしか言いようがない。もちろん早ければ早いほど良いし、今シーズンが終了する間際までグダグダしているつもりはない。自分の獲得に興味を示すクラブが、具体的に“最優先事項”をはっきりと示してくれてから、こまかい分析に入ることになるだろう。先ほども触れているように、自分も含めて自分を助けてくれるコーチングスタッフにはじゅうぶんな準備期間が必要だ。プレステージに入る前には、すべてのプランニングが整っていなければならない。

モウリーニョは守備的な戦いをする監督という評価があるが?
守備的か攻撃的かを決めるのに、次のようなことを持って判断する傾向がある。しっかりとした規律と、各選手に要求される犠牲精神がはっきりし、そして戦術的に明確となっている戦い方をするチームを守備的、規律や戦術がはっきりしていないものの、個人の選手の才能を優先して戦うチームを攻撃的とする傾向だ。もし、その傾向を持って語るなら、自分のフットボールは守備的と言っていい。だが、自分はその発想を間違ったものだと思っている。確かに自分が指揮してきたチームは失点が常に少ない。だが、それは守備的ということではなく、全体のバランスがとれている証明となることだと思っている。自分は4−3−3というシステムが好きだし、4−2−3−1というようなドブレ・ピボッテを配置する戦い方をしたことがない。相手選手にプレッシャーをかけること、可能な限りのプレッシャーをかけること、特に相手デフェンサに強力なプレッシャーをかけること、それが自分のフットボールであり、決して守備的なフットボールではないと信じている。

モウリーニョがバルサというクラブに特別の関心を持っていることは、秘密でもなんでもない明白な事実だ。ロブソン、バンガール時代を通じてコーチをしていた彼は、他の誰よりもバルサというクラブを知り尽くしている監督であり、そしてバルセロナにはいまだに多くの友人たちがいる。いつだったか、時あるごとにショートメッセージやEメールを交換し合っていると、チャビとプジョーが語っていた。彼がバルサにいた頃のクラブ職員からの受けも非常に良いと聞いている。

多くのバルセロニスタの間から“モウリーニョ待望説”が生まれてきている。チェルシー監督モウリーニョに対してあれほど強烈な罵声を浴びせたバルセロニスタが、いまなにゆえ彼の獲得を望むに至ったのだろうか?


明日のバルサ(その2)
(08/03/13)

2006年3月18日、バルサはレアル・ソシエダとの試合をアノエタで戦っている。リーグ戦では、すでにこの時点でレアル・マドリを大きく引き離していたライカーバルサだが、この試合から10日後にはチャンピオンズ準々決勝ベンフィカ戦が控えていた。プジョーはカード制裁を喰らっていたためベンフィカ戦には出場できない。モッタはいつものように負傷している。しかもこのソシエダ戦でマルケスが負傷退場するというハプニングが起きていた。そして後半40分を過ぎたあたり、エドゥミルソンもまた倒れてしまった。デフェンサ・セントラル、そして守備的ピボッテの数が足りなくなってきたライカーバルサ。

倒れたエドゥミルソンを手当てしていたメディコはベンチに向かって交代の要求を出している。だが、バルサはすでに3人の交代を済ませていた。残り試合時間5分程度、スコアは0−2でバルサが勝利している状態であり、エドゥミルソンがベンチに下がって10人で戦ったとしても試合結果には変化が起きないであろう状態だった。そう理解したエドゥミルソンがベンチに向かって歩き始めたとき、ベンチから飛び出したテンカテが彼に向かって叫んだ。
「今は戻ってくるな!タルヘッタだ!タルヘッタ!」
エドゥミルソンはすでに4枚のタルヘッタ・アマリージャを持っており、もう一枚もらうと一試合の出場停止処分となる。負傷のために試合に出場できなくなるのはせいぜい1週間か2週間。戻ってきたときに“きれいな体”となっているように、この試合でタルヘッタをもらってこい!、というテンカテの指示だった。トコトコとグランドに戻った彼は2分後にタルヘッタをもらい、それからベンチに下がっている。

カンプノウ・セルティック戦で倒れたメッシーもまたリミットのタルヘッタをもらっており、この試合で一枚獲得することができたなら、負傷から戻ってきたときには“きれいな体”となっていた。もし、バルサがチャンピオンズ準々決勝戦に勝利することができれば、メッシーは準決勝戦には負傷から戻ってきて出場できる。そしてもし準決勝第二戦にタルヘッタをもらったりしたら、彼は決勝戦には出場できない身となってしまう。負傷し泣きじゃくっているメッシーを、再びグランドに戻しタルヘッタをもらって来いというのは残酷なことかも知れない。例え、テンカテがライカーの隣に座っていたとしても、ベンチを飛び出すことはなかったかも知れない。だが、2−3というスコアーで勝利していたグラスゴーでのセルティック戦では、間違いなくテンカテはタルヘッタ獲得の指示を出していただろう。少なくとも、メッシーとヤヤがタルヘッタにリーチがかかっている事実も知らされていなかったという情けない状況は、優秀なコーチングスタッフがいたとしたら生まれていないはずだ。ライカースタッフのプロ精神の欠如をこの一つの事実で見ることができる。

フットボール部門最高責任者となったマーク・イングラは、この事実を聞いて怒り狂ったという。負傷したメッシーのアルゼンチン帰りを最後まで反対したのも彼だと言われている。私生活を含めた、選手たちのプロ精神に基づいた行動を徹底化させると共に、ライカースタッフにもプロ精神の追求を要求することを目的としてこの役職に就いたマーク・イングラ。残念ながら、就任してから3か月以上たった今でも、その目的は達成されていない。
「この手の負傷を防ぐ手段は、医学的なことは別として、選手個人がキッチリとした日常生活をおくることが最低限必要なことだ。」
メッシーが負傷した翌日、スポーツ・ディレクターのチキがそうメディアを前にして語っている。まるで“街の噂”としてあったメッシーのプロ精神に欠けた夜遊びを、間接的に批判するかのような発言。決してメディアには登場しない“街の噂”は、嫌がらせを目的とした嫌らしい噂の場合もあるし、事実の場合もある。メッシーに関するその手の話も本当かどうかは関係者のみ知ることとなる。いずれにしても、マーク・イングラはメッシーを“管理”しやすいバルセロナに留めておくことを強調したという。だが最終的に、ライカースタッフのOKがでたことにより、メッシーは一時的にアルゼンチンに帰国することになった。

マーク・イングラとフェラン・ソリアーノは、カタルーニャのとある企業の共同経営者でもある。切っても切れない関係にあるこの二人が、プロ精神の徹底を求める意味で、モウリーニョ獲得に動いたとしても不思議ではない。事実。来シーズンからのモウリーニョ獲得を訴える中心人物が、この二人だと言われている。次回の会長選挙で現政権延命路線を願うラポルタ会長としては、会長候補となるであろうソリアーノの意見は誰のそれよりも重い。例え、クライフが反対したとしても、ソリアーノ擁護にまわる価値がある、と考えるであろうラポルタ会長。

今年の初め、チキとイングラ、そしてモウリーニョと彼の代理人ホルヘ・メンデスの4人が会合を持っている。そしてそのことをモウリーニョはつい最近おこなわれたインタビューで認めている。


明日のバルサ(その1)
(08/03/12)

バルサ会長の任期は最高二期までとクラブ規約にある。会長自らが何らかの理由で辞任したり、あるいはチームの成績不振に怒りを発したバルセロニスタの怒濤のようなプレッシャーの前に、理事会解散→会長選挙という楽しい事態が訪れなければ、現在の第二次ラポルタ政権の終焉がやって来るのは2010年。そして、同時に、クラブ会長選挙戦が戦われることになる。今から約2年後のことを近い将来とするか遠い将来とするか、それは人によって異なるだろうが、会長の座を去る者、そしてその座を狙う当事者たちにとって、それはかなり目前のことだ。

「人生最高の瞬間を迎えている。」
何年か前に、あるトーク番組に出演したラポルタが、クラブ会長に就任してどのような毎日を送っているかと聞かれて、このように答えている。そのラポルタは、次回の会長選挙に出馬することはもちろんできない。現在の彼が目指すもの、それは“人生最高の瞬間”を可能な限り楽しむことであり、そしてクラブを離れた後の生活を射程におき、現在の地位をひたすら有効に利用することにある。民主主義のもと、ソシオの投票によって選出されたクラブ会長としての当然の権利でもある。

父を弁護士に持つごく普通の家庭で生まれ育った彼に、日本円にして何億という、会長候補出馬の際に必要だった保証金を用意することはもちろんできなかった。会長選挙に名乗り上げる数年前までは、バルセロナの日本領事館でアルバイトをしていた彼であり、一介の弁護士でしかなかった彼に、そんな資金を用意できるわけがない。だが、カタルーニャの大富豪の一つであるエチェベリア家の娘を女房とした彼だから、その保証金は女房の実家から借りることに成功している。そして会長に選出されてから5年強たった現在、彼は40歳チョイの若き実業家(“Fainancat”という名のファイナンス会社の会長。2007年の総売上が2000万ユーロで、400万ユーロの利益があったと、どこかの新聞で読んだ記憶がある)へと変貌し、そしてカタルーニャ民族主義政党から、“政治家としてのオファー”がいくつか来くるまでになった。UEFAやFIFAへのコネ作りもここ1、2年、精力的におこなっているし、バルサのエスクードをバックボーンとし、ユネスコ大使もどきの活動も盛んにおこなっている。忙しい、忙しい、とてつもなく忙しい。

2010年に任期を終えることになるラポルタ会長が抱く最大の夢、それは“ノウ・カンプノウ”の生みの親として、クラブ史に名を残すことにあるらしい。ミニエスタディをぶっ壊し、スポーツ施設用途地から住宅用途地へと土地用途変更を要請し、その土地にいくつかのビルをぶち建ててマンションとし、それを売却した資金を元にカンプノウの化粧直しをおこなってようやく完成する“ノウ・カンプノウ”作戦。バルセロナ市やカタルーニャ自治州の工事許可が下りるには、早くて今から1年、時間がかかれば2年かかると言われているから、ひょっとすると工事が開始されるのは、会長就任時ギリギリとなる可能性もある。

2010年まで会長席にゆったりと座り続けるためには、平穏無事なバルサであり続けなければならない。チームがそれなりの成績を残していけば、それはもちろん可能となる。バルセロニスタをはっきりと二分し、身内同士が敵となって戦う市民戦争のような状況は御免だ。ヌニェス政権時代に対抗勢力の親分となって市民戦争をおこしそうになった彼だから、経験上そのことは誰よりも認識している。その意味で、フラン・ライカーはキャラクター的に最も相応しい監督となる。背広組と問題を起こすことはもちろんないし、選手ともファンともメディアとも揉めることのない平和大使だ。これがライカーではなく、もっと強烈なキャラクターを持った監督であったなら、例えばバンガールとか、あるいはモウリーニョとか・・・。いや、どんなキャラクターを持った監督であれ、ゴールが決まりさえすれば問題とはならない。チーム成績が満足できるものであるならば、何の問題ともならない。だが、もしゴールが外れまくり、試合に勝てない日が続いたとしたら、ライカー監督時代とは比較できないくらいの大問題となる。試合内容がバルセロニスタ好みのものでなかったら、さらに問題は大きくなる。バルセロニスタを二分し、そしてカンプノウには白い花が咲きまくり、糾弾の叫びはパルコに向けられる。言動が問題となったり、メディアとうまくいかなかったり、ファンの心をガッチリつかむ器量に欠けている監督を招聘するのは、安定政権を望む会長にとっては非常に危険な賭けとなる。できることならライカー続投、それが一番となるのは非常にわかりやすい発想だ。

そのライカー監督との契約は2009年までだが、問題は契約内容だ。なぜなら1ユーロも支払うことなく、どちらからでも一方的にその任期を無効にできる契約内容となっている。つまり、彼がもう監督はやりませんと言えば、翌日からでも自由にクラブを離れることが可能となっている。過去に、オランダ代表監督の座を突然のごとく辞任したライカーでもある。したがって、否が応でもいざというときの準備をしておかなければならない。2010年まで会長を続けるために、ソシオが希望する最低限のチーム成績を残し続けなければならない。そのためには、今から監督候補を絞っていかなければならぬ。そしてその想いは、現在のラポルタ政権内にいる人物たちで、次の会長選挙に打って出ようとする人々にとっても重要なテーマだ。会長選挙がおこなわれる2010年、もしチームが快調に走り続けているとしたら、選挙権を持つソシオたちは大きな変化を望まないだろう。したがって、ラポルタ解散政権の中から出馬してくる人物を選ぶ可能性は大だ。だが、もし、チーム成績が最悪の状態となって選挙日を迎えたとしたら、ソシオたちは新しい血を選択するに違いない。その意味するところは、ラポルタ政権に加わっていない、外部からの会長候補を選択する可能性が大きいことになる。次期会長の座を争う戦い、金庫番フェラン・ソリアーノとコンビを組むであろうマーク・イングラ、それに対抗するサンドロ・ルセーの戦いはもうすでに始まっている。


ビジャレアル戦
(08/03/09)

去年の9月に“ロナルディーニョの復活はベンチから”、今年の1月に“チャビの復活もベンチから”という暖かいベンチコールを送ってきたが、ここ最近、その二人がそれぞれ違う意味で“復活”してきている。

10年間にわたって、どの監督からも絶対スタメンの保証を得てきたチャビには、何らかの刺激が必要だったのだろう。シロウトでもそのくらいのことは想像できるのだから、いかにライカーコーチングスタッフと言えども、プロの人たちだからそれくらいのことは気がつくだろうし、効果的ではない選手を起用し続けるほどチームに余裕はなかった。今シーズン、体調の問題ではなく戦術的な問題で初めてスタメンを外されたのが、1月20日のラーシング戦。それからリーグ戦2試合、国王杯2試合、チャンピオンズ1試合と、途中交代要員となったりベンチスタートとなったりし、そして気がついてみれば、決定的なゴールまで決めるようになっていた。もちろん彼はゴレアドールではない。彼の復活の兆候は、デビュー当時のように“足を突っ込む”プレーが見られたり、ボールを持っている選手の3m横に審判のように立っているだけではなく、ボールを取りに行く姿勢が見られ始めたことによる。チャビの復活はバルサにとって大いなる朗報だ。

ロナルディーニョの“復活”もそれなりに訪れている。03年型ロナルディーニョに比べれば60%にも満たない活躍度だが、08年新型R10としてみればほぼ90%の出来だろう。これ以上バルサ選手としての彼に多くのことは望めないし、100%の壁を破る方法は、新たな環境の元で刺激豊かに新R10として出発するしかないと思う。だが、予想は常に外れるもの。もし、R10がバルサの快進撃に更に効果的な選手と変貌したとすれば、もちろんそれに越したことはなし。

だが彼らの“復活”と時期を同じくして、逆に下降ラインを描き始めた選手が二人。それはイニエスタとプジョー。プジョーの場合はここ最近でもなく、昨シーズンから下降気味だ。これが単に一時的に不調時期を迎えているだけなのか、あるいは年齢からくるものなのか、そこら辺は推測不可能。

ただ、イニエスタはまだ24歳の選手だから、彼の場合は年齢とは関係ない。何か関係あるものを探すとすれば、つい最近おこなわれた2014年までの長期にわたる新契約しか見つからない。ジンクスというのか、何というのか、新たな契約を結びなおした選手に、一時的に不調な時期が訪れることがよくある。“終身契約”という不可思議な契約を結んだラウルとカシージャスが以前ほど活躍を見せなくなったように、契約交渉を終えたばかりのイニエスタもまた活躍度が下がってしまった。もうここ1か月前後、彼らしいプレーが見られなくなっている。だが、彼の場合は時間が解決してくれると信じよう。もうそろそろ本来のイニエスタが見られるかも知れない。

メッシー不在のマイナス面は、レオ・メッシーという偉大な選手がグラウンドに登場してこれないということだけではなく、彼の代わりに入る選手がいないことだろう。左にアンリ、真ん中にR10,右にエトーというような最近見られるトリデンテは最も機能し得ない典型的なものであり、誰一人として彼らの自然なポジションに配置されていない最悪のトリデンテだ。名のある選手を優先しようとするライカー・ニースケンス・エウセビオのお茶目トリオのアイデアなのだろうが、メッシーの不在から来る最悪の結末がこれだ。左はイニエスタかR10,真ん中はエトーかアンリ、そして右はメッシーのみ。何回も言っているように、ジョバニは決して右サイドの選手ではない。そうであるならば、無理矢理4−3−3システムというのにこだわる必要もないだろう。バルサのフィロソフィーは、システムと無関係に“攻撃的なチーム”ということで理解すべきであり、そして同時にBプランを常に持ってしかるべし。チームの持つフィロソフィー次第で、例えシステムがどうであれ、守備的になったり攻撃的になったりする、とシロウトは信じるのであった。

さて、ビジャレアル戦。バルサドクターの説明によれば打撲(打ち身!打撲!)という、R10でさえ毎試合抱えている“負傷”が原因で、すでに1か月ぐらい顔を見せていないマルケスが、この試合にも出場できないという。打撲!が原因でこれほど長く休んでいるのはギネスブック入りと思われるが、そのギネス選手に加えてヤヤさんも負傷気味とのこと。そして期待していたエドゥミルソンはカルデロンでの試合で確認できたように、まったくあてにならない。したがって、ここは思い切ってCプランを採用し、イニエスタをペップにしてしまおう。

ビジャレアル戦用最強メンバー11人。


三つの偶然
(08/03/08)

■期待を抱かせる偶然
スペイン国王杯の歴史は古い。最初に開催されたのが1902年と言うから、これを書いている当人も、そしてこれを読んでいる人たちも、まだこの世に誕生していない時代からおこなわれている。そしてその歴史ある国王杯を手にしている数が最も多いクラブは、そう、我らがフトボール・クルブ・バルセロナであり、優勝回数は24回となっている。何年に優勝しているか、それを24個も列記するのは大変なので60年代から見てみよう。 

1963年 バルサ3ーサラゴサ1(カンプノウ)
1968年 バルサ1−マドリ0(ベルナベウ)ヘッヘッへッ!
1971年 バルサ4−バレンシア3(ベルナベウ)
1978年 バルサ3−ラスパルマス1(ベルナベウ)
1981年 バルサ3−ヒホン1(カルデロン)
1983年 バルサ2−マドリ1(ロマレダ)ヘッヘッへッ!
1988年 バルサ1−ソシエダ0(ベルナベウ)
1990年 バルサ2−マドリ0(カサノバ)ヘッヘッへッ!
1997年 バルサ3−ベティス2(ベルナベウ)
1998年 バルサ1−マジョルカ1(メスタージャ)

そうなのだ、1968年以来8が一桁の年には必ず優勝しているのだ。そして今年は何と2008年。もう優勝は決まっているのかも知れない。

■不安になる偶然
国王杯の戦いが期待を抱かせる偶然を見せてくれるなら、リーグ戦の方はチョイと不安になる偶然がある。前にも触れたことがあるが、イングランドチャンピオンとスペインチャンピオンの間に奇妙な偶然関係がここ最近見られるからだ。2001−02シーズンから昨シーズンまで、イングランド優勝チームとスペイン優勝チームを列記してみよう。

2000−01 マンチェスタU / レアル・マドリ
2001−02 アーセナル / バレンシア
2002−03 マンチェスタU / レアル・マドリ
2003−04 アーセナル / バレンシア
2004−05 チェルシー / バルサ
2005−06 チェルシー / バルサ
2006−07 マンチェスタU / レアル・マドリ

そしてこれまでの今シーズンの順位を見てみると・・・
1位 アーセナル・・・・65p
2位 マンチェスタU・・64p
3位 チェルシー・・・・58p

バレンシアがリーグ優勝する可能性はまったくないから、アーセナルもなし。だからマンチェスタUかチェルシーとなる。ここは一つ、神話ベレッティさんが、再び神話を作ってくださることを期待。

■疑いたくなる偶然
メッシーの負傷に関する偶然は、少々重たいものがある。上の二つが本当に偶然としても、この偶然は単なる偶然とは思えないところが恐ろしい。2006年以来、レオ・メッシーは6週間以上のリハビリを必要とする負傷に4回倒れている。そして負傷に倒れる4回の試合の前の試合には、必ず大事をとって試合を休んでいるのだ。これまでのメッシーの起用法を見れば、ライカー監督にとって、余程のことがない限り絶対のスタメン選手となっているから、ライカー監督お得意のローテーションが原因と言うよりは、明らかなドクター指示と思われる休養をとっている。そしてその次の試合で、6週間以上の負傷に倒れてしまうのだ。

・2006年03月04日
  コルーニャ戦不出場
・2006年03月07日
  チャンピオンズ・チェルシー戦で10週間の負傷退場

・2006年11月08日
  国王杯バダロナ戦不出場
・2006年11月12日
  サラゴサ戦で12週間の負傷退場

・2007年12月12日
  チャンピオンズ・ストゥットゥガルト戦不出場
・2007年12月15日
  バレンシア戦で6週間の負傷退場

・2008年03月01日
  At.マドリ戦で後半30分間だけプレー
・2008年03月04日
  チャンピオンズ・セルティック戦で6週間の負傷退場

この“偶然の出来事”から何を学び、どのように解決策を出せばよいのか。
1.ドクター連中が何を言おうと、メッシーは毎試合出場させる。
2.一試合だけではなく二試合以上続けて休ませる。
いやいや、何かもっと根本的な解決策を専門家に考えてもらわないと・・・。


なんてこったい!
(08/03/06)

試合前々日、前日、そして当日でも窓口でチケットが買えたセルティック戦。売り出されたチケットのほとんどは“シエント・リブレ”方式によるもの。この方式はソシオ・アボノ(年間指定席所有者)の人たちが、“今日は行きませんから私の席を売ります”とクラブオフィスに連絡し、その売り上げの半分がその人たちに、残りの半分がクラブ側に入ることになるというもの。そうは言ってもソシオ・アボノの人たちには“収入限度額”があり、年間に得られる最高額は年間ソシオ・アボノ支払額の半分までとなっている。つまり年間指定席に年間400ユーロ支払っている人には、200ユーロが最高額となる。この額を超えた段階で、それ以降のチケット売り上げ料金はすべてクラブの金庫に積まれてしまう。

多くのファンにとって消化試合となったセルティック戦だから、ソシオ・アボノの席がかなりの数で売られることになり、試合当日でも、窓口で簡単にチケットを買うことができた。しかも、レンジャース戦での反省もあってか、セルティックファンには売らないという状況も生まれ、ごく一般のファンの人々がチケットを手に入れることができたようだ。

もし、ミラン・アーセナル戦がモンジュイクでやっていたら、間違いなくそちらを選んで見に行っただろうが、残念ながらそういうことにはならず、ピューピューと冷たい北風吹く中をカンプノウへ。消化試合とはいえ、何と言ってもボージャンの最年少ゴールがかかっている試合であり、しかも相手がセルティックとはいえ、やはりチャンピオンズの試合は特別な雰囲気があるというものだ。だが、それもメッシーの負傷で、もともとなかった試合に対する興味がさらになくなり、ただの消化試合が大消化不良試合となり、おまけにボージャンを出場させないという理解できないライカー采配もあり、まったくもってシケタ試合観戦となってしまった。

ラジオを聴きながら家路につく途中、プジョーがインタビューで次のように語っていた。
「メディアやファンの人々のメッシーに対するプレッシャーが、こういう結果を招いてしまった一つの原因だと思う。」
肌にチームカラーを染めた偉大なカピタンであり、100%のプロ精神を感じさせてくれる選手でありながら、決して頭が良い方とは思えない。彼の理屈によれば、ライカー監督は外部からのプレッシャーにより、メッシーをこのクソ消化試合に出場させたことになるし、ドクター連中が負傷の危険を告げるにもかかわらず、At.マドリ戦の途中から彼を出場させたことになる。だが、メディアがどう言ったかはともかく、多くのバルセロニスタの思いは逆のところにあった。最下位チームであるレバンテとの試合や、このセルティック戦などには出場させず、もっともっと大事なAt.マドリ戦に備えさせるべきだった、そう多くのファンが言っているに過ぎない。

今はメッシーの負傷に触れる気になれないが、それにしても毎シーズン恒例の出来事となってしまった。モッタ、ロベン、ビセンテ、レジェスなど、ガラスの足を持つ選手はなぜか左足利き。この謎を解いてくれるのはドクターハウスしかいない。前とまったく同じところを痛めてリハビリ期間も同じ6週間、ああ再び6週間、こんな試合でなんてこったい!


セルティック戦
(08/03/04)

バルサのフエラの試合を観戦するツアーがある。選手たちと同じ飛行機に乗り、現地では選手たちと同じホテルに泊まり、そして試合後も選手たちと一緒の飛行機に乗ってバルセロナに帰ってくる“仲良しツアー”だ。移動場所によってツアー料金は異なるものの、例えば、マドリッドまで恥をかきに行った先週末のコルチョネロ戦では、450ユーロ(約7万円)となっており、25人前後のバルセロニスタが参加している。そしてこの試合から、新たなツアーが誕生している。“仲良しツアー”がエコノミークラス程度のツアーだとすれば、今回のはファーストクラスツアーと呼んでもおかしくなく、お値段の方も2600ユーロ(約40万円)と少々お高くなっている。

基本的にこれまでのツアーと何が大きく違うか。450ユーロコースは、選手と同じ飛行機に乗ると言っても選手たちはビジネス、ツアー客はエコノミーと席が別れており、実際に選手と機内で接することはほとんどない。また、ホテル内でも実際に選手たちと触れあうことはほとんどなく、ただ単に同じホテルに泊まっているというだけの話。だが、2600ユーロコースはチョイと違う。機内では選手たちと同じビジネス席であり、移動中に話しかけたり触ったりすることができる。そしてホテル内では試合前日に選手たちや監督とお茶を飲んだり、夕食も一緒にとるという、まったくもっての密着コースとなっているらしい。

主催者側(つまりクラブのマーケティング係)によれば、試合前日のホテル内では最低二人のバルサ選手が2600ユーロVIP客とお茶を飲むことを義務づけ、そして選手や監督と一緒に夕食をとる権利を与えているという。さらに試合当日午前中にはコーチングスタッフの誰かがVIP客に対し、試合にのぞむに当たっての“戦略・戦術”を説明するお話会が設定されており、さらに最低二人の選手がVIP客とお話会をすることになっているそうな。今回のマドリッド恥かきツアーでは、試合前日にお茶飲み会に参加してきたのがミリートとメッシー、試合当日午前中の“戦力説明会”に来たのコーチがニースケンス、そしてお話会に参加してきたのがアンリとサンブロッタだったという。

さて、初回となった今回のツアーに何人のVIP客が参加してきたのだろうか。何とその数3人。しかも全員がクラブスポンサーの社員で今回は招待客となった人たちらしい。そのうち選手たちから不満がでてくるだろうし、しかもこの値段。将来性ゼロの高額ツアーというか、幻ツアーとして幕を閉じることに100ユーロ!

ところで、マドリッドで試合がおこなわれた土曜日に、バルセロナの街ではすでに緑と白の横縞シャツを着た赤ら顔で茶髪の人々が見られた。この人たちはツアーなんぞという俗っぽいものを無視し、しかも入場券もなしに殴り込みにやってきているスコットランド人だ。普通のクラブのファンというのは、早くても試合前日あたりにやって来るものだが、スコットランド人は違う。レンジャーズが来たときにも、同じように何日も前から来ているファンが見られた。彼らの共通する特徴は、4、5人でグループを作っているのが多く、その中に女性がいることが滅多になく、野郎どもばかりで朝からどこかのバールのテラスでビールを飲んでいる。バルセロナ訪問が試合観戦目的であることは間違いないが、安いビールを飲みまくるというのも大きな目的の一つである。

そのセルティック戦。
「セルティック戦はAt.マドリ戦に比べられないほどに重要な試合。」
ほぼ消化試合に近いものと思っていたら、我らがチキ・ベギリスタインがこう語っている。つまり、At.マドリ戦などはたいして重要な試合ではなかったようだ。そしてこの“重要”なセルティック戦をライカー監督得意とするローテーションシステムを駆使して戦う。このライカーコーチングスタッフのアイデアするローテーションシステムというのは、選手の疲労をとるためというよりは、わがままな選手たちを規則的に“出場・休養”させ、ロッカールーム内に不満をださないようにするためにあるようだ。したがって、大事な試合を前にして休ませるべき選手を休ませず、その大事な試合に休ませてしまうという“順番違い”が起きることがよくある。大事な試合→手抜きできる試合→大事な試合→手抜きできる試合、というようにテンポ良く試合が続くわけもない。2試合続けて大事な試合となったり、あるいは2試合続けて手抜きできる試合が重なったりすると、単純な思考方法しか持たない彼らには、もうどうにも処理できないローテーションとなってしまう。だから、彼らにこまかいことを要求してもしかたがない。ローテーション明けとなったヤヤとメッシーを明日の試合に起用し、もしカードでももらい準々決勝第一戦に出られなくなったりでもしたら・・・もう、笑ってしまうのだ。

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At.マドリ戦
(08/03/01)

2月28日、At.マドリの会長であるエンリケ・セレッソさんの60歳の誕生日を祝う仲間内パーティーがおこなわれ、多くの友人たちやクラブ関係者が集まったそうな。向かって右にいるのがスペインフットボール連盟会長のアンヘル・ビジャール。真ん中にいるのが御存知メレンゲ会長ラモン・カルデロン。そして左にいるのがこのパーティー主役エンリケ・セレッソ。気持ち悪いことに、アンヘル・ビジャールはメレンゲユニを着こみ、エンリケ・セレッソはユニを手に持ってポーズしている。メレンゲ会長、そしてスペインフットボール連盟会長が、どうぞメレンゲのために頑張ってください、と土曜日の試合を前にしてAt.マドリ会長にお願いしているかのようだ。もちろん、これが問題とならないわけがない。コルチョネロたちの怒りを買ったエンリケ・セレッソはすぐに謝罪している。

国王杯からは素早く身を引き、UEFAの戦いにもすでにサヨナラを告げ、そしてリーグ戦では4位の位置を守ることに四苦八苦している状態のAt.マドリ。シーズンが始まるごとに“今年こそは!”という希望をコルチョネロたちに与えながらも、春がやって来る前にはいつも“今年もダメだった!”となるクラブだけに、例年並みの出来だと言って良いだろう。かつて、ヨハン・クライフが、タイトルを獲得できるかどうかは別として、最低限しなければならないこと、それは各戦いの本番がやって来る春まで生き残ること、つまり、リーグ戦、チャンピオンズ、国王杯の3つの戦いに希望を持ちつつ生き残ることだった。そういう意味ではライカーバルサはその義務を果たしている。2月の国王杯戦で“93分の劇的ゴール”で大喜びできるのは、国王杯に生き続けているからであり、来週の火曜日にもカンプノウに行けるのは、チャンピオンズの戦いに生き残っているからであり、週に二回の試合を楽しめることは幸せなこと。ライカーバルサの最後となるシーズンをしっかりと満喫しておこう。

水曜日国王杯バレンシア戦、試合開始22時。土曜日ならともかく、平日に22時試合開始するというのは、試合観戦する人々に対する非人道的な行為だ。ごく普通の人々は翌日木曜日には会社にいかなければならない。試合が終わるのがだいたい24時、バルセロナ市内に住んでいても帰宅は24時30分頃か01時頃となる。週末は深夜運転もしている地下鉄だが、平日となれば24時にストップしてしまうし、ナイトバスは下手すれば1時間に1本しかやって来ない。何年か前まではどこに駐車しようが罰金などとられなかったのに、市役所や警察がうるさくなった最近はそうはいかない。

それもこれも、テレビ放映権を持っている会社が、普通の家での夕食の時間帯22時ころを狙ってのこと。かつて、各クラブやフットボール連盟に存在した“発言権”はないに等しい状態となり、テレビ会社が独占権を持つ時代となってしまった。

そして不思議なことに、At.マドリ対バルサ戦とレクレアティーボ対マドリ戦は、共に土曜日の20時試合開始となっている。この二つのチームが同じ時間帯に試合をしたのはいつ以来だろうか、と思ったら、嫌な記憶が戻ってきた。そう、記憶に間違いがなければ、たぶん昨シーズンのカンプノウ最終戦以来だろう。バルサはエスパニョールを迎え、そしてマドリはサラゴサへ出張。後半40分過ぎまでバルサは1点差で勝利し、マドリは1点差で負けていた。このままいけばバルサ優勝の可能性大、だが、タムードがゴールを決めるのとほぼ同時にバン・ザ・マンもボールを決め、バルサ、マドリとも引き分けとなり、これでほぼマドリのリーグ優勝が決定したあの同時並行試合。北側ゴールにタムードのゴールが突き刺さるのをこの目で見、そしてイヤホンをしている耳にはマドリの同点ゴールの絶叫が流れてきたあの瞬間、普段でも静かなカンプノウがシ〜ンと更に更に静かになった。

試合相手も場所も状況も違うものの、個人的にはあの日の復讐戦。見事な復讐戦となり1ポイント差でバルサが首位にたつか、やや復讐となり同ポイント首位となるか、復讐分けとなり2ポイント差のままとなるか、あるいは返り討ちにあって4〜5ポイント差と引き離されるか、さあ、さあ、いざ、勝負!